そんなの習ってない
理沙ちゃんと漫画喫茶でデート。漫画喫茶もカラオケの時みたいに思った以上にご飯があってびっくりしたし、理沙ちゃんと二人とも知らない漫画を一緒に読むのは思った以上に楽しい。
理沙ちゃんが持ってるのに隣に座って、理沙ちゃんに軽くもたれかかる姿勢で漫画を覗き込み、腕を軽くとんとんしてページを催促してめくってもらうのだ。理沙ちゃん一人だと読むのすごい早いから、私のペースで読んでくれた。
「面白かった。理沙ちゃん良いの選んだね」
「えっと、ありがとう」
「じゃあ次は私選んでくるね」
理沙ちゃんはちょっと古い少年漫画を選んで、午前から読みだしてお昼を挟んでようやく読み終わった。あんまり長いとまた時間かかっちゃうし、短い方がいいかな。と思って私は少女漫画の昔のやつにした。最近ので理沙ちゃんがすでに知ってたら面白くないからね。それにしてもこの作者の人すごい量書いてるなぁ。今もしてるから私も見たことある絵だけど、昔と絵あんまり変わってないのもすごいし。
「……」
「……」
そしてその漫画を読んでいるのだけど、友達の家で一話見た時は全然普通だったんだけど……結構、ガチな恋愛物なんだなぁって。少女漫画だし、キスシーンはあると思ってたけど、ちょっといやらしい感じになってしまった。
か、考えてみたら、理沙ちゃん、私と手を繋ぎたいなんてうぶなこと言ってたけど、一応そう言う欲求もあるのかな? 理沙ちゃん大人だし、性欲とか、えっちな気持ちになったりとかあるのかな?
あ、ひとりでするのとか、もしかして私がいなくてできないとかあるかな? でも男の人はそう言うのも必要って聞いたけど、理沙ちゃんは女の人だし、どうなんだろ。そもそも同性だからえっちなこともできないし、私じゃ相手になれないよね。
というか、私はどうなの? 理沙ちゃんのこと好きだけど、性欲とか考えたことない。理沙ちゃんのこと大好きだけど、大人になって性欲とかでたら、人に触れたくなったりするのかな?
「……」
ちらっと理沙ちゃんを見ると、ちょっとだけ恥ずかしそうに私を気にしてちらちら見てきていたので、普通に目があった。そのまま数秒見つめ合い、私は顔をそらした。
性欲とかえっちなこととか、わ、わかんないけど。わかんないけど……き、キスは、興味あるかも。だって。理沙ちゃんの唇って、なんかこう、かさついてる感じで薄くて、全然普通の唇だけどさ。なんだろう。見てると、ドキドキしてちょっと、触れてみたいなって思っちゃったんだもん。
で、でもさすがにまだ、早いよね! だってほら、小学生だし。10歳なんだし。……で、でも、確かクラスの田神さん、高校生の恋人いるっておっきい声で自慢してたよね。キスとかしてるのかな。
ちょ、ちょっと聞いてみようかな? 全然別に、聞いたからってどうもないけど、その、参考って言うか。どうせ理沙ちゃんはお馬鹿だから、そんなの考えもしないだろうし。いつかは私からしてあげなきゃ、だし。
なんてことを考えつつ、とりあえずこれ以上気まずくはなりたくないので、この一冊のあとは少年漫画だけにしておいた。
と、そんなことを思ったものの、いざ学校に登校すると、やっぱあんまり親しくない田神さんにいきなり恋バナするとかハードル高い。と言うことで、友達にまず聞いてみる事にした。
「ねぇ、二人とも現実で好きな人とか、恋人っていたりする?」
「え? 春ちゃんめっちゃ珍しいこと言うじゃん。どうしたの?」
「あ、もしかしてこの間様子おかしかったのもそれじゃない? やばーい。もしかして初恋とか?」
いや、いきなりめっちゃいじってくるじゃん。いやまあ、その通りなんだけども!
仕方ないので移動して、人気のないところで理沙ちゃんのことを相談することにした。この二人はきっとめちゃくちゃいじってくる。わかってる。でも言いふらしたりはしないし、ほんとにこっちが言いたくないことには触れてこないし、無理強いはしない。そう言う信頼はある。なんだかんだ、一年生からの付き合いだからね。
「えー、まじか。あ、じゃあこの間のあれもデートだったの? 邪魔してごめーん」
「あ、ううん。えっとね、付き合う前から、理沙ちゃんのお料理つくったりとかしてたから」
「通い妻じゃん。やば。えー、そうやって大学生の胃袋つかんで告白させるとか、やば。策士ぃ」
「うーん、何だかドキドキしちゃうねぇ」
美香ちゃんは机に手をついて尋問モードに入っているし、詩織ちゃんもにやにや笑って頬に手をあててそんなことを言う。
やっぱり早まったかもしれない。この二人ニヤニヤしすぎじゃない? としばらくいじられている間は後悔したものの、で、相談って言うのは? と話題を修正してくれたので改めて相談することにした。
「えっとね、まあ、恋人ではあるんだけどさ。その、相手が大人だし、やっぱキスとかも興味あるのかなって思って。どこまでした方がいいのかなって」
「あー、なるほどね」
「ありがちなやつだね」
「え、そ、そう? ありがちなの?」
恥を忍んで頑張って相談した私に、二人はそううんうんと軽く頷いた。
「そうだねぇ。漫画とか、年の差ものでよくあるよね」
「えぇ……で、その答えは?」
漫画の話をされてしまった。まあ二人が恋愛経験者って話も聞かないし、それはそうなのかもしれないけど。私も漫画って理沙ちゃんの家に行くまであんまり買えなかったし、学校にある小説は読んでるけどそう言うのはあんまりなかったから、物語でも答えが出ているなら聞いてみよう。
「決まってるでしょ? そんなの、いくとこまでいくしかないでしょ!」
「そうそう。女の子同士なら子供もできないしね」
「子供!? え、ど、えぇ?」
子供ができないいくとこまでって、え? は? いやそりゃあ、何をしようと現代の医学では子供できないけど。私だってキスで子供ができないことは知ってる。保健の授業でならったもん。
「何びっくりしてるの? そう言う相談じゃなかったの?」
「この間読んだお姉ちゃんの雑誌だと、付き合って半年以内にえっちするのが大多数らしいよ」
「えっ、えっちって。えぇ。いや、女同士だし」
男女ならまあ、そう言うのもあるかもしれないけど。ていうか多分、美香ちゃんの言ってるお姉さんの雑誌は最低でも高校生以上だし、小学生の私たちには早すぎると思う。
そして年齢をおいておいたとして、えっちって。子供はできないとか以前に、そんなのどうやってするの。えっちって子供をつくることなんだから、そもそも矛盾してるよね?
「えー、何言ってるの? 女同士だってできるよ」
「ええ!? ……ど、どういう風に?」
「それは……詩織ちゃん、わかる?」
「うーん、具体的には私もわからないけど、同性でも結婚できるってことは、男女と同じように同性でも子供をつくるのと同じようなえっちなことをして、愛を確かめ合うんでしょ?」
「そうそう。愛を確かめ合う! 私もそれが言いたかったの。えっちって、子供をつくるだけじゃなくて、できなくても気持ちを確かめ合うのに大事なことなんだって書いてあったよ」
詩織ちゃんの言い方に美香ちゃんも勢い良く頷いてのっかった。えぇぇ、うーん。そう、言えば教科書でもそう書いてあったような? うーん、でも、想像できない。女同士のエッチなんて、習ってないもん。それに男同士のエッチだってならってない。本当にそんなのあるのかな?
でもそれがあるなら、私でも理沙ちゃんの性欲を解消してあげられるのか。いやでも、理沙ちゃんに触るのって最近恥ずかしいから手を繋ぐのでもどきどきしてるのにできるのかな。手を繋ぐので解消されてるなら手っ取り早いけど、さすがにないよね。男女の場合は裸なんだし、やっぱり裸で抱っこするってことなのかな。うーん。それはやっぱり恥ずかしい。
でも、理沙ちゃんが私以外の人と触れるとか嫌だし、仮にも私と恋人なんだから、理沙ちゃんがそうしたいならいつかはしてあげなきゃだよね。
あ、でもなんというか、段々理沙ちゃんに性欲があって解消できなくて我慢している前提になってしまったけど、実際別にそんなことない可能性あるよね。二人がこういうんだから女の人にもやっぱり性欲はあるんだろうけど、理沙ちゃんはない可能性あるよね。
そうなったらまあ。私もさすがに裸とかはあれだし、……まあ、理沙ちゃんの裸とか、興味なくはないけど。手が触れるだけでドキドキして幸せな気持ちになるんだし、もっと肌が触れ合ったらもっと幸せになるなら、まあ、興味はまあ、あるけど。
「うーん」
「めっちゃ考え込んでるね」
「うん。珍しいよね。いっつも考えないようにしてるタイプだったし」
「そうだねぇ。海藻っぽかったよね」
なんか失礼なことを言われているような。私はただ、勉強のできる優等生でいなくちゃいけなくて、余計なことを考えないようにしていただけだ。今は理沙ちゃんがすぐに、私に何をしたいとか聞いてくるから自分で考えなくちゃいけなくなったからそうしてるだけだ。
……まあ、前は、考えても仕方ないから、嫌なこととか辛いことは考えないようにしてたけど。うーん、確かに、理沙ちゃんと暮らしてちょっと、変わったかも? だって、もっと幸せになりたいなって、思ってるし……やだ! 恥ずかしくなってきた。
ううん。理沙ちゃんがいるのが幸せとか、当たり前だけど、なんか、恥ずかしくない?
よし。とりあえず家に帰って、パソコンで調べてみよ!
と言う訳で私は二人にとりあえずお礼を言って家に帰って調べることにした。二人は進展があったら参考にするから教えてとか言ってたけど、絶対からかおうとしてるから言いたくない。言いたくないけど、一応私も参考になったしね。
まあ、言えることなら言ってあげなくもない。まあ。うん。
そして家に帰って調べて、なんかすごい絵がいっぱい出てきて直視できなかった。でも存在するのはわかった。うん。……理沙ちゃん、したいのかな。うぅ。よし! やっぱ無理かな! 小学生には早かったんだよ!
中学生まで待ってもらおう。きっとその時には大人になった私がなんとかするでしょ!
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