痴話喧嘩

バブみ道日丿宮組

お題:未熟な犯人 制限時間:15分

痴話喧嘩

 犯行現場に残されたのは2人の人間。

 これは自白してるのと同意で、

「私がやりました」

 そう告げてきた。

 ただ、自白したところでこの現場の答えにはならない。

 なぜなら、2人とも生存してるし外傷といえるものもない。

 つまりは……事件が事件ではない。

「なにをやったのか答えてもらえますか?」

「はい、嘘をつきました」

「嘘ですか……?」

 2人は静かにお互いがついた嘘を語り始めた。

 確かに言葉に出てくるものは、嘘だった。

「なるほど、それで我々を呼んだのもなぜですか? 人が死んだと聞いてやってきたのですが」

 現場には重装備の警官が今か今かと沈黙。彼らが動くような事態は今のところない。下がってくれても構わないだろう。

 嘘をついただけで110番通報する人間がいるのだろうか? いや……いるからこうして我々が呼ばれたわけだ。

 ただ……。

「はい、彼の精神が一度死にました。それだけの嘘をわたしがついたのです」

 2人いるところの1人……女性がそう告げた。

 精神を殺した。

 確かに近年そのことで自殺する者が多い。毎日1万人もの自殺者を出してる国ということを考えれば、死んだというのはあながち嘘ではないだろう。

「なるほど、それは大変なことでしたね」

 嘘ではないが、殺人ということでもない。

 どういう風に対処しようかと考えてると、重装備の警官を率いてた先輩が口を開いた。

「では、それ相当の対処をしてもよろしいですか?」

 その言葉に死んだという1人の男性が顔を青くした。

「……彼女は何も悪くありません。僕が弱かったからそうなっただけで、責任はないです」

「了解しました」

 先輩は重装備の警官を下がらせた。

「詳しい話は後ほど聞かせてもらいますでしょうか? こちらは彼に任せますので」

「わかりました」

 先輩とアイコンタクトを行い、意志を汲み取った。

 罪には問わず、今後このようなことで警察を呼ばないようにしろ、そういうことだろう。含み笑いをしたのは呆れてるのもあるだろう。

 ならば、いわゆる対処をしよう。

「立って話すのもあれですから、座ってください」


 そしてかれこれ数時間に及んだ殺人騒動は幕を閉じた。2人に必要だったのはお互いが意見を呼べる場所ーー聞き手。そんなものを聞くために警官になったわけじゃないが……まぁいいだろう。

 何しろ本当の事件はまだ見つかってないようなのだから。

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痴話喧嘩 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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