バブみ道日丿宮組

お題:遅い悪 制限時間:15分

 人が飛んだ。その姿はひどく醜い。

 飛べるはずのない動物は地上へと叩きつけられ汚物を撒き散らす。そしてただ赤い絨毯を作り上げる。その光景を美しいとかつて言った人がいたそうだが僕にはそうは見えない。

 どす黒い赤。

「……」

 その道を僕が選ばせたとしても、悪いのは悪。汚れた赤にしか見えない。

 僕は。

 間違ったことは。

 していない。

 ただ静かに悲鳴があがる現場から足を学校へと向かわせ、ごく普通の女子生徒ととして溶け込ませていく。人が悲鳴の場所へと向かってくのを背景に僕は今日の予定を思い浮かべた。


 学校につくと、予定通りーーすぐ体育館に生徒が集められ悲しみのお知らせを校長が述べた。

 その時、笑う顔と悲しそうな顔、悔しい顔をした生徒がいた。

 彼ら彼女らも悪だ。

 僕と目が合うと、ピタリと驚きの僥倖を起こす。

 なんだい? 僕は悪魔か何かなのだろうか。

 まぁいいさ、話す時間は彼ら彼女らには与えられてる。悪には悪にもしなきゃならない行動の権利が残されてる。僕はその審判を最後に告げるだけでしかない。

 そう彼ら彼女らに残されたのは、いつその順番がやってくるのか。ただそれだけだ。落ちるのは悪。

 それは絶対。

 その時が遅いか早いか彼ら彼女らに選択肢は与えられていない。

 僕が正義であるなら、まずは悲しみの表情を見せた彼ら彼女らに審判を下すとしよう。


 さすがに教師、生徒の半分近くが飛び降り自殺を起こすと学校は閉鎖された。

「……」

 これでは対象にコンタクトがしにくくなったと言わざるを得ない。

 本当にこの世界は優しくない。

 僕のような正義の味方には寛大な処置を与えてくれてもいいだろうに。

 まぁいいさ。

 住所も連絡方法も調べはついてる。

 残り半分の悪を赤い絨毯にするために、僕は背中を押す。


 この世には悪しかいないのだからーー。

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バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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