物部帝国

鷹山トシキ

第1話

 人の命なんて軽い。俺がそう感じたのは15歳のときだ。同級生がいじめで自殺。クラスメイトも、教師も平然とした顔で日常を送った。そして、人を殺すことが合法化されれば、犯罪が減るのではないかと思った。俺の親父は国会議員で、コネを使い政治家になった。さらに、50歳のときに首相に就任した。

 俺は1人につき、3人までなら人を殺してもいいというルールを定めた。


  2021年4月6日

石田光は、野火中学校に入学した。中田律子という社会科担当が担任だった。 

「私は規律を守れない生徒には容赦しません」と、言う言葉通りに5月の終わりに無断で遅刻をしてきた、山村将太を鎌で殺した。山村は、「五月病で…」と、いいわけをしたが中田は聞き入れなかった。中田律子【残り2人】

 

 2021年5月26日

光は友達の狭山明子と帰り道を急いでいた。雨が降りそうだ。チャリをかっ飛ばし坂道を下る。 

「中田の奴、おっかないよね?」 

明子はガムをクチャクチャ噛んでいる。 

「呼び捨てにしない方がいいよ」 

「ふん、こっちから殺してやるわよ」 

 八百屋の前に来た。人が倒れている。

 八百屋の主人の源さんだった。

 警察を呼ぼうと、明子が電話ボックスに駆けていく。ドアを開けたとき、爆音が轟いた。明子がミンチに変わり果てた。源さんを殺した犯人が近くにいる。

 そう察した光は動けなくなってしまった。横断歩道を黒い服の男が渡るのが見えた。男がナイフを抜くのが見えた。

「君を殺したいけど、君で3人目だからなぁ、ツダを殺せなくなっちゃうからなぁ」男がジリジリ近づいてくる。

 くそっ、足が、動かない! 

 そのとき、黒のオープンカーが颯爽と現れた。運転席からイケメンがショットガンをブッパナス!ズガァン!! 

 麻酔銃だったようで、襲撃者がグーグー鼾を掻き出した。 

「お嬢さん大丈夫?」 

 紳士的な男だ。年齢は30代前半? 

「助けてくださって、すみません」 

「若い子がこの街から消えるのは悲しいからな」 

 男が警察手帳を翳した。【制圧隊・赤座拓海】刑事だったのか?

「家まで送っていこう」 

 光はオープンカーの助手席に乗り込んだ。 

「さっきの男ですけど、逮捕しなくていいんですか?」 

 端末に襲撃者のプロフィールが表示されている。小早川啓一、32歳。無職、殺害人数2人【阿久津源三・狭山明子】

 1年前まで阿久津の下で働いていたが、解雇されている。 

「まだ2人だ、あと1人殺したら死刑だ」全ての人間はコードで管理されている。いつ、どこで死んだのか制圧隊は把握している。

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物部帝国 鷹山トシキ @1982

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