原稿用紙

羊羹ソイソース

一枚目

ある日、目覚めるとすでに夜だった。窓を開けると少し涼しいので、素麺が喰いたくなった。でも冷蔵庫を開けてもツユも氷もないのはわかっているから、諦めて土鍋を出すことにした。ありあわせで煮てやるとなんとなく食えるので、本能寺でやられる気分を醸しながら一服する。吐く白い息に子供の連想をしながら、もういっぺん寝てやろうかと考えるが、寝れそうにない。猛烈に喉が渇いてきたから、ゴクリと水を飲むと月が二つ見えるから、そんな馬鹿なと思ったら水面に映っているだけだ。これでベランダの縁に猫でも走れば風流なもんだが、この階にまで来ることはないだろう。空を見ても星座なんぞ知らんから、チカチカ光る点があるに過ぎない。まあこれを見ていろいろ勘ぐる奴もいるんだから面白い。溜息をつくと幸せが逃げるというが、鶏より卵が先だと思う。最後にチョイチョイと蚊取線香を取り替えて、その煙でついでに仏壇にお経をあげれば完全である。

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