第47話【レオン視点】

 神セブンによる孤児院の寄付中断。

 それを他ならぬ女王から聞かされた俺は血の気が引いていた。

 やっ、やややっぱり勘づいていたんだ! レティファは俺が美少女たちの寄付で暮そうとするヒモ野郎だってことに。

 だか見くびるなよレティファ。こう見えて俺はいつの間にか十年以上、聖人院長を演じてきた身。ここでポロが出るほど甘くはないぞ!


 ――カタカタカタカタカタカタ!


 あかん。紅茶を持つ手がめっさ揺れる。鎮まれ俺の右手よ。冷静さを! 冷静であることを装うんだ!

 ここで狼狽した姿を見せたが最後。

 腹黒女王の思う壺だ。

 クソッ、押し寄せた波のように紅茶がこぼれて――、


「――熱!!!!!!!!!!!!」

「だっ、大丈夫ですのレオン様⁉︎」

 もはや道化ピエロと化した俺に心配した素振りで駆け寄ってくるレティファ。

 血相を変えた彼女は俺の胸に落ちた紅茶をナプキンで拭き取ってくる。

 

 ――ぷにゅ。


 ……おふ。

 女王さんのどチャシコマシュマロが! どちゃシコマシュマロが俺の左腕に乗っかって――ふおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!

 すっ、すごいよレティファ!!! 

 いやらしい躰つきになったことは知っていたけど、なにこの重量感! これでつるぺたすとーんだった時期があったなんて信じられないよ! しかもフェロモンが! めっちゃ甘い匂いがすんですけどおおおおおおおおお!

 すっげ! なにこれ⁉︎ めっちゃいい匂い! 頭がクラクラする! 

 強烈な色気に当てられた俺は自然と左手がレティファのお尻に向かう。

 清楚なドレス(露出過多だけど)によりボディラインを強調されているせいでプリケツが素晴らしいことになっている。

 行くか? 女王に痴漢行っちゃうか?

 なあ、天使と悪魔みんな、これどう思う? 行っていいのかな? お尻撫で回していいと思う?

 天使と悪魔「やっちゃえオッサン」

 よし、決めたぜ! 女王の尻を冥土の土産にしてやるぜ! どうせ寄付を打ち切りにされるんだ。寄生先を失ったヒモなんてただの虫だ。この虫やろう!

 

 いや、待て。

「レオン様、お怪我は⁉︎ お怪我はありませんの⁉︎」

 いま、俺の左腕はレティファのぱい置き場と化している。

 これがイラストでしか目にしたことのない巨乳あるある。重たい胸を机の上に置く女子というヤツか! 

 うっぴょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!

 柔こおぉぉぉぉぉぉぉーい! すげえよ! なに食ったらこんなにもちもちの感触になるんだよ! やべえよ! 

 この重量、弾力、質感――わかったぜ! 九十二センチHカップだ!

 ああ、ナマ乳揉みてえな……! パンチラ、胸チラ、ブラチラ、パイタッチの次はナマ乳揉みてえな。ごめんねレナちゃん。おじさんもうだめだ。

 色んな意味で成長したレティファのぱいおつに感動するあまり、抵抗できないや。

「うっ、うっ……!」

「レオン様⁉︎ どうされたんですのレオン様! まさか泣かれるほど熱かったんですの⁉︎」

 その言葉でハッと我に帰る俺。

 いかん。レティファのマシュマロボディに感動するあまり涙を流してしまっていた。

 これじゃ熱い紅茶ごときに泣いてしまう情けないおじさんではないか。

 落ち着け……! 威厳を保たねば。

 俺は腐っても院長なのである。たとえ正体を見破られようとも仮面を被り続けなければいけない悲しい道化。笑うなら笑えばいいさ!

 天使と悪魔「あはは。だっせ!」

 てめえらは殺す。謝るまで殴るのをやめないッ!

「大丈夫だレティファ。それより……」

 と咳払い。名残惜しいがおっぱいが載っていますよ、と気づかせる。

 俺は嬉しいよレティファ。たしかに幼女時代から天使かなにかと見間違うぐらい美しい幼女だったけれどまさかガブリエルどちゃシコ天使に進化するなんて。

 しかしそれだけに残念でならない。

 君とは敵として会いたくなかった。ベッドの上で出会いたかったよ。

「…………当ててんのよ、ですわ」

「ふぁっ⁉︎」

 耳打ちしてくるレティファ。甘い吐息が俺の耳と脳みそを溶かしていく。

 おかげでなにを言われたのか理解するのが遅れた。まさかこれが噂と当ててんのよ、か⁉︎

 ぐおおおおおおおおおおおおおおおお! なんという威力! なんという破壊力なんだ! ダメだ愚息! そそり立つ形でリバースカードをオープンするんじゃない! 

「レオン様が常々口にされておりました『清く・正しく・美しく』を心がけてきましたわ。どうでして? わたくしは美しくなりましたの?」

 レティファ……!

 まっ、まさか君は――君は――、















 ――ハニとらを仕掛けてくるほど俺に寄付したくないのか⁉︎


 くっそがああああああああああああああああああああああああああああああああああ!

 ここで俺が「綺麗になったかどうか、ベッドで見せてくれないか?」なんて言ってみろ! きっと「この醜い豚がわたくしを襲おうとしたんですの」と一部始終を監視している騎士たちが乱入し、言い訳を聞くまでもなく監禁されるに違いない! いや、死刑か⁉︎

 俺は異世界にイチャイチャハーレム生活を送るためにやってきたんだ! ざまぁや復讐譚をしに来たわけじゃない!

 この流れはまさしくWeb小説定番の女王に裏切られた主人公が蘇り、女王や国に牙を剥くパターンのやつじゃねえか!

 嫌だああああああああああああああああ!

 もう遅いのかもしれないが、俺はレティファとぶちゅぶちゅベロチューチュッチュッチュッしながら、恋人のような甘いエッチがしたいんだ!

 血と恐怖に支配された性的復讐はごめんだ! それじゃ俺の股間に伏せられたカードはオープンしないんだ!

 いいだろうレティファ……! そっちがその気なら俺も全力で争ってやろうではないか! 前世と合わせて童貞歴五十年以上のヘタレっぷりを見せてやろう! ぶははは!

 ……うん? 童貞歴五十年以上……? 

 ダメだ深く考えるじゃないレオン! 心が精神が持たなくなるぞ! 

 息子「いつになったら俺を使ってくれるんだよ!」

 うるせえ! 父さんだって必死なんだ! 急かさないでくれ!

「レティファは本当に美しく育った。それは外面だけじゃない。女王に即位し、この国を良きものにしようとするその心も実に美しいと私は思う。君のような娘を持てたことを心の底から誇りに思う」

「……はぅ」

 リバースカードオープン。カウンタートラップ。レオンの七つ道具『撫でる』を発動! 

 よほど俺の撫で方が奇跡レベルの気持ち良さなのか、髪を撫でられた女の子はなぜか目がとろんとなる!!

 髪は女の命。これだけで重罪になる可能性は大いにある。だが、これならば昔の癖でという言い訳がまだ生きてくる。

 これで打首なら残虐非道の女王を自らの手で育て上げてしまったと諦めるしかない。

 だが。

 だーはっはっは! 甘い、甘いわレティファ! こちとら、響さんに一度血を許してからというもの何かにつけて強請られてはいないのだよ!

 あれから一月に一度、十四日に一度、一週間に一度、三日に一度と吸血の頻度が短スパンになり、今ではなんと二日に一度よ!

 おかげで俺は響さんに抱きつき放題! Fカップの感触を味わい尽くしている! すげえの! もう何回抱き着いてもさ、全然飽きないの! 耳元で熱を帯びた吐息、紅潮する頬と頸、虚な瞳、唇から滴るよだれ……。

 あかん。勃つんじゃない。ハウス! 

 くんずほぐれずとはこのことかと思い知ったよ! ちな、徐々に飲み干す説も有力なので精のつく食事が欠かせません! 響さん、ぶっちゃけ飲み過ぎです。やっぱり殺すつもりなのかな? 各方面から命を狙われる院長。まじウケる。

 それはこの際置いておくとして! 俺が言いたいことはだ! ラッキースケベの一つ――パイタッチで黄泉の國に旅立つような柔な男はとうの昔に卒業しているのさ!

 俺にハニトラをしかけたければベッドの上でスケスケのネグリジェぐらい着てみせるんだなレティファ! 童貞を卒業させてくれるならこの命、いくらでもくれてやる! 

 ちなみに俺はようやく探し求めていた人材――ランジェリーデザイナーとして才能を発揮できる可能性があるレナちゃんを見つけている! 

 この国にもっと可愛くて、おしゃれで、エロい下着が溢れる日も遠くない!!!!!

 レナちゃんさえ望めば、レオン七つ道具『土下座』を発動し、シオン商会に斡旋しつつ、一緒に下着作りをする算段だ!

 そうだ! そうだった! こんなところで命を落としている場合じゃない! 俺は一緒にレナちゃんと水着や下着を作るんだ!

 商売として成立すれば、モデル撮影という名目で響さんの服をひん剥くこともできる。胸チラ、パンチラ、ブラチラだけは緩いくせに肌の露出だけは異様にガードが固い響さんの水着姿を拝める日も遠くはない。

 もちろん撮影は俺がする! 死ぬ前に一度はやりたかったことの一つグラビア撮影!

 やってやる! 俺はやってやるぞ!

 うおおおおおおおおおおおおおお! 昂ってきたあああああああああああああああ!

 戦わなければ生き残れない! 勃ち向かえレオンよ! あかん、たちの漢字が違う。正しくは立ち、だろうが。

 勃ち向かえレオン! おいいいい! まだ表記揺れしてんぞ! 勃ち迎えレオン! クソが! もういいわ! ドすけべ院長でなにが悪い!


「さきほどの話を詳しく聞かせてくれないか。孤児院で育ったレティファがなんの理由もなく寄付を取りやめると言うはずがない。そうだろう?」


 たぶん、理由はどスケベ院長だから、ですよね。

 いやロリヒモ光源氏計画の方かな? 

 なんにせよ、幼女に下着作りをさせてグラビア撮影を目論んでいるわけで、そりゃ打ち切りにもしたくなりますよね。めんご。

 しかし、俺は悪そびれない! 

 戦わなければ生き残れないから。勃ち迎えレオン! ああ、もうまた表記揺れ!


「……ふふっ。なにもかもお見通しなのですわね。やっぱりレオン様には敵いませんわ――」


 目尻にたまった涙(その理由には深くツッコまないことにした。というか怖くて聞けない)を指で拭ったレティファは深呼吸したのち、再び自分の席に戻り――女王のスイッチをオンにした。

 はっやー。切り替えはっやー。ハニトラ作戦が上手く行かなかったからって次の作戦に移るの早すぎない? 

 こわ! レティファこわ! 

 やはり女王なんて腹の中でドロドロしたものを飼わないとなれない身なんだ。

 

「まずはこれを」

「これは?」

 レティファから差し出された羊皮紙に視線を向けながら確認する。

「女王直轄組織『G7監督室』の新設についてまとめた資料ですわ」

「G7? もしかして神セブンからもじったのかい?」

「ええ、そのとおりですわ。先ほど申し上げましたとおり、神セブン個人による寄付は中止しようと考えておりますの。もちろんわたくしだけでなくみなさんと相談したうえでの総意ですわ」

「……そう、か――」

 えっ、あの総意⁉︎ 総意ですか⁉︎ 女王という立場を利用した一方的な命令ではなく、レティファの意見にみんな賛成したと⁉︎ 

 クソッ! どこまで人望がドン底に落ちればこうなるんだ! 

 愛情に飢えた幼女を育ててもこの仕打ち! 優しくない! この世界全然ちっとも俺に優しくないよ! どうなってんだよ! 父親兼師匠役を買って出ても結局見捨てられるならもう【天啓】クソスキルじゃねえか!

 

 いつになったら俺TUEEEEEのイチャラブエッチ三昧性活を送れるんだよ!

 俺が知っているWeb小説ならとっくに童貞卒業してる頃だろうが! 文字数二十万字にしてパイタッチに『うっひょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』とか喜んでいるオジさんなんて俺ぐらいのもんだよ!


「単刀直入に申し上げますわ。レオン様にはこの『G7監督室』の室長――総監督に就任していただきたいんですの」

 ついに切り込んできたな本題に。なるほど。この提案だけで賢明な俺は何もかも見通しだぜ。俺が見破れるのはスリーサイズだけだと思った大間違いだ。

 つまり、てめえいい大人のくせにいつまでも引きこもってんじゃねえよ。いい加減、神セブンに寄生したヒモ生活を卒業しろ。このどスケベ院長が! だから童貞なんだよって言いたいんだろ?

 

 クソが!!!! よりにもよって『働かざるもの食うべからず』ってか?

 どうする? 働いたら負けだぞ。俺から怠惰を抜いたらもうドすけべの童貞しか残らない。俺を構成・構築している要素、マジで泣きたくなるもんばっかだな。

 コード003発動!

 いちゃもんで乗り切ろう、発動だ!


「非常に魅力的な提案ではあるが、資料を確認するに、王都の移動は必須なのだろう? 私には孤児院の経営が――」

「移動につきましてはセレスさんの転移があるかと」

 ほう。女王よ。よもやいちゃもんの天才である俺に舌戦を申し込むと。舐められたものだな俺も。社会人時代、ダダをこねると右に出るものはいないと最高の不名誉褒め言葉を幾度となく浴びせられた俺に勝負を挑むとは。いいだろう受けて勃つ! 

 俺を下した暁には煮るなり焼くなり、総監督に就任させるなり、好きにすればいい!

 いくぞ――!


「しかし、転移は魔力や体力の消耗が激しいと聞く。恥ずかしながら今では孤児院の執務もほとんど任せっきりになっている。これ以上、セレスさんに負担をかけるのは――」

「ご安心ください。すでにセレスさんにはこの通り――承諾書をいただいております」

 スッと差し出されてきたのはセレスさんのサイン入り承諾書!

 おいいいいいいいいいいいいいいいい! ご主人様の確認なしに、なにサインしてんねん! 事前に確認しろや! 孤児院運営に関わる執務系の書類は優秀過ぎてお尻を撫で回したくなるほど完璧な確認をするぐせに!

 よりにもよって俺を働かせてようとする女王に加担するとは! この裏切り者が!

 だが、まだだ! この程度で諦めるほど俺は甘くねえ!


「レティファ。君も知っているだろう。私は目立つことが――」

「大変お言葉ながらそちらも心配ないかと存じますの。G7総監督という役職は公表こそすれど、素性は一切明かすつもりはございません。どうしても顔を覚えられなくない場合はハイエルフのセレスさんに申し出ていただければ、いくらでも誤魔化す手段はありますの。魔術に関しては大魔導士のリディアに匹敵、いやそれ以上かと」

 

 手強い! ちくしょおおおおおお! 俺の思考などお見通しってか? まるで事前に用意していた返答をするかのようにスルスルと! 


 俺に働かせるというのは尊厳を踏み躙ることと同義ってことを知っての狼藉か!

 移動手段は問題なし。身バレのリスクもなし。執務はセレスさんに任せっきりという言質も取られてしまった。もはや忙しいことを理由に断るのには無理がある……くそっ、万策尽きたか。


「しかし……」

「もちろんG7総監督に就任いただきました暁には報酬もお支払いしますわ――具体的にはこれぐらいでいかがですの?」

 レティファの差し出してきた金額は現在の1/3程度。神セブン全員の寄付を一元化したことで大減額である。とはいえ、孤児院を回していくのには十分過ぎる大金である。

 働きたくはない――しかし。

 逡巡していると、レティファはさらに押してくる。

「G7総監督は出来高制でしてよ。シオンやクウ、スピアの抱える課題や悩みにお知恵貸していただくだけで構いませんの。事業や開発が成功すればするほどそれに見合った報酬になっていく、という仕組みですわ」

 なるほど。だから寄付金額を1/3程度に抑えた固定給にしたというわけか。

 働けば働いた分だけ懐が潤うと。認めようレティファ。見事な復讐だ。ただ俺を世間から葬るのではなく、働かせるという地獄の苦しみを与えてくるとは。

 どうやら俺は敵にする相手を間違えたようだ。

「さらに――二枚目の資料を見ていただきますの」

 クソが! 何枚あるんだよ! 俺から労働力を搾取しようなんてなんてやつだ!

 余談だが、神セブンのみんなには俺が異世界から転生したことを打ち明けてある。

 信じるか信じないかは彼女次第だが、どうやら現代日本で培った知識・知恵というのは魔術が存在する故、中途半端に発展したこの世界で真価を発揮するようだった。

 女王直轄組織『G7監督室』に俺を就任させることで、手綱を握りつつ、知識や知恵を搾り興国し、己の手柄にする魂胆か。

 そう。そうなのだ。

 俺を匿名や覆面で総監督をさせるのは全て女王の成果にするためであることは猿でも理解できる事実!

 レティファ恐ろしい子! 俺の本性を見破ったあげく、ただでは転ばないというわけか。

 なんという搾取! 搾り取るならエッチな方面でお願いしたいというのに……!

 

「G7総監督は非公表。氏名も素顔も素性も女王の名にかけて隠し通してみせますわ。もし就任いただければ、微力ながら国の事業として第二、三の孤児院建設をお約束しますわ」

「えっ?」

「それとこれからもレオン様の元から巣立っていく孤児たちの就職先の斡旋など、できる限りの手厚いサポートを約束いたしますわ」

「なん…だと…」

 俺の驚きは魅力的な提案だったからではない。レティファが俺の想像を遥か斜めを行く鬼畜だったからだ。

 おそらく彼女は女王として神セブンのような第二、三の被害者を出すことを阻止しようとしている。

 俺が雛のように口を開けているだけ寄付が集まってくるようなスキームを潰す気だ。

 就職先の斡旋。孤児たちの厚遇など建前。本音はロリヒモ光源氏計画を全力で叩き潰すつもりだろう。これが女王のやり方かああああああああああああああああああああああ!

 おそらくこの分だと俺が固有スキル【天啓】を所有することも気が付いている。今や一国の王だ。その情報収集力は侮れない。リディアちゃんや響さんなどから【天啓】を聞いた線も十分考えられる。

 俺が【天啓】を発動すれば、孤児たちは優秀な人材に成長する。女王からすれば喉から手が出るほど欲しいだろう。

 ガチだ。ガチでレティファは俺から搾り取れるものを一滴残さず、ぎゅーとしようとしている。

 俺は再びレティファから差し出された資料に目を落とす。

 この資料によれば天才であるはずの神セブンたちが何かしらの課題を抱えており、俺に助力をお願いしたい、とある。詳細こそ各々から聞かないことはわからないが、二人きりになれる時間はある。

 一度は俺のことを脳死させるほどのおもてなしを決意したシオンだ。口車に乗せれば亡命することも――。

 仕込んだノートを取り出すタイミングを見計らうように深く思考する。

 くくく……あっはっはっはっは!

 そうだ。私が変態どスケベ院長だ。新世界のヒモになる男。

 ヒモに逆らうものはたとえ娘だろうと許さん。その頭脳戦受けてたとうではないか!


「――わかった。私でみんなの役に立てるならその大役を拝命するよ。いくぶん私には力不足だと思われるがな」

「いいえ、そんなことはありませんわ。むしろ役不足でしてよ」

 これで役不足? おまっ、マジで過労死させる気じゃねえか! 

 ……ぐぬぬ! リディアちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん! 俺の本性を知ってなお、甘々のリディアちゃあああああああああああああああああああああああああん!

 俺は王城から出てすぐにリディアちゃんに泣きつくことを決意した。

 スカートの中で号泣してやる!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る