第5話

 そして翌日。


「奇遇ですね。今向かおうと思っていたところです」


 俺は再度高野さんの部屋を訪れようと部屋を出たら、玄関前で既に待っていた。


「私の部屋を見せたのだからあなたの部屋も見てみたかっただけよ」


「そうですか」


「とりあえず攻撃が始まるまで話でもしましょう。コーヒーはあるかしら」


 俺は高野さんに言われるがままコーヒーを準備し、昨日学んだことについて話した。


 しかし、これといってめぼしい情報は無かった。


 地獄の住人が仕事を探す先の案内や、一般常識など、一応異文化だから覚えておけよという知識の習得がメインだった。


 強いて言うなら、先祖に連絡を取ることが出来るようになったことか。


 とは言ってもひいじいちゃんまでだったが。まあ子孫は倍々ゲームの勢いで増えていくからな。


 5代後の親族なんて実際にはほとんど血が繋がっていない。


 後でとりあえずじいちゃんには連絡するか。


「まあこの世界に住むのだから必要な情報ではあったのだけれど」


「戦争に関しては実際に見てみないと分からないようだね」


 10時から始まるということなので、大人しく待つことにした。


 別にやっていることはただの戦争なので時間なんて気にしなくても良い気がするが。


 まあエンタメがここでも存在するのだから仕方ないか。


「そろそろ始まるわね」


 俺たちは昨日の学習で学んだとおりに端末をテレビに接続した。勿論無線で。


 どこを探せどコードがコンセントすら無いから何に使うんだと思っていたが、単に便利なだけであった。


 表示されているのは何かの機体越しの映像のようだ。ガラス越しに天国の様子が映っていた。


「天国は逆に古代に戻っている感じがするわ」


 俺たちが初めて目にした天国というものは、ほとんど大自然そのものだった。


 流石に家などは存在しているが、文明レベルは明らかに低い。建物も古代遺跡で見られるようなものばかりだ。


「神は私たちにああいう生活を望んでいたんだね」


 本当に最低限人間が生きていけるレベルでしかなかった。


 天使は何故あんなものを良しとしたのだろうか。


 現代の先進国出身の天使は、生活レベルの差に困らなかったのだろうか。


「敵の本拠地に辿り着いたみたいね」


 そんなことを考えている間に目的地に到達したようだ。


 恐らく神が住んでいるであろう場所。超巨大な神殿だった。


 ここから


『我々は今から、神を殺す!』


 という宣言を皮切りに、集中砲火が始まった。


『人間が、我に勝てると思うな』


 攻撃を始めてから数分後、重々しい足取りにて神が現れた。


「これが神なのね」


 それは、神とは思えない姿だった。


 確かに巨大であり、力を感じさせるのだが、見た目はいたって普通の人間と変わらなかった。


 しかし構わず攻撃を続ける。が一切効いていない。それが他の生命体との違いをひしひしと感じさせる。


『ひれ伏すがよい』


 その言葉と共に腕を振り回す。それと共に衝撃波がこちらを襲う。


 そして一気に半数ほどの機体が地に堕ちた。


「本当に勝てるのかしら?」


「どうだろう。かなり不利に見えるけど、指揮官の中にあのヒトラーが混じっているから何かありそう」


 第二次世界大戦で大敗を喫したヒトラーが何かしらの策を持たずに再度戦争を起こそうとするとは正直思えない。


 そもそも今回の状況も小さき国が大きなものと戦うという構図に変わりないしな。


 流石に神様を舐めてかかるほどのアホだとは思えない。


 そんなことを考えていると、第二陣が現れた。どうやら用意した戦力は予想以上に多かったようだ。


 だが、それでも神の攻撃には一切歯が立っておらず、ただ二の足を踏むだけとなっていた。


『この程度で私に抗おうと思ったのか?流石は私の意思に反しようとする者たちだ。身の程知らずにも程がある』


 やはり神は地獄の住人を相当に嫌っているらしい。


『この戦いが終わったら、天使たちに貴様らの世界を滅ぼすように指示をするか。塵も残らぬほどに。愚者に慈悲を残した私が馬鹿だった』


「こいつめちゃくちゃ言っているわね。いくら創造主と言っても終わっているわ」


「そうだね」


 人間が神話で描いた神もこのような人間性であることが多いので、実は妥当な性格であるともいえる。

 もしかすると強すぎる力を持った者はだいたいこうなってしまうのかもな。


 そして第3陣がやってきてそのまま神に倒されたのち、大きな動きがあった。


 神の住んでいる神殿が崩壊したのだ。


 最初から狙いはあの神殿だったようだ。


『何をする!これはこの世界を管理するために重要な物なのだぞ!』


 急に焦りだす神。この世界の管理は神の権能では無かったのか?


『貴様はそもそもこの世界をたいして管理していないだろう。それならば今のこの世界にはそんなものは必要がない。それに、必要になれば我々の技術力で解決するのみだ』


「よく見るとオーラが小さくなっていないかしら」


「本当だ」


 神が画面に初めて現れた時は神様らしく神々しい光を放っていた。


 しかし、今は鈍っており、どちらかと言えば黒い。


『この状態になった神に我々が負ける道理はない!いざ出陣だ!』

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