第58話【レオン視点】

 再び王城、G7政策会議室に戻った俺は先に着席していたレティファとエリスが楽しそうに談笑している目に入った。

 二人とも本当に美しく、それでいてたわわに育ってくれた。レティファはドチャシコ、エリスはその胸で聖女は無理っしょ! と叫びたくなる果実。

 ここで変態ドスケベ院長改め変態ドスケベ監督の鑑定が勝手に発動する。

 二人のカップ数について、だ。

 両者ともにEは固いだろう。レティファはGよりのF、エリスはHよりのGか。

 クソ、揉みたい……! おもいっきり鷲掴みしたい! なにが『七つの試練』だ! 

 目の前でたゆんたゆんと揺れる乳を見せつけられているにも拘らず、手を伸ばせない現状の方がよっぱど試練だろうが! 

 レティファとエリスの目を見据えながら、視界の端にチラチラと入ってくる、たゆたゆを見つめていると、

「「あの、レオン様……?」」

 女王と聖女が若干引き気味になっていた。

 あかん、なに堂々と視姦してんねん。ドアホか俺は……! 

 ミッション『悲しい男の性。胸に吸い寄せられてしまった視線を誤魔化せ』スタートである。

 まず声を大にして言っておくが、俺は二人のたわわを凝視していたわけじゃない。あくまで視線は上げていた。

 女性は視線に敏感であることはむっつりスケベならば知っている衝撃的な事実の一つ。

 そこで編み出したのが目を見据えながら視覚の端に入る胸を写真を撮影するように(視線は固定したまま)鑑賞する――スナップおっぱいである。

 これにより目を見ているはずなのにおっぱいも堪能できるという画期的な視姦である。

 すなわち俺が二人のカップ数を測っていたことはまだ隠し通せるということを意味する。

 ただし、やり過ごすためには視線の真意――すなわち偽りの理由を与える必要がある。

 俺が視界の端で慈しむように見ていたのはカップ数ではない事を証明せねばならない。

 考えろ。考えるんだレオン。土下座は――

まだ早い。どうせ頭を下げるならエッチをお願いするときだと決めている。まだ切り札をきるわけにはいかない。

 いいだろう。ならば、レオンの『七つ道具』『撫でる』『褒める』『髪を梳く』『セクハラ』の大盤振る舞いだ。しかと身に受けるがいい……!

 俺は内心のドスケベなどおくびにも出さず二人の髪の上に手を乗せる。

 いつだっただろうか。女の子は頭を撫でられて喜ぶ。ただし、イケメンに限る、と言う迷信が本当のことだったと知ったのは。たしか前世だったか。

 今でもなぜそんな行動に走ったのはわからないが泣いている女の子を放っておけなくて――でも、どうしていいかわからずにクラスメイトの女子の髪を撫でたことがある。

 そのときだ。返ってきた言葉はお礼――ではなく、「汚ねえんだよ、ドブネズミが!」だった。俺は泣いた。もちろん心はマインドクラッシュした。よくぞ自殺せずに強く生きて来れたなと思う。今になってその罵倒はご褒美だと感じられる大人にはなったけれど、当時は割とマジで凹んでいたと思う。布団に丸まって三日三晩べそをかいていたはずだ。

 ちなみにその女の子はどうやら失恋をしていたらしく、それからことあるごとに絡んできたよ。目が合っただけで「気持ち悪い」「死ね」「失せろ」「お前のものは私のもの。私のものの私のだろ」のオンパレード。最後のはジャイアンじゃねえか。何回シャーペンと消しゴムを奪われたか。ひどいよ。

 物憂げな女の子に手を伸ばして恋愛に発展。そんなラノベのような展開を期待した俺がバカだった。だから俺は来世に期待することにした。

 そんな俺は手塩をかけて育てた娘たちのカップ数を計測し、あろうことかそれがバレかけている状況だ。

「本当によく成長してくれた(おっぱいが)」

 髪を梳きながら本音で褒める。

「「あっ」」

 二人は色っぽい声を漏らしながらも俺のセクハラを受け入れた。

 おいおい、懲りてねえなドスケベ監督だって? チッチッチ。甘い、甘いわ!!!!!

 彼女たちは元・孤児である。今でこそ立派に成長し独り立ちしたとはいえ、経歴が経歴だ。俺には一応二人の父親としての顔と立場がある。いくら内面が変態ドスケベだといえ、それを公言したこともあからさまな言動をしたこもとない! すなわち俺はまだ犯人ではない! 容疑者なのだ!

 彼女たちは愛情に飢えていた。ましてや幼くして両親と離れ離れになっている。一般的に父親に構ってもらえない女の子ほどファザコンになってしまうと聞いたこともある。

 すなわち、たとえ俺が二人の綿毛のような髪を撫でたいという下心があろうとも父親と娘のスキンシップとして接することができる名分が俺にはあるのだ。

 もちろんここでパチッと手を払い除けられ、「「汚ねえんだよ、ドブネズミが!」」とハモられてしまう恐れもある。

 そうなれば今度こそ俺は再起不能だ。G7監督室長を降ろしてもらう。二人の本音が漏れたのだ。文句はあるまい。

 二人は戸惑っていたようだが、やがて目を細め、俺のセクハラを受け入れつつも、鼻息が荒くなるのを感じた。

 まさしく命の危険を感じた俺が視線を下げると、さっきまで気持ちよさそうにしていた二人の瞳孔が見開いていた。

 なんでやねん。チミたち、もう少し落差を抑えられへんのかいな。

 これ以上はマズいと感じた俺は勢いだけで誤魔化すことにした。二人から離れて政策会議室の席につく。

 脚を組んで堂々と言ってやる。

 こういうのは押し切ってなんぼである。

 そもそも『七つの試練』とやらで召集したのは女王の方なんだから。

「レティファとエリス。君たちの『試練』について確認させてもらえるだろうか」

 何か言いたそうな二人が黙ったまま着席したのを確認して俺は思った。

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!

 出た! 出たぞ!!!! これが伝説の乗せパイ!!!! オンザテーブおっぱい!!

 クッソ、ダメだ! もう立てん! 俺の息子がフルスロットルしてやがる。ぶっは! エッロ! ちょっ、エッッッッ過ぎだろ! むにゅんって! デカすぎるおっぱいがむにゅんって形を歪ませて! フォォォォォォォォォォォォ!!!!!! G7総監督室長、G7総監督来ちゃァァァァァァァァァァァ!

 えっ、なに? 今度から政策に横槍入れるだけでこの絶景を見放題になるわけ⁉︎

 役得じゃん! えっ、凄くない! 乳が! めっさ柔らかそうな乳がむにゅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅって! クソっ、生まれて初めてだよ。机に生まれ変わりたいなんて本気で思ったのは。すっげえ! 何食べたらあんな……FUOOOOOOOOOOOOOOOOO!

 二人はなぜか未だに俯いている。まるでこっちに視線を向けられないと言わんばかりの態度である。七つの試練を与えて置いて俺の目も見ようとしないのはさすがに失礼だろう。だが、しかし、俺は心が広いからな。許そう! いや、むしろ感謝したい! ありがとうおっぱい! 違う間違えた! ありがとうレティパイ! エリパイ! あかん、名前とおっぱいがフュージョンして――とりあえず彼女たちがこっちを見るまで目に、脳に、心にこの絶景を焼き付けよう。

 俺は腕を組みながら真剣な表情で彼女たち(のオンザテーブルおっぱい)を眺めるのであった。


 ☆


 レティファとエリスは突然、愛しい異性から髪を撫でられ、慈しむように話しかけれたせいで意識を失いかけていた。

 レオンは身長こそそれなりにあるものの決して容姿は整っていない。

 しかし、本人は無意識ではあるが、目を見据えた会話、大人の佇まい、落ち着いた雰囲気により、男の色気はそれなりに滲み出ていた。それに当てられた彼女たちが冷静でいられるわけもなく。ただ黙って着席したのは、

(いっ、いけませんわ。なにを考えておりますの。髪を撫でられただけで濡れそうになるなど時と場所を弁えなさいレティファ! レオン様がわたくしたちのために足を運んでくださったのに……!)

(……うっ、うう。レティファさんがいてくれて本当に良かったです。もしあのまま撫でられていたら今頃どうなっていたことか――あっ) 

 恥じるように俯く二人はレオンから真剣な――それでいて熱い視線を送られていることに気づく。しかし、髪を撫でられ、褒められただけで濡れかけてしまう――否、実際濡れてしまった彼女たちは己がはしたない女だと自覚させられてしまい、とてもではないが顔を上げられないでいた。しかし、そんなことなど知る由もないレオンからは政策のため、熱い視線が送られていることを敏感に察知。

 まさか現状がレオンにとってフィーバータイムであることなど夢にも思っていない様子。

 チラッと視線で合図を送るエリス。

(あの……レティファさん。レオンさんからすごく真剣な視線を感じるので顔を上げていただけませんか? このままだととても失礼な感じに――)

(――無理ですわ)

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