伝説のプロファイリング

てるた

第1話伝説のサムライ降臨

『ゴホゴホ』

 僕は1人学校の図書館でいつもの様に本を読んでいた。

 生まれながら病気持ちの俺にとっては遊んでくれる友人はいない。

 だから本は僕にとっての友人であり、唯一の趣味だ。

 特に僕が興味のある本は歴史物で武将が好きなので1人1人のプロフィールが乗っている『伝説のサムライ』という本が好きなのだ。

「何々佐々木小次郎は『バタン』

 

 目を覚ますと真っ暗な世界の中で羽根を持つ美少女が神々しく光っていて、足を組み偉そうに僕を見下ろしていた。

「未練はあるか?」

 未練。

 なぜそんな事を聞くのだろう。

 あれそう言えば、慢性的に咳き込む症状が現れない。

 もしかして治った。

 それとも…!

 自分の心臓に手をやると動悸がしてなかった。

「死んだんですね僕?」

「お前先に質問したのは私だぞ。誰が質問していいと言った」

 鋭い目つきで睨みつけられた。

「すいません」

「そんなのはいいから早く答えろ。未練はあるか?」

 今思いっきり頭をフル回転させて考えたけど未練は………あるな。  

「あります」

「良かろう。その未練晴らしてくればいい」

 天使というべきか分からないそいつは僕の目の前に異次元の裂け目みたいな物を出現させた。

「あのなんですかこれ?」

 なんかうねうねしていて気持ち悪いんだけど。

「どうでもいいから早く行け」

 後ろから蹴られ僕は異次元の裂け目に無理矢理入れられた。


 目が覚めたらいつもの図書館に、本を読んでいる状態で倒れていた。

 心臓に手をやったらドックンドックンと確かに動悸していた。

 さっきのあれは夢……か。

『ゴホゴホ』

 咳も確かにでる。

 やはり夢だったのだろう。

 閉館時間が近付いてきたので『伝説のサムライ』の本を閉じ図書館を後にした。


 家に帰る途中辺りは完全に暗くなっていた。

「ヤバイヤバイすっかり遅くなってしまった」

 と呟くと後ろから『ジャリッ』と音がした。

 後ろを振り向くと誰もいない、ただ真っ暗な平坦な道が続いていた。

 再び歩き出すと、『ジャリッ』と音が聞こえる。

 僕が一歩を踏み出すと、後ろから一歩を踏み出している。

 確実に誰か僕の後を付いてきている。

 もう一度確認しても、人の姿はやはりない。

 肩に頭に石ころが当たった。

 頭上を確認すると、剣が垂直に落ちてきまた。

 前髪がヒラリとかすったが、とっさに体を動かして剣が当たるスレスレの所で回避したが、そのまま地面に尻餅をついた。

 剣は俺の足の間の地面に突き刺さり切れ味は本物だと、言わんばかりだ。

 月の灯りで剣を持った男の姿が見えると、僕と同じ制服を着ていたので、一緒の学校に通う生徒だと確認する事ができた。

 だが顔は覆面で隠していたので、誰かはしっかりと確認する事ができない。

 覆面の男が剣を抜くと、目の焦点が僕に向けられているか分からないが、確かに見ている。

「こ…こ……殺さる『ゴホゴホ』」

 僕は慌てて立ち上がり後ろを振り向き、全力で逃げた。


「ハァハァ『ゴホゴホ』」

 どこか目的地がある訳ではないがとにかく全力で夜道を走った。

 

 目の前に図書館が見えたので、常連だった僕は鍵が掛かっていない窓からこっそりと中に入った。

『ガシャン』

 と窓ガラスが割れた音が図書館中に響き渡った。

 物陰に隠れ息を殺しやり過ごすのを待っていた。

『コツンコツン』

 と足音が僕の前から徐々に遠くなる。

 念の為足音が完全になくなるまで、待とうとしたら一定の足音のリズムが消えた。

 不思議に思い顔を物陰からだすと「うわー」目の前には覆面した顔があった。

 あまりの驚きに床に着いた手をうごかし、スライドする様に後ろに下がった。


 覆面の男が僕に近付き横一閃に剣を振ってきた。

 僕はたまたま避けた訳ではないが、頭を床に伏せるとギリギリの所で回避した。

 相手の刀は無造作にも本棚の本を斬りふせバラバラと床に散らかった。

 散らかった1冊が僕の目の前で『バラバラ』とページがめくれ、そこには僕がいつも読んでいた、『伝説のサムライ』だった。

 ちょうど佐々木小次郎の所でめくれていたページが止まった。

 覆面の男は上から剣を振り下ろしたきた刹那、佐々木小次郎に関しての全ての知識が頭の中に入ってきた。


 俺は床に落ちた分厚い本を拾い、振り下ろした剣のけさきが分厚い本に触れた瞬間に剣を流し、床に剣が刺さった。

「誰だ貴様は?」

「………佐々木小次郎だよ」

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