第27話、解散

 Sクラスの依頼には、当然飛行する魔物もいる。

それほど強くなくても、攻撃手段が弓程度しかないためにSクラスなのだ。

俺たちはそういう依頼を次々にこなしていった。


「タゴサクさん、空を飛ぶ魔物ばかり、すごい勢いで解決されてますね。

もしかして、空を飛んでいるんですか?」


「ははは、実はそうなんですよ。

どうですか、今度空でデートしませんか」


「ごめんなさい、主人に怒られてしまいますから」


「あー、残念です」


 ギルドではこんな軽口を叩いているが、現場ではそんなことはない。

空中でブレスでも受ければ即死なのだ。


「よし、いつも通り俺とシルビアでアタックをかける。

オネエはグラビティで相手の動き鵜を封じながらバフをかけてくれ。

先制はエリスの魔導銃だ」


「「「はい!」」」


 ところが、相手のホークマンはいきなり火炎魔法を放ってきた。

俺とシルビアはギリギリのところで回避したのだが……

いつまでたってもバフがかかってこない。

俺とエリスは集中してホークマンをなんとか屠った。


「エリスー」


そこで初めて、エリスの身に何か起こったことに気が付いた。


「どうした」


「エリスが被弾したの。

治癒はかけたんだけど……」


 エリスの右足は焼けただれていた。


「これは……」


「ごめんなさい、避けきれなくて……」


「ともかく帰って町の治療師に見せてみよう」


 エリスの右足は再生できなかった。

膝から下が黒く炭化している。


「引き際だね」


「オネエ……」


「そうね。こんな足じゃあみんなについていけない……」


「大丈夫、私が面倒見るから。

お金は十分たまってるし、二人で郊外に家でも買って暮らしましょう」


「オネエも引退するのか」


「うん、こんなエリスを一人にしておけないから」


「そうか……」


「おじさん、私も引退する」


「シルビア」


「あの子を引き取って暮らそうと思ってたの。

ごめんね」


「気にするな。

冒険者なんて引き際が大事だ。

そこを間違えると、取り返しがつかないからな」


 これまでの褒章を確認したら、一人金貨1000枚くらいあった。

俺の分は家の金額を差し引いて分配した。


「たまには遊びに来いよ」


「ええ、そのころには子供もできてるかもしれないけどね」


「おじさんも元気でね」


 別れはあっけないものだった。

こうして俺は突然ゼータと二人きりの生活になった。

ゼータも冒険者登録してあるので、Sクラスの受注は可能だ。

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