【完結】和風ファンタジー『戦国冒険絵巻「黒夢(こくむ)」』

西尾都

序章

<序>

 空は高く澄み、風涼しく。

 鳥は高らかに泣き、無常の時を告げる。


 時は戦国。

白刃で切り開かれる活路に、幾万の強者が群がる魍魎の世界。

 降雨の如く世に降り注ぐ雨は紅く、幾万の血がその大地を黒く染める。

 情あらずや、理あらずや。

 ただ今日、盟友の骸を踏み越えられる者のみが、次代の覇者となる。


 そんな中、ここ裕観一族の治める山間の邑は奇跡と言って良いほど乱を逃れ、穏やかな時を刻みつづけていた。

 その理由の一つとして、この邑の立地があげられる。

邑の周囲には切り立った山。恐るべき霊山として、名を馳せている『神無山』だ。豪胆な戦馬さえ歩みを拒む険しい山道。その昔、幾万という人間の命を奪ってきたと言われる難所がそこかしこに控えている。

 それだけでも充分に人の足を遠のかせる力はあろうに、更にこの山をもって戦国の武者から恐れられる謂れがあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る