❸【鬼属騎士】鬼属・主人

◆鬼属〈グール〉

 地上に堕ちた元天上の眷族であり、ヒト属の生き血を糧として生きる吸血生命体。起源は明らかになっていないが、超高次存在が渦ノ柱を保守管理するために生み出した存在。

 鬼属結晶グールクォーツの状態で発掘され、ヒト属の肉体の一部を取り込むことでヒト型に復活する。以降は肉体の提供者を「主人ドミナス」と呼んで従僕する。

 ヒト属を凌駕する運動能力と知性、無詠唱の高速術式伝導により強力な暗黒媒質接続性を備えるヒト型の生命体だが、「魔法兵器ゴアブレイド」と同化することで第五階層以上の高出力魔法兵器に変貌する。

 黄銅色の髪に鮮血の如き紅い瞳、白磁のように純白の肌。個体差はあるものの総じて成人女性の姿をしている。多くの個体は高い知性と気位を持ち落ち着きを払っているが、感情表現が希薄で時折「人形」とも揶揄される(微妙にポンコツな例外も有り)。

 鬼属グール共通の服装は上に遮光性が高い漆黒のフード付きコート、下は鬼属の趣味嗜好による。


▪️地上に存在する理由

 作中現在より一万年ほど前、神属デウスとの争いで敗北し天上階層から地上世界に追放される。鬼属に女型しか存在しないのは追放時に男型は皆殺しにされたからであり、そのトラウマから天上を連想する「陽光」と神属の紋章「縦十字型」を嫌う。また、肉体そのものが術式細胞と軟体シリークで形成されているので、暗黒媒質が透過しない銀製の武器に弱い。

 神属と争う前、鬼属は「つがい」で一つの存在であったため復活の際にも「片われ」が必要とされ、受肉したヒト属に隷従する性質もそれに起因する。主人が死亡すると結晶状態に戻る。

 殆どの鬼属は結晶化が原因で記憶障害を起こしており、追放に纏わる天上階層の記憶がほぼ欠落している。また、以上の経緯はホムンクルスから直接情報を得た一部のヒト属しか知らず、一般層は鬼属の出現を「神と同様に伝説の存在が実在した」と認識している。


▪️鬼属結晶〈グール・クォーツ〉

 復活前の鬼属の状態。半透明の拳大の石で赤みを帯びており、色の濃度が高いほど強い鬼属とされる。


▪️復活の受肉〈レザレクト〉

 結晶状態の鬼属が主人となる者の肉体の一部を受肉し、復活後にその者と従僕契約を結ぶ行為。受肉する部分は腕や脚など特に定められていないが、主人となる者には四肢欠損の覚悟が不可欠である。受肉後の欠損箇所は義肢で補う。

 尚、主人となる者の年齢・性別は問わない。


▪️血液供給〈プロテスト〉

 鬼属は復活後の肉体を維持するため、主人に限定して血液の供給を受けるよう定められている。但し、主人が魔法戦闘の長期化や負傷により著しく貧血状態に陥った時はその限りではなく、鬼属は主人の監視の元で主人以外から血液供給を受けなければならない。

 鬼属の能力を最大限に引き出す血液状態はステロイドホルモンの血中濃度が平時の五倍、最大値まで上昇する瞬間(つまり性的興奮時)こそが望ましい。


▪️血線リング

 吸血摂取せずに鬼属に血液提供を行うブレスレット型器具。リング内側に術式針が仕込まれており、血が掌に流れ落ちるよう設計されている。ゴアブレイド騎乗時の血線接続にも使われる。


▪️吸血摂取

 鬼属が吸血歯によってヒト属の血液を直接摂取すること。一度でも直接摂取されると傷口から術式細胞片が転移し、殆どが数日後に自我を消失、人を襲う死霊と化す。生還例はほぼ無い。


▪️鬼属の停止条件

 術式細胞を維持する供給血液が枯渇すると意識を失い、ゴアブレイドの稼働にも影響する。

 銀製のナイフや矢などを受けると術式細胞に混乱を起こし活動が鈍る。

 主人が死亡すると結晶状態に戻る。

 左胸部のコアを破壊されると鬼属としての死を迎える。


▪️鬼属結晶の管理

 主に炭鉱などの地下資源調査で発掘されるが、作中現在では減少の一途を辿っており報奨制度により民間から国が収集している。稀に国への報告を怠って密かに受肉を行う者、つまり鬼属騎士以外の違法な主人も存在する。



◆鬼属騎士〈グールエクエス〉

 結晶化した鬼属に肉体の一部を与えて主人となる。基本的には国が管理する鬼属結晶が与えられるが、肉体の欠損を伴うため志願制となっている。

 また、領土内から出土する鬼属結晶は全て国家所有物となっており、偶発的事故や通報隠しで受肉した者は魔法制限法に基づき鬼属騎士団への入団義務が課せられる。団内の扱いは無論悪く、拒否すれば鬼属は没収および極刑が待っている。

 鬼属との従僕契約解除は主人が命じれば可能であり、鬼属は元の結晶状態に戻る。主人の受肉させた部分は分離はするが元に戻せない。

 騎士資格は出自を問わないため、野心から志願するならず者や貧しい労働者やも多い。そのため、従僕となった鬼属を「石っころ」と呼び手荒く扱う者も居る。

 貴族の子息が多く在籍する王立近衛師団には鬼属騎士を快く思っていない者も多く、時おり「騎士は魔法兵器のオマケ」と揶揄される。


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〈物語を閉じるための設定〉


◆闇の眷族〈ヴェスパー〉

 夜の首都リンデルにごく稀に現れ、ヒト属を襲い丸ごと喰らう異形の獣人。正体は結晶化を免れて記憶を失わなかった鬼属。過去に魔獣を喰らって飢えを凌いだ所為で元の姿に戻れなくなっている。

 全受肉を繰り返す目的は神属を倒して天上世界への帰還すること。バロークの手の者や魔ノ王の行動を密かに監視し、それらが起こす騒動を隠れ蓑にヒト属を襲う。時には鬼属騎士団に「ヴェスパー」の名で情報提供することもある。

 リンデル署内では突発的な蒸発事件として扱われており、その存在を怪しむ者は少ない。

 オリジナルゴアブレイドを所持している。


▪️全受肉

 鬼属が神属に匹敵する思考能力の獲得する手段で、その名の通りヒト属を丸ごと摂取する。闇の眷族が密かに「特別な資質」を持つヒト属を選別して行なっている行為。

「特別な資質」とはヒト属が極度の緊張状態に陥った時に発現する「思考圧縮」能力のこと。思考速度を極端に速めて体感時間を引き延ばし、相対的な準時間停止状態を作り出す。元よりヒト属より速い思考能力をさらに上乗せする。

 ヒト属にとって「思考圧縮」は肉体が追い付かないため、無用の長物である。


◆鬼属の女王

 その名の通り鬼属の王で始祖直系の最強の存在。鬼属の唯一欠落していない天上世界の記憶。復活した鬼属の間では他の記憶があやふやなために半ば伝説(お伽話)化している。また、作中現在でもそれらしき存在は発掘されていない。

 実はエングラシア領内で女王専用と思しきオリジナルゴアブレイドが発掘されているが、鬼属の反乱を恐れたブルフォード家が密かに隠し続けている。


▪️鬼属が結晶化した原因

 女王が自らの吸血行為を禁じ、鬼属全体が同調したことによる。神属との争いで払った犠牲の大きさに自らを嫌悪し、その存在意義を超高次存在に問う「種の休眠」を選択したのである。



*鬼属さんと騎士くんのイメージ

https://kakuyomu.jp/users/aqtd882225/news/16816700426769939558

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