第七力 走力④
その時、突風が吹いた。
遠くの方で散歩をしていたおじいさんと小さい女の子が騒いでいる。
突風で女の子が持っていた風船が飛ばされたのだろう。
赤い風船が真っ青な空に浮かんでいた。
女の子は泣き、おじいさんはその子をなだめている。
「善ちゃん、風船取ってきてあげなよ。」と母が言った。
「できるだろ?」と父が言った。
善助は両親に促されると、ベンチから立ち上がり、風船に向かって『走った』。
おじいさんと女の子の横をまた突風が吹き抜けたかと思うと、赤い風船を持った善助が、「これ、運よく降りてきてましたよ。」と言っておじいさんと女の子に駆け寄っていた。
「優里さん、今の見えた?」と善一郎が優里に聞いた。
「いいえ、まったく。」と優里は答えた。
二人は顔を見合わせて、「こりゃ、想像以上だね。」と言って笑った。
女の子は大喜びで、おじいさんは深々と頭を下げて善助にお礼を言った。
善助は照れくさそうに笑いながらベンチに戻ってきた。
「善助の能力で何をすればいいのか、なんとなく分かったじゃないか?」と善一郎が言った。
善助はおじいさんと女の子の後ろ姿を見ながら、短く「うん。」と言った。
まるで霧が晴れたような顔だった。
運動公園からの帰り道、善助は両親に優子(妹)にも何か能力があるのかと聞いた。
「それが分からないのよね。何かありそうな気もするんだけど・・・。悩んでたり、優子から相談してくるまでは、そっとしといてあげてね。」と優里は言った。
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