第十九力 複合力④
貞影は首の骨が折れた状態でも、何とか屋敷までたどり着いた。
影仁は出払っており、当主の正影が慌てて門扉まで出て迎えた。
正影は貞影の様子を見るなり、「黒飛家に行ったのか?!中里家に行ったのか?!」と聞いた。
虫の息で「中里・・・」と貞影が答えると、「で、殺ったのか?!」と正影は聞いた。
屋敷の者が、「正影様、まずは中へ!」と言うと、「おお、そうだな。すぐに医者を呼んでくれ。」と正影は言った。
貞影は屋敷内の治療部屋に運ばれた。
正影は屋敷の者にすぐに影仁を呼び戻すよう指示を出すと、治療部屋から人払いをした。
貞影は、正影の服をつかみ「殺れなかった・・・。・・・すまない、オヤジ。」と口から血を吹き出しながら言った。
正影は、「そうか・・・。疲れただろう。」と言って、貞影の両目の上に手のひらを置き、貞影の腰からナイフを抜いて、ゆっくりと貞影の首の付け根に深く刺した。
影仁が屋敷に戻った時には、既に貞影は完全に息絶えており、屋敷全体に黒く重い空気が充満していた。
貞影の遺体の横に立ち尽くす影仁に、正影は静かに言った。
「親戚一同の中から集められた子供たちの中で、最後までこの屋敷に残ったのはお前達二人だけだった。本当の兄弟以上の絆があり、私も本当の息子のように感じていた。
貞影は、私の命令を無視して中里家を襲い、中里のせがれに敗れ、最後は自ら命を絶った。
お前が復讐をしたいと言うのならば、止めはしない。
ただし、白飛家としては許可できない。
破門となるが、私は心の中でいつまでもお前の父であり続けるつもりだ。」
「ありがとう、オヤジ。貞影の葬式が終わったら、オレは屋敷を出て行く。」と影仁は言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます