第42話 怪人だって恋をする
理央の話によると、理央は黄河家の五男だそうだ。
黄河家は紅家と違って男兄弟ばかりで、どちらかというと女性が少ないのだとか。
中性的な顔立ち……というか、どこからどう見ても女子にしか見えない容姿のせいでよく間違われてきたらしい。
体もイチモツだけは立派なのだけど、細いし、男にしては小さめだ。
服装もどちらとも取れるような格好だし……
髪の長さも、どちらとも取れる長さだ。
もちろん、声も。
俺と同じく高校1年生なのだが、声変わりをしても大して変わらなかったそうだ。
「ボクは純血だし、紅家にとってもいい話だとは思うんだ。それに、ボクは紅萌子を愛しているから……」
頬をぽっと赤らめて、少し恥ずかしそうに、だけど嬉しそうに理央は紅会長に対する思いを俺に打ち明けた。
「愛してるって……お前、今俺に紹介してくれって言わなかったか? 知り合いってわけじゃないのか?」
「うーん、知り合いではないね。ボクは紅萌子と話をしたことはないよ。一目惚れなんだ」
どうやら理央はずっと紅会長に密かに思いを寄せていたようだ。
「でも向こうはボクのことなんて知らないだろうし、ただ見つめているだけでよかったんだけど……紅家の女王だって知ってね。ボクは種族や家柄なんて気にはしないけど、紅家としては純血を狙ってる。君や君の父上だって、誘惑されただろう?」
「あぁ、それは……確かに」
母さんがブチギレて、紅会長と父さんが……なんてことはなくなったけど、紅家としては純血の子供ができるなら、仲の悪い青野家でもいいと本気で思っていたのかも……
「他の男に取られるくらいなら、ボクが……って思ったんだ。一目惚れしたくらいで、そんな……って、思うかも知れないけど」
「いや、わかるよ。その気持ち」
そう。
俺だって、守夜美月にずっと片思いしていた。
彼女が魔法少女だってことを知ってからも、俺が怪人族だって知ってからも、俺が彼女を好きだと思う気持ちには、変わりない。
彼女には幸せになってもらいたいし、ずっと笑顔でいて欲しい。
辛いことや悲しいことが起きないで欲しい。
理央の気持ちは俺には痛いほどわかった。
「ありがとう、メースケ!」
理央は嬉しそうに俺に抱きつく。
犬みたいなやつだなー……
俺は昔近所で飼っていたゴールデンレトリバーを思い出した。
「ところで、どうして協力を俺に頼むんだ? 黄河家は中立なら、親に行ってお見合いするとか、そういうことにはならなかったのか?」
「あー……それは、その…………色々あって……」
「色々?」
なんだろう?
何か言いづらいことなのだろうか……?
「とにかく、協力してくれたら、ボクも君と魔法少女が結ばれるようにするからさ!! そうだ……!! ダブルデートとかどうかな?」
「ダブルデート!?」
「だってほら、今日も君たち紅家の怪人族のせいでうまくいかなかったんだろう? ちょうどここに、遊園地のチケットが4枚ある!!」
理央はポケットからチケットを取り出すと、自慢げに見せてきた。
遊園地……
ダブルデート……
「特にここのお化け屋敷は二人ペアで入らないといけないんだ! 絶好のチャンスでしょ!? 君たち二人の距離もさらに縮まると思うし、ボクもこれで紅萌子に近づける!」
「おぉ……お化け屋敷か!」
「それに、近くにあるリゾートホテルは黄河家が経営してるんだ!! 君たちがそういう雰囲気になった時には、存分に利用してくれて構わない」
「な、なんだって!?」
「あんなことや、こんなことし放題だよ?」
俺は理央の手をガシッと握った。
「その話、のった!!!」
こうして俺たちは、協力し合うことになった。
ついさっき知り合ったばかりなのに、理央とはまるで長年の親友のような……そんな気になった。
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