異国の小人の物語

 冬の窓辺に夜な夜な忍び込んでは、物語を呟く小人がいる。月明かりを受ける観葉植物の鉢に腰かけて、小さな彼の語るのはどうも異国の話らしい。お話だろうと気がついたのは、小人が時おり声色を変えて台詞のようなものを呟くからだ。

 当然、言葉は全くわからない。しかしその訥々としたリズムが心地よくて、眠る前の密やかな楽しみにしていた。時には「やれいけそこだ」だの「がんばれ」だの分かりもしない茶々を入れもした。

「もう行くよ」

 春も近いある日、月明かりの窓辺に立った小人は私にも分かる言葉でそう一言呟いた。そして笑って「ありがとう」。どうもこれらが別れの言葉であったらしくそれきり彼は窓辺に現れない。月明かりはただ静かに鉢植えだけを照らし、その向こうには冬の夜が広がるだけだ。

「タラララッタラ、ラララララ」

 私は意味もわからぬ彼の物語の一節を寝る前に口ずさみながら、今もその続きを探している。

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