ショートケーキマン

羽柴ddk

前編

「ウェルカァム・・・」

野太い声とともに後頭部に衝撃が走り、僕の意識はショートした。


カンカンカンカン!!!!

甲高い金属音が鳴り響き、僕の意識が浮上する。

ここはどこだ?

僕は何を?

そんなことを考えていると、

「グッモーニン!!!!!!Mr.ユーーリィ!!!!!」

赤黒い照明が支配する部屋にメガネをかけたオタク野郎がいた。

なんなんだコイツは・・・。

「あぁぁ、ごめんよユーリィ。いきなり頭なんかぶん殴っちまって、君とは知らなかったんだ」

オタク野郎は汗をダラダラ流しながら、僕の拘束を解く。

なんでコイツは僕のことを知っているんだ?

というか何故ここにいて、僕を襲ったんだ?

「あんたは一体何なんだ?」

「ぼく?ショートケーキマン!!!」

だめだコイツ頭がイカれてる。

きっと僕はこいつにレイプされて、バラバラの状態で河の中を遊泳することになるんだ。

逃げなければ!

デブが拘束を解いた瞬間、僕は脱兎のごとく駆けだした。

「ああ!!ユーリィどこ行くんだ!」

うるさい!僕にはやるべきことがあるんだ!

「仕方ない・・・、ごめんよユーリィ!」


部屋のドアに手をかけた瞬間、僕はすっころんだ。

正確に言えば脚の感覚が無くなり、ずるりとへたり込んでしまった。

そして僕は自分の下半身を見て絶叫した。

僕の足が生クリームのようになってしまっているのだ!!!!!

「本物の生クリームだよ、でもすぐに直すから安心してね」

「何なんだこれ!何なんだ!」

「ユーリィ、君が困惑するのもよく分かる。だが安心してほしい、ぼくは君の味方だ」

「味方・・・?」

「妹さんのことで、ここに来たんだろ?ぼくもそうさ、あいつの手掛かりを追っていたんだ!!」


僕の妹エミリーはある連続殺人事件の犠牲者の一人になってしまった。

その事件の被害者はみな手足が溶けかけのチョコレートみたくふやけていて、内蔵丸々がゴッソリと掬われているように無くなっていた。

エミリーの遺体も同様の状態だった。

僕は妹を殺した奴に復讐するつもりだ。

そこで、最後に妹が目撃されたというこの廃墟となったテーマパークに手掛かりを求めてやってきたのだった。


僕の脚をオタク野郎ジョエルが直し、こいつの話を聞くことにした。

ジョエルの話によれば殺人犯は自分のライバルのチョコレートケーキマンらしい。

この時点で常人なら相手はしないのだが、ジョエルの能力を体験してしまった僕はこいつの話を信じざるをえなかった。

ジョエルは同族であるチョコレートケーキマンの犯行に怒りを覚え、独自に調査を進めていた。

今回のエミリーの件で遂にヤツの足取りを掴んだということだ。


「ヤツがここに来るのか・・・」

「ああ、その可能性は非常に高いよユーリィ。ヤツは獲物を殺した場所に再び戻る癖があるんだ。今まではヤツの後追いになってしまったが、今回は待ち伏せできる・・・」

「どうやって奴を殺す?銃ならある」

「あいつに銃は効かないよユーリィ。君の銃は預からせてもらった、あいつを殺せるのはぼくしかいないんだ」

悔しいが、今はこいつに託すしかない。

ジョエルとの作戦会議を経て、チョコレートケーキマンを迎え撃つことにした。

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ショートケーキマン 羽柴ddk @hashiba22k

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