3話 魔界と魔道具
アイニの世界と私のいる世界は空間にさえぎられているが
とても近く隣接しているという、私の世界でいう絵物語に登場する場所や
神話に出てくる場所ももちろんあるとのこと。
お互い隣接しているため夢の中や魔力持ちがいるとたまに紛れ込んでしまう、
そういった人は後に体験を童話や小説にしたものも多いという。
私がよく読んでいたあの話ももしかしたら、作者が夢に見て体験したのかもしれないとアイニは言った。
そして、アイニの世界はその中でも人々から魔界や妖精界、幻想界などと呼ばれているそうだ
「魔界・・・・・・なの? 地獄とか冥府ではないのね?」
「地獄や冥府あるけどそれは死者が行く場所というか、ああいうとこは死者を裁くとこだ、なんというか裁判所と監獄みたいな所っていうとわかる?」
「なるほど」
私は納得するとアイニはさらに話をつづけた、ここはそういわれているが他にも神々のいる世界、そして、この世界は魔法が使えるためそういった力が
強いものが作り出す特殊な空間もあるのだとか。
私が訪れた魔界はその中でも一番不可思議で、一番様々な世界が混在するらしくそれで私をここに連れてきたらしい、勿論危険はつきもので先ほどのような事はよくある一つなんだとか。
「ねぇ結局あのジャバウォックっていったい何だったの?」
「ジャバウォックは毒竜で、あいつがいるとあたり一面毒まみれで死んじゃうのさ、奥の方では木々が枯れてただろ?」
アイニはジャバウォックについてさらに詳しく教えてくれた、大きな竜で遥か昔一人の剣士に退治されたがそこからよみがえったそうだ。
よみがえったジャバウォックは元々生息していた国があったのだが、
いつの間にかその場所を離れ各地をたまに訪れては毒をまき散らしているらしい。
今回私達が遭遇したのはおそらく毒をまき終わった後だったらしい。
「そうだったのね・・・・・・でも本当に名前は同じだけど全然違うのね、私のしってるジャバウォックは毒をまいたり、よみがえったりとかはしてなかったと思うし・・・・・・」
そう疑問をつぶやくと、アイニはそれは作者が事の顛末を知らなかったからだろうと言った。
確かにあの話に出てくるジャバウォックはそもそも話の中に出てくる詩に登場する怪物だ、それに話では倒された後の話はのっていないことを思い出す。
「そうやって、ここの世界・・・・・・まぁ魔界で統一するか、で、見たり体験した事がアリスの世界に影響されていったんだろうけど、逆にアリスの世界に影響された奴もいるんだ」
「そうなの?」
「あぁそうさ、例えば娯楽とかはまさに影響された悪魔は多いぜ?まぁ結構、殺伐としてるからなここそういった娯楽は一番引き寄せられたんだろうなって思うな」
アイニがそういうとそれを聞いていたヤマネもコクコクと頷いた、曰く悪魔は殺生を好む奴ももちろんいるが基本的に好奇心が旺盛なものが多い為、私の世界を見て真似をしそれがいつしか趣味になっていったものも多いのだとか。
隣接しているからこそそういった影響が出たんだろうと説明してくれた。
「さて、ある程度この魔界について説明はしたけどほかに気になることはあるかい?」
「そういえば、さっきヤマネさんは特性と言ったわそれっていったい何なの?」
ヤマネは自分のことを呼ばれてうれしかったようで、尻尾をぼふんと膨らませ喜んでいるそれを見たアイニは舌打ちをするとヤマネを睨みつける。
もちろん、ヤマネはヒェッと声をあげてしょんぼりしてしまう
少し間が空いて、アイニは咳ばらいをすると特性について詳しく説明してくれた。
「特性ってのは魔力を持っているものが生まれながらにしてもつ特殊な能力だね、特性は大体が条件が発生していて初めて使えるんだけど、例えば人の心が読める奴(特性)がいたとしてそれが人に触れないとわからない(条件)とかかな? 寝坊助では一定の範囲内に条件にあてはまる奴が入ってくると強制的に寝てしまうってのが特性だな」
「そうそう、僕の特性は正式には<安眠妨害禁止>っていうんだ~」
わかりやすい特性だなと思うとふとアイニの特性が気になってしまった。
「俺の特性についてはまたその内話すよ、あぁでもアリスは絶対安全だからそれは保証しておく」
「わかったわ、でもその内ちゃんと話してくれる?」
契約しているとはいえ、やはりちょっと心配になる、アイニはそれを察してくれたのか約束するよと優しい声で言ってくれた。
「特性と似た能力の魔法や魔道具ももちろんあるけど、あっちは手間がたくさんかかるから基本的に優遇される特性持ちは結構いるよねぇ~」
「そうなんだ・・・・・・こっちにも優劣はあるんだね」
「魔界は特にそうだねぇむしろ強いかもしれないけど~」
屋敷の事、父様の事を思い出してげんなりしてしまった、そして、私はこんな事で落ち込んではいけないとはっとして気分を変えようと聞きなれない台詞を思い出し話題を変えた。
「魔道具って何かしら?」
「そういえば総称としては言ってなかったな、”収納箱”みたいな魔力を込めたり込めてある道具のことでそれを使って攻撃や防御、生活に使ったりと色んなのがあんだ」
総称なのか、魔道具とは色んなものがあるのだと感心してしまった、私の世界では電気や燃料を使って生活していたのが当たり前だったけど、アイニでは魔力を使って生活するのが当たり前なんだなぁと改めて思ってしまった。
***
その後、ヤマネの家泊まるための準備で、私は魔界の生活様式に驚いてしまった。
ヤマネは夕飯の支度をしてくれるとのことでそのままアイニに連れられて二階へ上がる。
部屋は2部屋ほどありアイニから手前の部屋を案内された、ベッドとテーブルとイスがあるだけの質素な部屋だったが手入れはされているようだった。
「アリスはこの部屋を使って」
「えっでもアイニはどこで寝るの?」
「俺は下のベッドでヤマネと寝るから大丈夫」
それを聞いた瞬間、ヤマネとアイニが寝苦しそうに、寝ている光景が浮かび少し笑ってしまった。
私の荷物が入った”収納箱”をベッドの近くに広げると、アイニは次に風呂場の案内と説明をしてくれた。
風呂場は二階奥の部屋で入ってみると、部屋一面タイル貼りでかわいい植物の柄がついている洗面台と奥にバスタブとシャワーが見えた。
アイニは私に洗面台とシャワーの使い方を教えてくれた水やお湯などのハンドルは魔道具で加工されているためいくらでも使うことができ、体を洗う石鹸やタオルなどの場所も教えてくれた。
そして洗面台のそばにある大きな真っ白なヒマワリは葉っぱを触ったり傾けたりしただけで花部分がくるくると回り風を出してくれる、これで洗った髪の毛を乾かすといいと進められた。
ある程度説明してもらった後、風呂場を後にすると下からヤマネがご飯ができたという声が聞こえた。
私達はそのまま下に降りる、テーブルにはパンやスープ、チーズなどが並べてある。
ヤマネは席に座ってと声をかけてくる、各々先ほどの席に座るそのまま座って並べてある食事を見るパンは焼きたてでいい匂いがするスープは野菜スープのようだったあの見た目にしてとても器用なことをしていると少し驚いてしまった。
「寝坊助、夕飯これだけの予定なのか?」
「ちがうよぉ~ 今ミートパイ焼いてるから持っていくね~」
私はそのヤマネの発言に少し疑問を持ちふとヤマネのいる炊事場の方を見ると
ヤマネがとぼとぼと数枚の皿をもってこっちへやってくる片手はあげて何か指揮を取るように動かしている。
上を見るとなんとパイが浮いているではないかしかもこんがりと焼けているような音と香りどうやら魔法を使って調理しているようだった。
「わぁすごい!」
「ん?あ、そっかこういうのも初めてだもんな。 魔界や魔術が使えるやつらはたいがいこんな感じで料理してるんだぜ」
「そうそう~ ではパイはきれーにカットして・・・・・・はいどうぞ~」
ヤマネはまた片手を動かす、包丁もないのにスパッと切れたパイをそのまま皿に盛り付け各々の目の前に置いていくパイのいい香りが漂う。
ヤマネはそのまま席に座る、アイニはそれを見てじゃぁ食べようかとにっこりと笑った。
***
夕飯は大変おいしかった、食事中はふとした疑問で、魔界ではもっととんでもない食事が来ると思っていたことを明かした、紅茶がきているので
薄々は思っていたのだがでもゲテモノ料理がくるのではと実はちょっと楽しみにしていた。
そういうとアイニやヤマネは料理は実は結構魔界はこだわりが強いということを説明してくれた。
グルメな悪魔が多くなってきたのもあるが最近はそれで店を出し始めた者も多くいるらしい。
ちなみに私が見てみたかったゲテモノもあるらしいが食ったら最悪死ぬらしいのでお勧めしないと二人に力強く言われた、それは本当においしくないのだろうと私もすぐ理解した。
後片付けをしている中、二人が息の合った動きで洗い物をしているのを
見て気になった事を聞いてみた。
「そういえば、アイニはヤマネさんを助けたのよね? ほらアイニって猫っぽいからてっきり仲が悪いのかと思ってしまったわ」
「ハハハ、確かにね! でもこいつもこんな性格だからさ、意外とうまくいってんだよ。 それに俺みたいなやつと交流してるからガラの悪い奴に狙われてないっぽいし」
ヤマネは元々のんびりとした性格のため何かしらガラの悪い悪魔にちょっかいをかけられていたが、そこそこ名の知れていたアイニが助けた事がきっかけでヤマネの周りにはそういったものが近寄ることが減ったらしいその感謝も含めてアイニには寛容的なのだという。
「ホントに突然やってきて当然のように泊まるなんて日常茶飯事なんだよ~ 迷惑だけどなれちゃったねぇ」
そうのんびりとした声で笑い声をあげると横でアイニが低い声でそう思ってたんだなと声が上がった。
そしてまた、ヤマネはヒェッという声を上げていた。
***
私がお風呂に入り終わり、二人におやすみと言い終わると部屋に戻りベッドに横になった。
今日起きた出来事を思い出しながらぼーっと天井を見上げる、よくよく考えたら今日は初めて尽くし新しい事ばかりで頭がいっぱいいっぱいだった。
あぁ、本当は日記でも書いておけばよかったなと後悔はした、これから起こる事、初めてばかりの経験に私もよくついていったものだ、きっとこれも、母様と一緒に読んだ冒険家の本の影響なのだろう。
私は恐怖よりもこれから起きる初めての体験の方が勝っていた明日は何が起きるのかしらそれだけ思っても楽しみで仕方がない。
そして私は、眠気に負け意識を失ってしまった――。
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