第12話 姉妹の輪
「はぁ~~~~~疲れた」
今日一日の出来事を思い返しながらベッドにダイブする。
ぼふんと頭を包み込む使い古した枕が幸せな時間を思い出させた。
「膝枕、マジだったよな」
フィクションの中の出来事だと思っていた膝枕をリアルで体験してしまった。
長年使った寝つきの良い枕なのに、それを凌駕する心地良さを味わってしまうと途端に劣化を感じてしまう。
「…………」
自分の右手をじっと見つめると
服の上からでも伝わる不思議な柔らかさに直接触れたら自分はどうなってしまうんだろう。
もしかしたら理性を保てなくって最後までいってしまうかもしれない。
「傷つけたくないもんな」
ヤリたいのは山々だけどこういうのはお互いの気持ちが大切だ。
なんてことを言ってる間に気付けば童貞のまま30歳を迎えていた……なんてことはないように気を付けよう。
ただ、僕だっていつまでも我慢できるわけじゃない。
せっかく提供してもらったオカズを頂かないのは失礼に当たる気がするので、一人でこっそりと堪能する。
ティッシュ箱に手を伸ばそうとしたその時、
♪ぴろりん
♪ぴろりん
♪ぴろりん
普段あまり鳴ることのないスマホが連続で通知音を知らせた。
スパムメッセージでも送り付けられたのかと思い渋々スマホに手を伸ばしロックを解除すると、同じ自撮りアイコンが3つ並んでいた。
『やっほー』
『今何してる?』
『彼女からのLINEだよ』
内容のないメッセージが彼女から送り付けられていた。
彼女ができるとこんなやりとりも発生するのかとまた一つ知見を得た。
これからナニをしようとしていたなんて返せるはずもなく、恰好を付けて勉強中と入力している最中にも新たなメッセージが飛んでくる。
『もしかしてあたしのことを想って……』
ある意味では予想が的中していて女の勘とやらの恐ろしさを実感した。
でも、それを同じ屋根の下で暮らす
そのリスクが頭をよぎってやっぱり僕はウソを吐くことにした。
ウソを吐くことに躊躇いを覚えながら文字を入力していると新たな通知が画面の上に表示される。
「新しいグループに招待されました?」
招待の主は予想通り
だけど、そのグループ名は予想もしていないものだ。
なぜか
僕は
あの姉妹の間に割って入るなんて芸術を台無しにする行為で、批判されてもおかしくない。
「
そもそも姉妹ならわざわざグループを作る必要はない。
メンバーが2人なら個人でメッセージを送っているのと変わらないんだから。
「絶対何か企んでる……」
グループを作ってそれに僕を招待する。
操作ミスだけでは絶対に起こらない状況は
間違えなら退会すればいいだけの話、罠とわかっていても飛び込まないといけないのが彼氏の辛いところだ。
♪ぴろりん
グループに加入するなりメッセージが届いた。
『ようこそ
『僕らは姉妹じゃないよ』
『まあまあ固いこと言わずに。
「は? え?」
このグループは
今、
今後の動きが気になって、あれだけムラムラしていた感情も今は一旦落ち着いていた。
♪ぴろりん
スマホの画面を見つめながら悶々としているとついに新たなメッセージが届いた。
『お姉ちゃんがごめんね』
『こっちこそごめん。姉妹の中に入っちゃって』
『
僕みたいな冴えない男子じゃ全然釣り合いが取れないよ。
……なんだか悲しい気持ちになってきた。
そんな不釣り合いな男が
『あたしと
きっと
頬をぷくっと膨らませてポカポカ殴っていてほしいな。
そんな妄想をしていたら、ふと僕が
「
妹がいない隙を突いて誘惑してくるエッチなお姉さん。
そんなフィクションみたいなシチュエーションが秒で浮かんできて、一時は収まっていたムラムラが再燃する。
「違う違う。なんで
そもそも寝取られるのは僕の意志が弱いからに他ならない。
僕と
本気で好きになると約束した以上、今の僕は
♪ぴろりん
『お姉ちゃんが本当にごめん。困ったことがあったらわたしに相談してね』
『どうだ。あたしの妹は健気でかわいいだろ!』
うん。可愛いよ。だって告白したのは妹の
でもね、今の僕は
ちょうど良い機会だと思った。
今ここで
彼女の妹で、同じ部活のクラスメイト。お姉さんのことでたまに愚痴を言い合うような関係。
うーん、なんか波乱を巻き起こしそうなポジションだけど、そういうのは女子慣れしている男子だけだ。
僕みたいな初めての彼女でアワアワしているような男なら変な間違いは起きないし起こらない。
そうすればドロドロな人間関係にならずに済む。
実は解決法があまりにも簡単だったことに拍子抜けしてしまった。
安心したらまた性欲がむくむくとわいてきて下半身が熱くなる。
ひとまず今夜はこの一言で
画面越しの文字のやりとりじゃなかったらこんな恥ずかしいセリフは絶対に使えない。
『僕の彼女は世界で一番可愛いだろ!』
送ったあとに恥ずかしさで体が熱くなった。
二人がどんな反応をしてくるのか気になると同時に、早くこの熱を発散したくてマナーモードに切り替えてスマホを黙らせる。
「ああ、もう! 明日どうしよう」
それを心待ちにしている自分もいて、つくづく自分がマゾである疑惑が確信へと変わっていった。
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