火車

 罔両 クハシヤ クハジヤ薩州

 魑魅ノ類ナリ。葬送ノ時、塗中ニテ疾風迅雷、暴ニ至リテ、棺ハ損ゼズシテ中ノ屍ヲ取去、山中ノ樹枝、巌石等ニ掛置コトアリ。コレヲ、クハシヤト云。


本草綱目啓蒙ほんそうこうもくけいもう』より火車かしゃの事 




 一 九相図と九相観


 あの絵巻物えまきものが忘れられない。町内でも指折りの好事家こうずかだった左衛門さえもんおう後生ごしょう大事だいじに守っていた一軸いちじく絵巻物えまきもの。それが篠木しのきやすしの心をつかんでいた。

 篠木しのきやすしの祖父である左衛門さえもんは、昭和の傑物けつぶつらしく万事において抜け目のない男だったが、歳をごとに穴を埋めるかのごとき熱心さで、仏の教えを信奉しんぽうするようになっていった。

 一世いっせいにして築き上げた財産の多くが御仏みほとけにまつわる美術品の蒐集しゅうしゅうついやされ、晩年には屋敷にしつらえた立派な土蔵どぞうの中を、経典けいてん仏具ぶつぐたぐいあふかえさせるまでになっていた。左衛門さえもんおうは九十七歳でたくみの芸術に囲まれながら安らかな眠りについたのだが、孫のやすしのこされた財産自体はわずかなものだった。

 幼いころに、やすしは一度だけ土蔵どぞうしのったことがある。屋敷の一画いっかくにそびえ立つはこのような建物に祖父の秘密が隠されている。そういった無邪気な想像が少年の冒険心を刺激したのだ。

 左衛門さえもんおうひまを見つけては土蔵どぞうに足しげく通っていたから、内装ないそうは職人に言いつけて、小ざっぱりしたものになるようにあつらえていた。敷居しきいまたげば、カンとえた部屋の内を仏具ぶつぐ経典けいてんいろどあざやかにかざっている。それらは少年にとって、謎めいた儀式に用いられる道具、あるいは、魔法が記されたぶんであり、厳粛げんしゅくな祖父の深淵しんえんのぞいているような不思議な感覚をいだかせたものだ。

 小さな探検家はやがて美術品の森を抜けてきざはしのぼり、明り取り用の観音かんのんとびらからほのかに光が差す空間に辿たどいた。

 土蔵どぞうの二階は座敷造ざしきつくりになっていて、手狭てぜまであるがとこも用意されており、書道をたしなむ老人の普請ふしんらしく、墨の香りが辺りに漂っている。

 少年の輝く双眸そうぼうはほどなくして、漆塗うるしぬりの文机ふづくえの上にせられた一軸いちじく絵巻物えまきものに止まった。蒔絵まきえほどこされた硯箱すずりばこの横に、にしきまとったような豪奢ごうしゃ軸物じくものが、しどけない様子で打ち広げられていた。

 それは、墨痕ぼっこんあざやかな筆致ひっちで描かれた女が、無惨むざんてていく様子をここのつの情景に分けた後に、一つの絵巻えまき仕立したてたものだった。あかきんみどりといった壮麗そうれいな世界の中で生きる女が、凄惨せいさん形相ぎょうそうを浮かべて絶命し、みにくくさてて白骨になるまでの過程を仔細しさいに描いた絵巻物えまきものだった。

 観音かんのんとびらから差す冬の日の明かりが荘厳そうごんな死にいろどられた絵を照らしていた。少年はこの美しいにしき絵巻えまきをもっと近くで見たいという誘惑にさからえなかった。

 少年が巻物を手に取った拍子ひょうし硯箱すずりばこが床に落ちた。箱の中に墨が残されていたことを知った時にはすでに遅かった。にしき絵巻物えまきものは永遠にそこなわれてしまった。左衛門さえもんおういかくるったことは言うまでもない。やすし少年は泣いたが、祖父に叱責しっせきされたことよりも、にしき絵巻物えまきものが手から離れてしまった事実の方が悲しかった。

 自分が魅入られた絵巻物えまきものの正体が九相図くそうずと呼ばれる仏教ぶっきょう絵画かいがであると、それから間もなくして左衛門さえもんおうに教えられた。

 九相図くそうずとは、打ち捨てられたむくろちていく様子をここのつの段階に分けて描いたもので、修行僧の煩悩ぼんのうを払うために、美しい女がみにく屍体したいてることによって、現世うつしよの肉体の不浄ふじょうさと無常むじょうさを伝えようとしているのだ、と左衛門さえもんおう嘆息たんそくまじえながら語った。

 元来がんらい諸行無常しょぎょうむじょうを教えるための方便ほうべんに過ぎないのだから、これを台無だいなしにされた事に執着しゅうちゃくしていかるようでは、極楽ごくらく浄土じょうどに至るには程遠ほどとおい、と左衛門さえもんおうゆるしてくれたがやすし少年は祖父ほど寛容かんようにはなれなかった。悔しくて、情けなくて仕様しようがなかったのである。

 九相図くそうずに記されたむくろ変遷へんせんを見て、現世うつしよむなしさを観想かんそうすることを九相観くそうかんというらしいが、やすし少年はちょうどその真向いにひかえる魔性ましょうの美しさに魅了みりょうされてしまったようだった。九相図くそうずを通じて、がんにいながら彼岸ひがんの美しさ――黄金おうごんかざくれないみどりあざやかさを垣間見かいまみてしまったのである。それは腐乱ふらんの美であった。知ってはならない甘美かんびみつの味であった。

 左衛門さえもん翁はやすし少年の心をよぎった魔物まものの影を知ることなく往生おうじょうげてしまった。ただ、やすし少年も幼心おさなごころに自身が崇拝すうはいする観念かんねんが世の中ではきらわれる事柄であると気が付いてもいた。次第しだいやすし少年はみずからを深くじるようになっていった。

 篠木しのきやすしは自身が魔性ましょうの美の崇拝者すうはいしゃであることがあばかれる事態を非常に恐れた。誰にも打ち明けられない秘密をいだきながらも、彼は何事においても清廉せいれんであるように努めた。それは物理学における反作用の仕組しくみのようなものだったのかもしれない。踏絵ふみえを前にした切支丹きりしたんのように彼はまどっていた。内からあふれる礼賛らいさんの叫びをおさとどめるたびに、息苦しさは増していった。

 あの絵巻えまきが忘れられない。篠木しのきやすしは屋敷の一画いっかくもうけられた土蔵どぞうこもり、祖父がのこしていった膨大ぼうだい御仏みほとけの教えに囲まれながら、腐乱ふらんについて思いをせる。漆塗うるしぬりの文机ふづくえ両肘りょうひじをついて沈思ちんし黙考もっこうする餓鬼がきがそこにはいた。とこかざられた観音菩薩かんのんぼさつうつも押し黙ったまま何も語ろうとはしなかった。




 二 縊死体


 平成三年の五月の頃の事だった。篠木しのきやすしは大学の数少ない朋輩ほうばいである村瀬むらせ浩史ひろしの家で、夜がしらむまで酒をわしたことがある。

 万事において穏やかに篠木しのきやすしとは反対に、村瀬むらせ浩史ひろしは何事にも熱しやすく冷めやすい人柄をした男だった。口さがない批判をするかと思いきや、恐ろしく気が回るまめな男で、饗応きょうおう余念よねんがない。途中でやすし幾度いくど退座たいざしようとしたが、あれやこれやともてなそうとする。気が付けば夜は白々しらじらと明け始めていた。

 どうせならばとまっていけ、とめようとする友人に別れを告げて、始発の電車に乗り込んだ。電車の中は閑散かんさんとしており、老人のかすかなしわぶきが大きく響くほどに、しんとしていた。隣に座る女性のわざとらしい香水の匂いが、酒に酔って鈍麻どんました神経に甘ったるくるようだった。

 田園でんえん都市としせん二子玉川駅ふたこたまがわえきで電車を降りた。篠木しのきていはそこから多摩川たまがわ沿いにいくらか行ったところにある。早朝のことで人気もまばらな河川敷かせんじきを、ふらりふらりとやすしが歩いていると、桜の木の下に小さな人集ひとだかりができていることに気が付いた。

 花は散ってしまった時節であるから花見客であるはずはない。酒の酔いが篠木しのきやすしの心持ちを幾分いくぶんか大きくしていた。やすしが何気ない顔をして野次馬やじうまじって事のきを見物しようと背伸びした時である。やすしは驚きのあまりに思わず息を飲んだ。篠木しのきやすし魔物まものに行き会ったのである。

 桜の木の下に横たえられた女の死体がそこにあった。野次馬やじうまの誰かが木の枝ごとへし折って下ろしたのだろう。首に掛けられた荒縄あらなわは肉に食い込んで容易よういにはほどけそうに見えなかった。首を吊る際に骨が抜けたのか、女の首は異様いように伸びており、かれた眼球は飛び出して赤く血走ちばしっている。舌は苦しみのあまりに膨張ぼうちょうして、口からだらしがなくはみ出していた。

 女は夜更よふけに首を吊って自殺をげたのだろう。遺体いたいの身なりはさっぱりとしたものだった。縊死いしであるため肉が裂けたあとも見られない。篠木しのきやすしの心に去来きょらいしたものは九相図くそうずであったことは言うまでもない。勿体もったいない、と篠木しのきやすしは思った。

 篠木しのきやすし希求ききゅうしていたものは腐乱ふらんであった。それは青くなった肉が腐り落ちて、内に隠されていた臓物ぞうもつあらわにするような、斑模様まだらもようの美しさだった。人間性が落剥らくはくして本性をしていく過程にこそ、意義いぎがあるように思えた。その点からいえば、この死体は魂魄こんぱくの抜けたばかりの人形であり、可能性をめておきながらほうむられる、ただの肉のかたまりに過ぎなかった。それは、九相図くそうずに描かれた腐りゆく肉の美しさとは程遠ほどとおいものである。篠木しのきやすしはそこに一握いちあく物足ものたりなさを覚えたのだった。

 餓鬼がき馳走ちそうを前にしながらも、指をくわえて洞穴どうけつに帰るほかに仕様しようがなかった。篠木しのきやすしえとかわきはさらにこうじていった。もう少しだけ早く縊死体いしたいと行き会えたのなら、彼の執着心しゅうちゃくしんは、さまでふくらむことはなかったに違いない。うめのぞんでつばくがごとく、妄執もうしゅうともいえる想念そうねん際限さいげんなく広がっていった。

 ――機会が訪れれば、次こそむくろを手に入れてみせる。この衝動におびやかされ続けて生きていくくらいなら死んだ方がましだ――

 篠木しのきやすし輾転反側てんてんはんそくを繰り返しながらも決意を固めた。この懊悩おうのうを払うためにもむくろが必要だった。妄執もうしゅうかれながら、この先の生涯を歩むことを考えると恐ろしくてたまらなくなった。もはや九相図くそうずでは篠木しのきやすし煩悩ぼんのうぬぐえないところにまで押し流されていたのである。如何いかんともしがたい飢餓きがが、篠木しのきやすしを苦しめていた。

 大学に通うよりも土蔵どぞうこもる日の方が多くなり、村瀬むらせ浩史ひろしと顔を合わせることもすっかりなくなった頃になって、好機こうき不意ふいに訪れた。母方の祖母である柿本かきもと君江きみえが亡くなったというしらせが届いたのである。

 篠木しのきやすしは、五年前に夫に先立たれてから滅多めったに口を開かなくなった母親とともに、故郷ふるさとである宮城みやぎへと旅立った。喪服の内ポケットの中には一挺いちちょうはさみしのばせてある。彼は何としても祖母のむくろを奪い取るつもりでいた。




 三 腐乱の美


 観音かんのんとびらから差す明かりが文机ふづくえの上に置かれたペトリざらを照らしている。皿の中には柿本かきもと君江きみえの小指が入れられていた。小指は夏の陽光ようこうに当てられて順調に腐敗ふはいのほどを進めている。それは篠木しのきやすし宮城みやぎから持ち帰った戦利品せんりひんだった。

 篠木しのきやすし手際てぎわ冷静沈着れいせいちんちゃくだった。荼毘だびされる直前にかわやに行くふりをして、親族の集まりから抜け出すと、納棺のうかんされた君江きみえ遺体いたいに近寄り、止血帯しけつたいめながらはさみで小指を切り取ったのである。出血はほとんどなかった上に、老婆のもろくなった骨を断つのにも、それほど手間てまはかからなかった。

 篠木しのきやすしは切断した小指をハンカチに包んで胸ポケットにしのばせながらも堂々どうどうとしたいで葬儀にのぞんだ。

 火葬さえ済んでしまえば、遺体いたいの一部が欠損けっそんしていることなど分かりはしない。また、棺に納められた遺体いたいあばこうとする者がいるはずもない。手向たむけられたわかばなのベールが遺体いたいの肉の欠落けつらくをうまい具合ぐあいに隠してくれた。

 一連いちれんの葬儀の裏で、怖気おぞけを振るうような罪悪がひそかに行われていることなど、誰も考えはしなかった。やがて、篠木しのきやすしとがは火炎に包まれて消えていった。

 篠木しのきやすしはペトリざらの中で、んでくさっていく祖母の小指をつぶさに見詰みつめながら思う。この腐乱ふらんする小指につながっていた柿本かきもと君江きみえの肉体は灰となってつぼおさめられている。君江きみえの肉体は清浄せいじょうこっぷんとなってしまった。それにくらべて、この小指はどうだろうか。彼岸ひがん程近ほどちかい存在でありながらも、がん瀬戸際せとぎわ一心不乱いっしんふらんまっている。この小指には魂が宿やどっているように思えてならなかった。

 柿本かきもと君江きみえ彼岸ひがんで自身の一部がいまだにがんとどまっていることを知るに違いない。その場合、君江きみえ魂魄こんぱく此岸しがん彼岸ひがんのいずれにぞくすることになるのだろうか。肉に霊が宿やどるのならば、分かたれた肉片にも魂魄こんぱく滞留たいりゅうするのだろうか。腐乱ふらんする肉片は多くは語ろうとはしなかった。

 ――やはり、完全なしかばねが必要なのかもしれない。首尾しゅびよく肉片を手に入れることができたが疑問は深くなっていくばかりだ――

 ペトリざらの小指の腐敗ふはいは早かった。鮮血せんけつしたたりはやがてみ、乳白色だった肌は次第しだいに青ざめ、水気を含んだようにゆるんでいった。切り口から覗いていた骨が徐々じょじょ露出ろしゅつのほどを増していき、どこからか闖入ちんにゅうしたうじが肉をんでいる。だが、九相図くそうずに示されていた斑模様まだらもようの美しさを再現するには、いささか対象が小さすぎていた。

 もっとも、この肉片が篠木しのきやすしに与えた啓示けいじは大きかった。彼の興味は美の享受きょうじゅから探求たんきゅうへとてんじつつある。仏がかんとする肉体のむなしさを、彼は鋭敏えいびんに感じ取っていた。しかし、それはかつて左衛門さえもんおうが教えた九相観くそうかんとは全く違った趣旨しゅし観念かんねんでもあった。篠木しのきやすしは生ある者が死をむかえ、ちていく様をいとおしいと感じるようになっていった。生命が衰退すいたいして移ろいゆく有様ありさまにこそ、生の輝きが実存すると考えていたのである。腐乱ふらんいとうべき肉体の敗北ではなく、むしろ生命のありがたさと美しさを逆説的ぎゃくせつてき証左しょうさしていた。

 篠木しのきやすしは祖父のようにとくむことによって極楽浄土ごくらくじょうどに至ろうとは思わなかった。死後の安寧あんねいよりも現世げんせ波乱はらん心惹こころひかれた。椿事ちんじに及んで生命が輝く刹那せつなを愛したのである。それは、刻一刻こくいっこく様相ようそうを変えていく万華鏡まんげきょうのような腐乱ふらんの美だった。

 御仏みほとけの芸術に囲まれながら一匹の餓鬼がき腐肉ふにくむさぼっていた。しかし、彼が満腹を感じることは決してない。柿本かきもと君江きみえの小指は、じきに白骨と化してしまうだろう。篠木しのきやすし腐乱ふらんする肉をもっと見たいという欲求をおさえることに困難を感じ始めていた。

 餓鬼がきはやがて次の獲物えものを取るだろう。その心当たりもすでにさだまっていた。彼は大学の同級生である近江おうみ加奈子かなこについて思いをせた。ペトリざらの横には彼女から手渡された手紙が置いてある。そこには加奈子かなこの純粋な気持ちが丁寧につづられていた。

加奈子かなこ君もずいぶんと古風なマネをしたものだね。だが、君は彼女のことについて真剣に考えるべきだぜ。加奈子かなこ君は良い子なんだからなあ」

 村瀬むらせ浩史ひろしはいつも通り、加奈子かなこをひとしきり揶揄からかった末に、真剣に交際を考えるべきだと言った。それは、彼なりの親切心だったのだろう。近江おうみ加奈子かなこは確かに気立ての良い女性に違いなかった。

 しかし、妄執もうしゅうに取り憑かれた餓鬼がきは、空腹を満たすためならば、手段を選ばないほどに切迫せっぱくしていた。篠木しのきやすしは祖父からゆずられた硯箱すずりばこから筆を取ると、そろりそろりと手紙の返事を書き始めた。




 四 一通の手紙


 茫漠ぼうばくとした不安が近江おうみ加奈子かなこを悩ませていた。思い人の身に何か良からぬことが起きたのかもしれない。彼女は篠木しのきやすしの穏やかな微笑の裏に隠されたかげりの存在に気が付いていた。端正たんせい面立おもだちによぎる苦悩の表情を彼女は見逃みのがさなかったのである。

 篠木しのきやすしに送った一通の手紙を、友人は恋文こいぶみだと勘違かんちがいしたようだったが、つつしぶかい彼女は自分の思いのたけをそのままふみにしたわけではない。「悩みがあるのなら力になれるかもしれない」という内容に手紙は終始していた。

 近江おうみ加奈子かなこは確かに篠木しのきやすしに好意をいだいていたが、それはどこか姉が弟に寄せる愛情に似ており、身を燃やさんとばかりの激しい恋慕れんぼとはかけ離れたものだった。静かに波打つ海原うなばらの愛情、とでもいったようなものが彼女の胸の内をめていた。

篠木しのきやすしは確かに良い男かもしれないが、君まで心を悩ませる必要はないよ。アイツのことは僕に任せておいてくれたまえ。君はアイツを屋敷から引きずり出して、振り回してくれたらよろしい」

 村瀬むらせ浩史ひろし呵々大笑かかたいしょうすると赤面する加奈子かなこに一通の手紙を渡した。がかりのきみからの便りには優しい筆遣ふでづかいで、心配してくれたことへの礼がしたためられていた。加奈子かなこ便箋びんせんくす返礼を読み終えたのちに、一抹いちまつの不安を覚えた。篠木しのきやすしらしくない、と考えたのである。作為さくいを感じたのである。

 お礼がしたいので是非ぜひとも屋敷を訪ねてくれ、というむね文句もんく――そういった露骨ろこつな誘い文句もんくからも近江おうみ加奈子かなこ違和いわを感じた――とともに手紙は結ばれており、手紙の末には篠木しのきていの住所が小さくえられている。白檀びゃくだんこうめられた気品きひんのある手紙の風体ふうていには似つかわしくない、色めきだった内容に加奈子かなこは少なからず困惑した。

 村瀬むらせ浩史ひろしつかまえて相談することもできたが、結局はしなかった。加奈子かなこ狼狽ろうばいしながらも、もしかしたら――というあわい期待を捨てきれずにいたのだ。篠木しのきやすしが自分に好意をいだいているとしたら、その感情を第三者にあばかれることを良しとはしないだろう。要するに、加奈子かなこ篠木しのきやすしから嫌われることを恐れていたのである。

 近江おうみ加奈子かなこは次に自分はどのように立ち振る舞えば良いのかを考えた。手紙の文句もんくを信じて篠木しのきていを訪ねる、という結論はあまりにも大胆不敵だいたんふてきな考えのように思えた。加奈子かなこは当然のことながらじた。だが、やがてそうするよりほかに仕様しようがないことに気が付いた。

「彼が大学に来なくなってからずいぶんとつ。もしかしたら退学を考えているのかもしれない。村瀬むらせ君は屋敷から引きずり出してくれと言っていた。悩みを抱えているのなら打ち明けてほしいと願ったのは私の方だ。彼から嫌われることは身を切られるように辛いに違いない」

 近江おうみ加奈子かなこは遠慮と勇気を天秤てんびんに掛けた。後悔をしたくないという感情が最後にはった。たとえ、軽蔑けいべつされたとしても彼の力になりたい、と彼女は考えた。それは処女おとめらしいけがれのない献身けんしんの気持ちだった。青くらめく炎の愛情が加奈子かなこの胸を静かに焼いていた。

 篠木しのきやすし見舞みまうことを決心してからは、加奈子かなこの足取りはかろやかだった。手紙には五日後の夕刻にいたいと記されていた。加奈子かなこはいまやその時が訪れるのが待ち遠しいとすら思っていた。以前に村瀬むらせ浩史ひろしから聞いた話によると、彼は母親と二人で暮らしているらしい。ははぎみもきっと綺麗きれいかたに違いない。近江おうみ加奈子かなこは人知れず想像をたくましくしながら五日間を過ごした。それもまた、少女らしい彼女の一面だった。

 近江おうみ加奈子かなこ篠木しのきやすしごうも疑っていなかった。恋慕れんぼの情が彼女の分別ふんべつまどわしたのではない。加奈子かなこは姉が弟に寄せる底知そこしれない愛情の目で篠木しのきやすしを見ていた。弟の不品行ふひんこうたしなめるのは姉の役目であるかのように、加奈子かなこは思っていたのである。

 自分が信頼している者の正体に対して、加奈子かなこはあまりにも無知だったと言わざるを得ない。妄執もうしゅうとらわれた篠木しのきやすしは、加奈子かなこの手に負える範疇はんちゅうを、とうの昔に逸脱いつだつしていた。篠木しのきやすし多摩川たまがわ河川敷かせんじき縊死体いしたいと出会ったころから、順調に人の道をはずしていた。しかばねらう鬼は、ついにえをしのぐために人間をあやめる覚悟をしていた。

 近江おうみ加奈子かなこ篠木しのきやすしの穏やかな微笑の裏に隠されたかげりに気が付いていた。しかし、その陰翳いんえい源泉げんせんを知るすべを持たなかったのである。

 十二月十四日に惨劇さんげきは起こる。斑模様まだらもようの美を完成させるための犠牲いけにえとして選ばれた近江おうみ加奈子かなこ篠木しのきていを訪れた。やがて加奈子かなこはそこが魔窟まくつであることを知ることになる。




 五 大罪を犯す


 篠木しのき涼子りょうこは息子のやすしが日を追うごとに憔悴しょうすいしていく様を不安げに見守っていた。五年前に夫をやまいで亡くしたことをきっかけに、彼女はみずからと世間との間に結ばれていた紐帯ちゅうたいを切ってしまった。

 左衛門さえもんおう母子おやこにほとんど財産をのこさなかったが、孫を大学に通わせるだけの資金だけは用意していた。夫はかせがしらとは程遠ほどとお素朴そぼくな人柄だったので、篠木しのき邸は左衛門さえもんおうの一人の力で維持いじされていたようなものだった。

 一昨年の暮れに左衛門さえもんおう脳溢血のういっけつで亡くなった。涼子りょうこは絵にかいたようなお人好ひとよしだった夫よりも、厳粛げんしゅくだがふところの深さを持ち合わせた義父ぎふのことをしたっていた。純朴じゅんぼくな性格をした涼子りょうこには理解しがたい偏屈へんくつなところもあったが、最後はいつも笑顔で彼女を気遣きづかってねぎらってくれた。涼子りょうこ義父ぎふをほとんど愛していたといってもいい。

 唯一の心のささえだった義父ぎふを亡くしたのち、ほどなくして血の通った母を失うことになった。つなと呼ぶにはあまりにか細い運命の糸が、次々と断たれていく音を聞くたびに涼子りょうこは人知れず孤独をめることとなった。そして、ついに自分の周りには何人なんぴとも残っていないことに気が付いた。寂莫せきばくとした大地に独りぼっちでたたずんでいるような心持ちだった。

「わたしにはもうやすししか残されていないのだわ。やすしが去ってしまったら寂しさのあまり気が狂ってしまうかもしれない。せめてあの子だけは失ってはならない」

 息子のやすしだけが涼子りょうこを生き長らえさせる頼みのつなだった。ゆったりと落ち着いた性情せいじょうの中にも、ハッとさせるような聡明そうめいさをそなえた息子の存在は母親としては心強かった。左衛門さえもんおうが存命だったころは、互いにやすしの話ばかりをしていたものだ。

「あれは良い子だ。すこやかな子を産んでくれた涼子りょうこさんには感謝しなくちゃならない。だがね、あまりやすしを頼ってはいけないよ。涼子りょうこさんは母親なのだからね。無理をしてはならないがやすしささえてあげてください。あれはかしこい子だから心配だ」

 左衛門さえもんおうの言いつけを涼子りょうこは守らなかったことになる。義父ぎふが亡くなった後、涼子りょうこは息子にすっかり依存いそんするようになっていたからだ。日に日にくなっていくかげりを知っておきながら、涼子りょうこは息子にかることをそうとはしなかった。

 母である柿本かきもと君江きみえが亡くなった時も、涼子りょうこはむっつりと押し黙ったままで、何事もしようとはしなかった。やすし涼子りょうこに代わって、葬儀のために喪服を用意し、宮城みやぎへの旅券りょけんを手配し、祖母の冥福めいふくを祈って哀悼あいとうささげた。

 屋敷に帰った翌日に、涼子りょうこずかしさのあまり熱を出した。やすしは母をいたわったがまったく疲れてなどいなかった。むしろ、苦労をしたのはやすしの方だった。

 息子の身に何か良くないことがかりつつあるのではないか、と篠木しのき涼子りょうこは予感していた。しかし、まだ見えない災難さいなんから息子を守るために行動を起こそうとは考えなかった。涼子りょうこは親としてのい方を忘れてしまっていたのである。やがて、息子は土蔵どぞうこもったまま外に出ようとしなくなった。涼子りょうこにとっても不安な日々が続いた。

 近江おうみ加奈子かなこが屋敷を訪ねてきたことを涼子りょうこは非常に喜んだ。加奈子かなこは可愛らしくも清楚せいそな娘だった。彼女が自分たちを救ってくれるかもしれない、と涼子りょうこは思った。だが、それも期待外きたいはずれに終わってしまった。

近江おうみさんならそのまま帰ったよ。土蔵どぞうから真っ直ぐに家に向かったんだろうね」

 加奈子かなこやすし土蔵どぞうまねかれたのちに、いつの間にか帰宅してしまったようだった。やすしはつまらなそうに告げると、またしても土蔵どぞうこもるようになった。

 涼子りょうこやすしの言葉を信じて疑わなかった。それは息子のやすしを信頼していたからではない。涼子りょうこの心に巣食すくったあまえた性分しょうぶんが、「疑う」という思考を失わせていたのである。

 近江おうみ加奈子かなこは今でも土蔵どぞうにいることに涼子りょうこは知らない。屋敷の中で大罪たいざいが犯されている最中さなかでも、涼子りょうこは自分の身の上の頼りなさをなげくことに余念よねんがなかった。あるいは、涼子りょうこもまた怠惰たいだという名の大罪たいざいを犯していたのかもしれない。

 巨大な黒雲こくうんが屋敷をおおわんばかりに立ち込めていた。しかし、それに誰も気が付かない。ただ、からすばかりがしきりに鳴いていた。




 六 疑惑


 十二月二十五日の夜に村瀬むらせ浩史ひろし篠木しのきていを訪れた。「独り身の寂しさをなぐさめに来た」と笑いながら篠木しのきやすしに渡した土産みやげはシャンパンとローストチキンだった。村瀬むらせ篠木しのき涼子りょうこ歳末さいまつに押し寄せてしまったことをびた。

やすし君のことだからきっと聖夜せいやにもかかわらず、引きこもっているのだろうと思いましてね。独り身の悲しさを分かち合うために来たというわけです。君、それにしても加奈子かなこ君はどうしたのかね」

 友人に呼び出されて珍しく母屋おもやに出てきた篠木しのきやすし村瀬むらせたずねた。涼子りょうこはどきりと心臓がはずむ音を聞いたような気がした。近江おうみ加奈子かなこの話題はやすしを不機嫌にさせるかもしれない、と考えたからである。

近江おうみさんなら一度だけ我が家を訪ねたきり一度も会ってないよ。もともと、縁がなかったのだろう。僕はどうやら見限みかぎられてしまったらしいね」

 やすしはつまらなさそうにつぶやくと口を開かなくなってしまった。

 涼子りょうこ村瀬むらせのことをあまりいていなかった。聡明そうめいなくせに配慮はいりょけるような言行げんこうで他人を扇動せんどうする皮肉屋ひにくやを、純朴じゅんぼくな性格をした彼女が理解できようはずがなかった。

 息子を頼りにして生きている涼子りょうこにとって、やすし不興ふきょうを買うような事態は避けたかった。

加奈子かなこさんも家に帰るのなら一言くらい挨拶をしていってくれても良いものなのに。真っ直ぐに家に帰ってしまうなんて、ちょっと失礼だわ」

 不穏ふおんな雰囲気をそうとして、涼子りょうこ近江おうみ加奈子かなこ不躾ぶしつけいをなじった。涼子りょうこは息子の気持ちを代弁したつもりでいたが、意外なことにやすしは母の意見を突き放した。涼子りょうこはますます、息子が何を考えているのかわからなくなってしまった。

近江おうみさんにも用事があったのかもしれない。わざわざ見舞いに来てくれただけでもありがたいと思わなくてはならないよ。さあ、もうこの話は終わりしよう。ここにいない人の話で盛り上がるのは、趣味が良いとは言えないからね」

 篠木しのきやすしは一方的に話題をくくると席を立った。「これ以上はこの場に用はない」といった様子で、座敷ざしきを後にしようとする息子の毅然きぜんとした横顔を見て、涼子りょうこは人知れず内心で冷や汗をかいていた。やすしは明らかに機嫌をそこねているようだった。

来客らいきゃくがあるのに退座たいざしようとするなんて君らしくもない。今日くらいは僕に付き合ってくれても良いではないか。せっかく手土産てみやげもあることだし、今晩は久しぶりに遊ぼうよ」

 村瀬むらせ浩史ひろし母屋おもやを去ろうとするやすしを笑いながらめた。ふざけた素振そぶりとは裏腹に有無うむを言わせないかわいた声音こわねだった。しばらくの沈黙の時間が流れたのちに、やすし嘆息たんそくしながらもついに拒絶の言葉を口にした。

「悪いがどうしても遊ぶ気にはなれない。やり残した仕事があるんだ。君が僕を心配してくれていることは知っている。だが、今はどうか独りにしておいて欲しんだ。今日のところは引き上げてくれないか」

 涼子りょうこは息子の心にきざまれたみぞの深さに驚いた。それは、ほとんど断絶だんぜつに近いものだったからだ。おだやかで優しいやすし泡沫うたかたとなって消滅してしまったことを意味していた。

 涼子りょうこ戸惑とまどうばかりだったが、村瀬むらせはある程度ていどの覚悟を決めていたらしく、平生へいぜいのおどけた調子に戻って席を立った。

「どうやら僕の手には負えないみたいだ。そろそろ退散しようと思う。迷惑をかけてしまったようで悪かったね。これが最後になるのだから、せめて見送りくらいはしてくれたまえ。我儘わがままはこれで終わりにするから」

 篠木しのきやすしはゆっくりとうなずいた。村瀬むらせ浩史ひろし涼子りょうこに謝ると、コートをひるがえしながら颯爽さっそう座敷ざしきを立ち去った。やすしも足を引きずるようにして母屋おもやあとにした。

 あわてふためく涼子りょうこだけが広い部屋に取り残されていた。そのため、屋敷から門に至るまでの短い道中の間にわされた二人の会話を篠木しのき涼子りょうこだけが知らない。

 座敷ざしきに残した涼子りょうこの姿が見えなくなったことを確かめると村瀬むらせ浩史ひろし篠木しのきやすしたずねた。それは屋敷を訪れる前から用意していた質問だった。胸に浮かんだ疑惑の真意を見定みさだめるためのけだった。

「君、ひょっとすると近江おうみ加奈子かなこ君は、まだこの屋敷にいるんじゃないか」

 そろりそろりと前を歩く篠木しのきやすしは答えない。その沈黙が村瀬むらせ浩史ひろしの質問への回答だった。村瀬むらせほそった友人の肩を見詰みつめながらかわいたくちびるつばき湿しめらせると、胸にいだいている疑念を吐露とろし始めた。

加奈子かなこ君が家に帰らなくなってから十日がつと大学ではうわさされている。親御おやごさんも警察に捜索願そうさくねがいを提出したようだ。今朝、我が家の前にパトカーが停まっていてね。いろいろと事情をかれたよ。僕はある情報を警察に打ち明けた」

 心臓の鼓動こどう村瀬むらせ浩史ひろしの身体の内を震わせていた。玄関に辿たどいたら、二人はこうから顔を突き合わせることになるだろう。長い廊下ろうかは終わりに近づきつつある。村瀬むらせ浩史ひろしはそれが恐ろしくてたまらなかった。

近江おうみ加奈子かなこ君は篠木しのきやすしから一通の手紙を受け取っていた。それはちょうど十日前のことだったと僕は思い出した。そして、君は加奈子かなこ君がこの屋敷を訪れたと言っていたね」

 二人は玄関に辿たどいたが、篠木しのきやすしは振り返ろうとしない。村瀬むらせ浩史ひろしも沈黙を守りながら動こうとはしなかった。ない静寂せいじゃくが辺りを包んでいた。

「いろいろと世話せわになったね」

 篠木しのきやすしはそうつぶやくとゆるやかに振り向いた。村瀬むらせ浩史ひろしやすしの顔を見て慄然りつぜんせずにはいられなかった。篠木しのきやすしは笑っていた。

「僕がなすべきことは決まったようだ」

 村瀬むらせ浩史ひろしは震える声で告げると屋敷をあとにした。彼は篠木しのきやすしを有罪であると判断したのだ。魔窟まくつからのがれた村瀬むらせは足をもつれさせながら近隣の警察署へとんだ。




 七 火車は亡骸を抱いて


 篠木しのきやすしの心は安らかだった。じきに警察の者が屋敷の門扉もんぴを叩きに来るに違いない。

 村瀬むらせ浩史ひろしが立ち去ったあとに、やすしは真っ直ぐに土蔵どぞうに向かった。土蔵どぞうの二階で加奈子かなこ亡骸なきがらが彼の帰りを待っているはずだった。

 篠木しのきやすしは残されたわずかな時間をせめて有意義ゆういぎすごごそうと考えた。持ち込まれた石油ストーブの熱に当てられて、死体は腐敗ふはいのほどを早めていたが、九相図くそうずを再現するまでには至っていなかった。

 口惜くちおしいが現状を受け入れる他に仕様しようがなかった。加奈子かなこのか細い首に手を掛けたときから、やすしは自身が許されざる罪人であることを深く自覚するようになっていた。


 ――罪人はさばかれるべきである――


 篠木しのきやすしは人の道をはずしていたが、倫理や道徳をまったく理解しなかったわけではない。九相図くそうずを再現したいという妄執もうしゅう代償だいしょうとして、遠からずばつくだされることを彼は充分に承知しょうちしていた。ただ、それが友人である村瀬むらせ浩史ひろしによってもたらされるとは思っていなかっただけである。

 ムッとむせかえるような臭気を放ち始めた近江おうみ加奈子かなこ亡骸なきがらめながら、篠木しのきやすしは確かな羞恥しゅうちを感じていた。自分が築き上げてきた腐乱ふらん宮殿きゅうでんは、狂人の産物として、世間せけんにじられることになるだろう。それを考えると身悶みもだえするほどにずかしかった。

 ――市中しちゅうれ回されたすえに指を差されてさげすまれるのなら、いさぎよく自分で決着をつけてしまった方がましだ――

 篠木しのきやすし腐乱ふらんする亡骸なきがらを片腕にかきいだきつつ、ストーブの中から灯油の入れられた缶を取り出して、辺りに中身をらし始めた。そして文机ふづくえの引き出しからマッチを見つけると、おもむろに火をともして投げ捨てた。

 濛々もうもうとした黒煙こくえん土蔵どぞう観音扉かんのんとびらからがった。御仏みほとけの教えが記された経典けいてんが焼け落ちていく。亡骸なきがらを取る鬼は火炎に包まれて静かに涙を流した。ひしとしかばねきついて劫火ごうかに焼かれるやすしの姿は火車かしゃそのものだった。

 篠木しのきやすしの心は安らかだった。やすしの心身をしばっていた糸がほどけて落ちていくようだった。土蔵どぞうに込められたきよらかなる品々しなじなけぶりとなって消えていく。全ての罪を洗い流すせいえんが天を焦がしていた。やがて、妄執もうしゅうに取り憑かれた火車かしゃは灰となり、風に吹かれて去って行くだろう。吸い込まれそうな夜の空を、火炎がしゅ金色こんじきに染めている。ついに、ゴウゴウというと音を響かせながら土蔵どぞうくずれた。



(了)




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