人類はまだ進化するはずだ!

ほしのみらい

第一章

第一章


 この地球に有る物全て、人間が作り上げてきた物。

文字や数字、学問の全て。

 人間の衣食住の発展の全ては、長い時を経て今の様になった。神も仏も人が作り上げ、あがたてまつってきた。物の長さも重さも、時計までも、この地球で都合良く過ごす為に考えられた。


 文字・言語……人間同士、干渉する時に穏便に事が進む様にする為の手段。

物の発明……地球で過ごす為に考え出された方法論。


 全てが地球上でしか成し得ない、人間に都合の良い様に作られ、考えられた事ばかり。

 地球上の世界は、国というものが考え出され、人間をグループ分けした。

その為、他の人間との干渉を避ける為に各地で言語が考えられた。

仲間同士は発展を許し、他からの干渉には抵抗を続けた。


 果たして、人間はこのまま過ごしていて良いのだろうか?

答えはNoだ。地球から見ても、そうそう都合良く過ごさせてはもらえない。


 地球の事も考えずに、2、3万年程度の間、人間が好き勝手に生きながらえさせてもらっていただけだ。


 そう。過ごさせてもらっているという事を忘れてはいけない。

 ようやく生命の頂点に立った人間は、今後は地球に甘えて過ごしてはいけないのだと感じなくてはならない。


 地球上には人間があふれかえってしまった。生きるすべを発展し過ぎてこうなった。責任は当の人間に有る。

 その責任は重大だ。

 地球への罪滅ぼしには、同様の年月を掛けて行うべきで有る。

2、3万年掛けてだ。


 誰一人として地球への恩返しを考えようとしない。考えてもいない。罪滅ぼしなどこれっぽっちも頭に無い。

 何故だろう……。それは当たり前になっているからだ。長い年月の間に当たり前が刷り込まれ、今の人間の日常になっているのだから。


 言ってしまえば、地球は人間の物ではない。たまたま地球という惑星に生まれた生命なだけなのだ。

 やがて知恵が付いた人間は、地球を自分の物の様に扱い始めた。

地球の物を人間の資源であると……。果ては国同士で資源を取り合い始めた。

 資源と言っているが、これは地球の所有物であって、人間の所有物ではない。長い時間の末に取り違えて考えている。


 地球が生き物であると考える人間がどれだけ居るだろうか?


 今、地球上の人間は一つにまとまらなければならない。

 人間の都合に合わせて作った、国と言う概念はもう必要としない。言語も一つあればそれで済む。経済は一切不要。単純経済で十分だ。


 好き勝手に使ってきた地球の資源という、本来地球個々の財産。それを人間は地球の為に使わずに自分達人間が使い、今までを過ごしてしまった。この罪は重い。重過ぎる。


 何十万年、何百万年という地球の寿命を奪ったのは他でもない人間達だ。償おうにも償いきれない。


 ならば地球上の人口を制限して、溢れかえってしまった人間は他の惑星への移住をするか、地球外に居住スペースを作り上げ、移住するしかない。これは地球に対しての人間の償いなのだ。


 直ぐに変えようとしても無理な話。科学の進歩が全く追いついていない。手遅れかも知れないが、地球が寿命を迎える前に手を打たなければ。今から、早急に。


 我が国の領土領土と言っているが、それもおかど違いだ。陸地は地球の物であり人間の物ではない。国同士がいがみ合っている問題とも違う。

 遂には、我先にと地球外から資源を得ようとする。

 そんな国は、国土と称して地球から奪った大地を返還して、さっさと国ごとそっちに移住すれば良い。


 どうだ?直ぐに出来もしないのに。

国同士が我先にと争っている時間など無いはずだ。

 始めたからには、これ以上は出来ませんでしたでは済まない。地球の物を無駄にしてしまっておきながら、言い訳もはなはだしい。

だったらやらなければよっぽど平和だろう。

今の人間世界は今後2、3万年の間に決着してもらわねば。


 地球だけが変わっていく訳ではない。刻一刻と周囲も変わっている。ただそれに気が付かずに過ごしているだけだ。

 地球の人間は、これに早く気付くべきで、早く対応すべきである。




 さあ、そろそろ本題に話を移そう。


度々遠方から地球を観察しにやって来ている生命体に目を向けようじゃないか。


 まだりずに過ごしているのだな……とさじを投げられているに違いない。

またやっているのか、それは以前に痛い目を見ただろう。

そう思われている事も有るだろう。


 それは違う。こうするべきだ。そこはこうするんだ。……と声が聞こえそうである。



 すると、部屋の天井から声が聞こえてきた。合成された音声の様だ。


「地球の生命体の諸君。こちらの勝手で来てもらい恐縮している。君達にここに来てもらったのは他でもない。好きな惑星へ移住出来る手助けをしようと考えている。こちらは残る準備が出来次第、現在の人口の半分を、直ちに地球から去ってもらう。何が必要で有るか、ここで話し合いたまえ。」


 ノウハウを提供されたとて、直ちにというのは不可能。それをやれと言う。だが抵抗は出来ない。丸腰のままに連れ去られた。一体ここが何処で、自分達がどうやって連れ去られたのかさえ分からないでいる。


 この部屋には、地球の生命体の代表としてとらわれ、既に別の惑星に来ていると思われる。逃げる事など出来るはずもない。何処の惑星にいるのかも分からない。


 また天井から声がする。

「言い忘れたが、いつまでもダラダラと話合っているのであれば、即座に地球ごと抹消される。もちろん君達は、その後消される事になるのを覚悟しなければならない。必要な手助けを教えただけで不服ならば、我らが輸送の手助けをしよう。それには条件がたっぷり有るが、その条件を了承するなら全てを提供しても良い。さあ、話しなさい。」


 好きな惑星に、人口の半分を移住させろと言ってきた。

 世界の半分の国を丸々移住させる。言うのは簡単だ。


 同一言語の国の人口を集めて移住させる方が、互いに理解し易い。それに、もう生活習慣も国の文化も関係無い。

 地球を出て、果たして行く先が見つかるだろうか……。

移動が出来ても生き続ける事は不可能だろう。たとえ行く先が有ったとしても、上陸するのみで居住は出来ない。

 それを強引に要求している。地球外へ出た人口の半数は犠牲者同然になってしまうだろう。


 この条件を地球の人間には伏せておき、地球外へ人口の半数を出してしまうか?そうすれば残り半数の地球の人間は辛うじて生きながらえる。

 断ったとするなら、地球が無くなると……。連れ去られたここの人間も消される。要求を承諾しても更に条件があると言う……。


 結局地球侵略なのか⁉︎

 彼等はまだ地球観察を止めてはいないだろう。

何が目的なのかも分からないまま、条件を突きつけられても、全く手の打ち様が無い。




 地球には無い、不思議なシートに座らされていたのは、皆地球の国家代表者で、総勢20人。地球ではG20の首脳陣だ。当然顔見知りも多い。

 記念撮影の一瞬、周囲が光り、気が付くとここにいた。

 たとえこのまま地球に戻されたとしても、言われた通りに、急に国を、人間を動かす力は無い。増してや地球の人口の半数を移動させる力など有る訳が無かった。


 また声がした。

「君達の一存で今後の地球が変えられるかどうか、ここは特に大事な局面だが?……それを我らが手を貸そうと言っているのだ、先ずは地球全土に警告を発して国とやらを従わせなければ。君達はそれぞれメッセージを用意しておく事だ。それを伝え、実行してもらう。地球には少々荒っぽい方法になるが、君達の国の中心地は壊滅させる。これで従わなければ地球は無くなると警告しておこう。君達もその様にメッセージを考え伝える事だ。」


 部屋の人間全てが止めるよう嘆願した。

 だが、冷酷にもその後しばらく何も言ってこない。


 一体ここは何処で地球からどれ位離れているのか、誰となく呟いていた。


 座ったり立ったり、歩いたり……。

何ら地球と変わらない感じがある。

 地球と同じ重力なのか?それとも操作された環境なのか。


 不思議なシートが並ぶ部屋は、さほど広く無く、聞こえてくる声は天井から。スピーカー⁉︎そんな物では無さそうだ。


合成された様な声はしばらく聞こえてこない。


 部屋の様子は分かっているのだろうが、地球の人間には、一切関知せずと言ったところか……。


 1つの壁に、地球の都市が映った。ようやく声が聞こえてきた。


 「君達が主権を握る20の国々をお目にかける。メッセージは考えたかい?必要な物はまとまったのかな?どうせ君達の事だ、生活しながら移動が出来るのかそればかりが気になるのだろう。行き先が決まって上陸しても居住する用意も出来ないわけだ。」


 壁には20の国々が変わるがわる映っている。


 「自立移動しながらでも生活していける、又、小さな星に移る。20の国、いや人口の半数分だけ移ってもらう。生活が出来、行き先を探せるのだ。十分過ぎる手助けと思わないか?……まぁ欲を言えば、地球には1千万人程が過ごせれば十分。君達人間はそれに気付かずどれだけの時間をのうのうと過ごした?2万年だぞ、分かっているのか?国とやらの政治ばかりをしてたら分からんだろうな。」


 壁の映像が消えた。


 「君達人間が、地球に対して行った愚業ぐぎょう。この2万年の映像を2万年掛けてご覧になれるかな?早送りでも千年掛かる。ははは、無理な話で悪かった。……えー、さて。観てもらったそれぞれの国の中心地。君達は首都と呼んでるそうだが、先ず映像を出した20の国々の中心地は消えて無くなる。大地を残して全てだ。」


 部屋の人間達に言葉は無かった。何から切り出せば良いのかさえ分からない。

 1人が声を上げた。止めてくれと言う他に言葉が出てこない。


 再び、壁に映像が映る。


 「場所は知らないが順番に消していく。地球の陸地には196もの国とやらでグループ分けしている様じゃないか。196の中心地は消えると言う事になる。そこで生き残った半数を地球外へ、残りの人間は何とでもなろう?今までの間、食料から資材まで、何でも地球から奪ったのだからな。……おろか、正にその言葉が相応ふさわしい。外に出て行った人間達は、2万年行き先が見つからないかもしれないが、償いだと思って諦めろ。まぁそうならない事を祈っているよ。残った人間にも2万年程掛けて、地球に償う事を勧める。……では映像はそのままにしておく。さて、そろそろ始めるとする。ではまた後程……。」


 映像に映っている地球上の各国の首都があっという間に荒野と化していった。次の首都も、そのまた次の首都も。


 映像では生き物の姿までは捉えていない。

 黒焦げどころか、荒れ果てた状態を見届けて、無情にも別の映像に切り替わる。


 部屋では気絶する者も出た。立ち上がれずしゃがみ込んだままの者もいる。

 

 画像が切り替わる度に角に数字がカウントされていくのが分かった。順番にと言うのは、どうやら大都市からと言う訳でもなかった様だ。


 小さな国土の国は跡形も無く消えてしまっていた。


 角の数字は無情にもカウントが続く。

 映像は淡々と状況を映し出しては次の首都の画面に切り替わる。


 「もっとピンポイントにも消滅は可能だが、我々はいちいちそんな事に構っていられない。まもなく用が済んだら、今度は君達のスピーチの番だ。国中に、世界中の人間の心に、響くメッセージを期待しているよ。」


 映像は続く。

 どこから攻撃してこの様な惨事を引き起こせるのか?誰もが考えていた。生き残った人々へのメッセージ……どう伝えて、どう行動に移ってもらおう……。

 

 さらわれてここにいる者達には成す術も無く、映像に観入るだけであった。







 




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