ろ.『金魚』

真夜中

朱に染まる金魚は

月光の反射で黄金(こがね)色に透き通り

みずからの内臓をありありと曝して見せる

障子に映る 仄暗く冷たい水の煌めきは

無人の空間をもほとほと紅く酔わせ

眠る赤児を尊い夢の中へ流し去る

ぼんぼりの灯(ひ)は彼らの道標となるだろう


その腹はそして

わたしたちの恥ずかしいすべてを

恥ずかしげもなく、ありありと――――


......今夜もまた

水底に沈む一匹の金魚が

泡を立てて静かに浮き上がり

寝息を立てるわれわれの

心の空洞を探して齧りつくのだ


20210210

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