第5話、おっさんはただのポーターだ
一応、掲示板を確認してみる。
冒険者カードに記載されたFクラスで受けられるのは、薬草および毒消し草採取と側溝清掃などの奉仕活動しかない。
やっぱり、どこかのパーティーに入れてもらうしかないか……
「あのぉ」
「はい」
「正面に立たれると邪魔なのでどいてもらえませんか」
「あっ、ごめんなさい」
一瞬、期待してしまった自分が情けない。
ほとんどのパーティーは、依頼を受注して出かけてしまっていた。
「仕方ない、薬草でも探すか……」
「おい」
「はい」
「仕事がないなら、世話してやるぞ」
マッチョだった。
「どんな仕事ですか?」
「店や倉庫の掃除だ」
「魔王討伐につながるような仕事はありませんか」
「そういうのは扱ってねえな。
だけどよお、魔王は数日前に討伐されたって聞いたぜ。
当分出てこねえよ」
あっ、そうだった。
あの男(友人B)が向こうの世界にいるってことは、魔王が討伐された証じゃないか。
「魔王って、どれくらいで復活するもんなんですか」
「早くて1・2年。時には何十年も平和が続くこともあるからな。
誰にもわからねえよ」
目の前が真っ暗になった。
何十年……
「あのぉ」
「はい」
「魔王討伐をめざしていらっしゃるんですか」
「一応……」
「失礼ですがご職業は?」
「今のところ、ポーターです」
「えっ、ポーターでどうやって?」
「それをこれから考えなくっちゃいけないんですが、どうしたらいいんでしょう」
「勇者教室に入るとか、剣道場に通うしかないですよね」
「ははは、そんなお金もないんですよ」
「でしたら、一緒にお金を稼ぎましょいうよ、ねっ」
彼女はエリスという名で、魔法使いだそうな。
俺は彼女の提案に甘えることにした。
ともかく、日銭を稼ぐことと、冒険者クラスを上げないことには何もできない。
エリスはCクラスだというので、Cクラスの依頼を受けることができる。
最初の依頼は、ゴブリンの巣壊滅だった。
討伐証明の右耳を切って収納に入れていく。
ゴブリン二体で銀貨一枚の依頼だ。
対応中は村で宿泊できるため、宿泊費も浮く。
3日かけてエリスはゴブリンの巣を壊滅した。
討伐したゴブリンは100を超える。
そのうち、俺が倒したのは5匹だった。
「すいません。役立たずで」
「初めての依頼でゴブリン5匹は大したものですよ。
それに耳を切るのが気持ち悪くて、この依頼を受けられなかったんです。
私の方こそ大助かりですわ」
金髪で緑色の瞳、青い魔女服に先端に赤い宝石のついた杖。
こんな俺にも優しくて、女神のような人だった。
ギルドに戻って討伐部位を提出。
報酬は口座へ支払われる。
口座の開設に銀貨3枚必要なため、報酬はエリスの口座に入れてもらった。
宿もエリスの泊っているのと同じ宿にする。
こんな生活を3カ月。
みんなの嫌がるゴブリンの巣討伐を積極的に受けて、おれはいつしかDクラスになっていた。
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