霧雨のように

バブみ道日丿宮組

お題:綺麗な霧雨 制限時間:15分

霧雨のように

「……やっと」

 学校にチャイムが鳴り響く。

 その音を耳で感じながら、少女は外を見る。

「……雨はまだ降ってるか」

「霧雨だよ」

 前の席に座ってた少年が振り返る。

「雨には変わらないじゃない」

「それでも霧だよ。ざーざー降りじゃないのに濡れる嫌な天気さ」

 そういうものだろうかと少女は首をかしげる。自分にとっては比較的やさしい天気な気がした。ざーざー降りは罵倒する声も似てるとも少女は思った。

「お昼食べようぜ」

「うん」

 少年は椅子を反転させ、座る。

「……気にならないの?」

 教室内はざわついてた。

 いつものことだが、少女は気がかりで仕方なかった。

 学校一の美少年と評される少年を独占し、あまつさえ恋人にした。それ以来少女の悪い噂がいろいろ流れて友だちは誰一人として近寄らなくなった。

 それでも少年だけはいてくれた。

 それは霧のように少女の周りを囲ってくれた。そう思ったからこそ、霧雨を優しいと少女は感じたのだ。

「言いたいを直接いえないやつを気にしたってしょうがないさ。僕がこうしたいからこうしてるんだ。何もおかしくはないだろ?」

「そうかな」

 そういいつつも少女は嬉しそうにカバンから弁当箱を2つ取り出す。

「今日は何かな?」

「好きだって言ってくれたタコさんウィンナー」

『ヨシっ!』と少年はガッツポーズし、弁当箱を受け取り開封する。

「みんな損してるよな。こんな美味しい弁当を食べれないなんてさ」

「さすがに友だちの分を作る余裕はないよ」

 えへへと笑み。

「そっか。そうだよな。こういうのは恋人の特権だものな」

「うん」

 付き合い始めの頃は酷かった。

 放課後に呼ばれて、殴られることもあった。

 そこにいつも少年が助けにきてくれた。だからこそ、少女は耐えきれてた。

 そうして数週間が経つ頃にはざわつくことはあっても少女に手を出そうという人間はいなくなった。

 そうなった理由を少女は知らない。裏で少年が何をしたかを。

 むしろ知らないほうがいいかもしれない。

 人間という醜い生き物が本能を晒してるところをーー。 

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霧雨のように バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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