傘柄高校新聞部は今日も。
360words (あいだ れい)
第1話 一般男子高校生モーニングルーティーン
ぱちり、と目を開けると、朝の相方である目覚まし時計と目が合った。時計の針は六時五十八分を指していた。なんの
掛け布団を跳ね除け、目覚まし時計を掴み、しっかりとアラームを止める。以前、アラームを止め忘れていたせいで、一日中アラームが鳴っていたことがあったので、それ対策だ。カレンダーをパッと見ると、今日は五月一日だ。
寝室の窓を開けると、澄んだ朝の空気が部屋の中に入ってくる。まだ少し赤みがかった空がとても綺麗だ。
「気持ちのいい朝だな」
浅すぎる、
リビングに入ると、いつものように母親が台所に立っていた。
「おはよう」
「おはよー、ケンちゃん。今日も
腰の辺りまである髪の毛を揺らしながら振り返る母親。見慣れた顔だ。
「何〜? 私の顔なんかじっとみて。なんか失礼なこと考えてな〜い?」
母親は時々鋭い。なんでもないよ、と取り繕ったような言葉を返すと、
母は何でも見透かしてくる。爆発状態の頭をかきながら、俺は洗面所に向かった。
俺の朝は寝癖との戦闘である。
まず、洗面台に頭を突っ込んでお湯を出す。ここで冷水を出して驚く様なやつは二流、もしくは寝癖を直したことのない様なやつだ。先に顔を洗い、一旦タオルで拭いてから、もう一度お湯を出して頭にかける。一通りお湯が髪を濡らし終わったら、タオルで抑えるように水滴を拭い、ドライヤーで乾かす。この時ドライヤーの勢いをマックスにしていると髪が痛む(高級ドライヤーならそんなことはない)ので、風量が穏やかなモードで乾かす。ドライヤーを止めて、軽くブラシで髪を
ちなみにちょっとした豆知識だが、髪の毛は濡れた状態から乾くときに形状が決まる。濡れた髪で前から熱風を当て続ければ、ワックスを使わずに前髪をふわっと上げることができる。逆に真上から熱風を当て続けると、頭頂部がぺたんとなって、非常にダサくなる(俺の場合は)。髪を乾かす時は、できるだけ中心に髪を寄せることを意識しよう。って美容師が言ってた気がする。
「……うん、よし」
納得出来るくらいにはなったので、ドライヤーのコードを抜き、本体に巻き付けて洗面台の鏡の中に仕舞う。本当はワックスをつけたりしたいが、俺の通っている高校は
洗面台の電気を消してリビングに戻ると机には包まれた弁当と朝食が並んでいた。
「ありがと、母さん」
お礼を言うと、母親はいつもやれやれみたいな顔をする。その仕草の感じが、なんていうか、あれだ、ギャルゲの
「イケメンぶっちゃって〜。私の一日でやることこれで半分終わってるんだからね〜?」
ケンちゃんが家出ちゃった後はすっごい暇なんだから〜!、と力説する母の話に耳を傾けながら、俺は手を合わせて「いただきます」と言い、母の作ってくれた朝食を食べ始めた。
食器を片付けた後、自室に戻り、制服に着替える。充電コードに挿しっぱなしだったスマホをコードから抜くと、ちょうどスマホがテロン!と通知音を立てた。
From:父『今日はみさきとご飯を食べる。すまんが外もしくは自分で飯頼む』
みさき、と言うのは母の名前だ。俺は父からの無骨なメッセージに『了解、楽しんで』と返信して、スマホをブレザーのポケットに仕舞う。俺も一緒に、なんて無粋な返事は返さない。なんせ、久しぶりの二人きりの時間なのだ。
うちは家庭環境が複雑で、別に仲が悪いとかそう言う訳ではないんだけど、本当にただ複雑だ。俺の両親は一緒に住んでいないが、世間的に言う別居とは少し話が違うかもしれない。
そんな無駄な事を考えていたら、時計は七時四十五分を挿している。そろそろ家を出た方がいい時間だ。俺はスクールバックを肩に掛けリビングへ。雑に開けたバックに弁当と水筒を突っ込んで、「行ってきます」と言い、「いってらっしゃ〜い」と言う母親背を向けて玄関へ。
急いでローファーを履き込み、重めのドアを開けると、カッ!と照る様な日差しに怯んでしまう。暑い。
最近気温が上がってきて、ブレザーを羽織ったままだと汗ばむ様になってきた。今月の中旬には制服移行期間がやってくるので、それまでの辛抱だ。
こうして、俺、
そんな、つもりだった。
傘柄高校新聞部は今日も。 360words (あいだ れい) @aidarei
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