彼の音

バブみ道日丿宮組

お題:興奮した音 制限時間:15分

彼の音

 夢のような気分だった。

 まさか合格するとは思わなかった。

 でも、目の前に貼られてるのは私の受験番号。つまり嘘じゃない。

「やったなってことはここでお前とはお別れだな」

「卒業したらあえるし、連絡取れるでしょ」

 付き添ってくれた幼馴染は冷めた表情でこちらを見てくる。それがまるで永久の別れみたいでちくりと胸が痛んだ。心臓の音だって飛び出して壊れてしまいそう。

「だって全寮制のお嬢様学校だろ? 規律厳しいんじゃないか」

「それは……そうだけど」

 ずっと兄妹みたいにいつも一緒だったのが離れるのは寂しい。これからもずっと一緒にいてくれるものだと思ってた。

 冷やかされてもいい。私には彼がいない生活は思い浮かばなかった。

「一緒には……これないかな」

「性別が違うだろ」

 その通り。彼のいうことが正しい。

 女子校に男子がいるのはおかしい。

「でも、ほら執事さんでならいけるかもしれない?」

「そんなゲームみたいなことがあると思うか。なんのための寮だ」

 はぁとタメ息が聞こえた。

 私だってわかってる。そんな都合のいい話があるものか、と。

「それはそれ、これはこれじゃない?」

 私はそれでも諦めがつかなかった。

 寮ならご飯の用意はしてくれるだろうし、着替えも自分で……しないのかな。友だちにお金持ちがいないから比較できないけれど、きっとなにかあるはず。

 普通じゃない。そう普通じゃない学校なのだから、なにかあるはず。

「まぁ、それはさておき離れようぜ。さすがに周りの視線がね」

「う、うん」

 彼はそういって私の手を掴んで、合格者の貼られた掲示板から遠ざけた。

 振り返って見えたのは、私とは雰囲気が違う女の娘たちだった。


「絶対諦めないから」

 家の近くの公園のベンチで私は彼の手を握りしめた。

「いい加減俺離れしないと結婚とかできないぞ」

「いいの。あなたと結婚するから」

「……そっか」

 彼は私の想いを否定しなかった。

 優しく手を握り返してくれた。

「応援はするよ。なにかあったら呼んでくれ」

 そうして私たちは2人で卒業する学校の話をたくさんした。忘れられない学校生活。2人だけの世界をーー。

 

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彼の音 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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