第21話 あまえ

「おにーぃちゃん♡」


 いつものベンチに座ってスマホを見ていたら、ひょいっとキミがそんなことを言いながら覗き込んできた。


「うゎっ」


 あまりにもビックリしたからスマホを落としてしまって、そのことにもまた動揺する。なんなのもう……。


「大丈夫? こわれてない?」


 キミが拾ってくれたスマホを確認すると、液晶は割れてないし、大丈夫そうだ。

 ぼくとしては、スマホよりもキミの奇行のほうが気がかりだけど。


「それより、いきなりおにいちゃんとかどうしたの?」

「え? なんとなく?」


 なんとなくであの声かよ……。

 ぼくの不満が伝わったのか、キミはしばし考えてからこう言った。


「んー、あえて言うなら」

「うん」

「ちょっと甘えてみたくなった、かな」

「え、今まで甘えてないつもりだったの? いっだぁ!」


 うっかりもらした本音に、本気の平手が背中に命中した。コート着ててもものすごく痛い。

 いやでもさぁ、今までのアレコレが甘えからじゃなかったら、末恐ろしいというかなんというか……。

 まぁ、甘すぎるぼくが悪いんだけどもね。

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