第5話 銀色ドレス

ラジオが長雨の終わりを告げる


オシャレもしない 何度目かの夏が来る


ラジオからは古い歌


ノイズまみれに途切れ途切れ


今度出会ったら ザッ 間違わない

ザッ ザッ 抱き合うだろう


ノイズに歌声が消える

ノイズがわたしを包む

胸に流れる いくつもの日々


今度出会ったら 間違わない

そんな日は 来ない

抱き合うだろう

ただ忘れたい


耳を塞ごうとした


不意にノイズが消える

名も知らぬ声が

最後をクリアに歌う


銀色のドレスをまとって


不意に射し込む陽射し

散らかった部屋に

わたしを照らす


全てが 静かに

陽射しの向こう

雲間の向こう

広い空が見えた


クローゼットを

わたしは 見つめる

出会いの日 その服


ネイビーブルーのシャツ

わたしの銀色ドレス


陽射しが静かに 傾いた


わたしは 

クローゼットを

開いた

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る