けいさつのおしごと

バブみ道日丿宮組

お題:天国の団欒 制限時間:15分

けいさつのおしごと

 私が牢獄に追いやられたのは学校の自習室の中だった。

 ……受験戦争。

 そのために、生徒は皆放課後自習に勤しむ毎日。それ以外に子どもは許されない。誰もが必死になって言葉を覚え、頭を回転させた。

 だからこそ、隣の誰彼が死んだなんて知りもしなかった。

 当然警察は私たちを疑った。

 同じ室内であったのに誰も気づかないのはおかしい、全員が共犯じゃないのか、と。

 メディアの取材も毎日きた。

『あの時何をして、何を見て、何を聞いたのか』

 私たちは知らないことには知らないとしか答えられない。中には死臭を嗅いだ生徒もいたけど、私はわからなかった。

 今日も警察は放課後……私たちの教室にやってきたーーすぐ私が呼ばれた。

 死んだ生徒の隣りにいたのは私。

 窓側の端っこにある個室に一番近かった。

 当然疑うのも現場を改めて見ると仕方がない。

「これで4件」

 警察が死んだ生徒たちの顔写真といた個室、私が自習してた時間を比べてみせる。

 私がやったと言わせたいようだ。

「キミは家族もなくなってるんだろ?」

 頷くしかなかった。

 親が寝室でなくなってたのも事実。否定しようがない。

「死体のそばに必ずキミがいる。動機はなくても異常がある」

 異常だけで逮捕できるならどれだけ警察は優遇されるのだろうか。

「反抗的な視線は妨害行為としてキミを連れてくぞ」

 横暴だろう。

 YESというまでこんなことに突き合わせるのか。

 私は死んだ生徒なんて1人も知らない。殺す必要もない。いや……競争相手を潰すという意味では殺すのはありかもしれない。確実に一枠確保できるのだから。

 私が受験で合格すれば殺した生徒も天国で祝ってくれるかもしれない。

『ありがとう。僕にはできなかった』

『キレイな場所なんだね』

『やっと開放された』

 そんな団らんが起きてるかもしれない。

「何笑ってるんだ。おい、こいつに手錠をしろ」

 カチャリという音ともに、私の両手に手錠がついた。

「キミには権利はない」

 そう……警察は優遇されていないが、拒否権を生徒に与えないことができる。

 とはいえ、直接的にこうするのはニュースにのり、その警察の悪行として報道される。

「これで俺も一躍有名だ」

 こうして私は無実のまま牢獄へ追放された。


 翌年、受験に合格するまでは……。

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けいさつのおしごと バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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