第28話 / 討伐⑥
「ウド獄長!あれ!」
エヴァが前方を指差す。
森を抜けた3人は目の前に広がる廃都セヌアの目前までたどり着いたのだった。
「危なくなったら逃げろ。深追いするな。駄目なら次の援軍に託す。いいな?」
ウドが2人を眺めていう。
「はいっ!」
「ウッス!」
3人は周囲に警戒しながらセヌアへ近付いていった。森を抜けた場所からセヌアまでは平原となっているため隠れる場所があまり無い。
隠れる場所を見つけては身を隠し、周囲を警戒する。問題無いと判断するとウドを先頭に先に進んで行く。
それから数時間経過し日没に差し掛かった。
しばらくすると、セヌアの都全体に大きな声が響いた。
「ターイム オーバー! だーれも投降しなかったね。ここ迄お馬鹿さん達だったとは思わなかったよ。じゃあ今から...覚悟しろよ!皆殺しにちゃからねーーーーー!」
すると2体の黒い影が凄いスピードでセヌアの町を駆け巡る。
「ぎゃあ!」
「ひい! 助けてくれ!」
仲間の叫び声
次々に殺されていく
援軍は間に合わなかった
最後くらい戦って死ぬ。
逃げて殺されたんじゃ殺された部下逹に笑われる。
アドルフは剣を握ると傷だらけの身体で隠れた場所から出て行こうとした。
ガシッ
誰かがアドルフの肩を掴んだ。
?!
振り返るとウドとエヴァ、それにリュックがいた。
「ウド獄長?それにお前ら...どうして私の場所が?」
「伝言鳩をお前宛に飛ばした。そして居場所を突き止めたのだ。お前はその傷では戦えない。回復薬を渡しておく、しばらく休んでおけ」
「ありがとうございます。あの...援軍は?」
「ワシら3人だけだ。不満か?」
「いえ!ウド獄長自ら来て頂けるとは...くっ...すみません...私のせいで殆どの仲間が...ぐ...」
「過ぎたことを悔やんでも仕方がない無いだろう?今、ワシらがやるべき事は業者の奴らを討伐する事。死んでいった者逹の為にもな」
このやり取りを見ていたエヴァとリュックは改めて悲惨な現場に飛び込んで来たことを認識する。
それと同時に必ず斡旋業者を捕える事を強く決意した。
3人は物陰に隠れながら外の様子をうかがう。
遠くから生き残った者たちの叫び声が聞こえてくる。
奴らは確実に生存者を殺しにかかっている。
ここが見つかるのも時間の問題だった。
ウドが右手を挙げて2人に声を掛ける。
「ワシが
ウドがずっと先を指しながら2人に言う。
「はい!」
「ウッス!」
3人はタイミングを見計らい一気に闘技場まで駆け始めた。
ウドが先頭を走る。その後を追うように2人が付いて行く。
何事もなく進む事が出来、広場まであと少しで到達する所まで来た。
ウドは合図をして2人に隠れるように指示を出す。
ウドが1人で闘技場の真ん中に到達した。
闘技場では所々倒れている死体に鳥が群がっている以外、辺りはシーンと静まり返っていた。
物陰に隠れながら息を飲むエヴァとリュック。
しばらく待つが何も起きない
「業者の奴ら逃げたんじゃねーの?」
リュックがエヴァに喋る。
「しっ!」
エヴァが唇に人差し指を当ててリュックに黙るようにジェスチャーする。
それから
「あー、つまんねぇ...あいつら違う所に隠れているんだよ。俺、ちょっとウド獄長へ違う場所へ行こうって提案してくるわ!」
そう言うと、リュックが物陰から闘技場にいるウドの元へ駆け出した。
「リュック! 駄目よ行っちゃ!」
エヴァがリュックを止めようとするが時すでに遅し。
その時だった、ウドの元へ走るリュックに黒い影が物凄いスピードで接近してきた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
黒い影がリュックに襲い掛かった。
エヴァが両手で顔を覆って叫んだ。
「リューーーック!」
叫び声を聞きつけたもう一体の影がエヴァを襲う。
エヴァは戦闘態勢に入っていなかった為、動けなかった。
鋭い爪がエヴァを襲う瞬間に横から巨大な拳が黒い影を叩きつけた。
それは、ウドの拳だった。
「ウド獄長!」
エヴァがウドを見ると右脇にリュックを抱えていた。
「ウド...獄長...すみません...俺の...俺のせいで...背中が...」
「ひっ!」
リュックの言葉にエヴァがウドの背中を見て小さく悲鳴を上げた。
ウドの背中に3本の深く大きな傷が付いていた。その傷から血が止めどなく流れていた。
「エヴァ!リュック!ワシの事は構うな!戦闘に集中しろ!また来るぞ!」
2体の黒い影が3人を襲う。
ウドとエヴァ、それにリュックが3方に分かれて避ける。
「チクショウ!俺のせいでウド獄長が...チクショウ...」
リュックは戦闘意欲を失っていた。
「エヴァ!リュックは駄目だ二人で凌ぐぞ!」
「はい!!」
一体の黒い影が再びリュックを襲う。
リュックは動かない...顔を下に向けてうな垂れたままだ。
「
エヴァが黒い影目掛けて杖から黄色く大きな炎を打ち放す。
ヴォヴォヴォヴォーー!
黒い影が黄色い炎に包まれてのたうち回り消滅した。
「やった!」
反対方向からもう一体の黒い影が油断しているエヴァを襲う。
ズシャ!
今度はウドが投げ入れた大きな斧が黒い影を分断して消滅した。
パチッ パチッ パチッ パチッ
遠くから1人の小柄な男が拍手をしている。
「いやいやいや、素晴らしい。見事な攻撃。でもおかしいなーあの2体で200人近くあんた達の仲間を惨殺したんだけどなー。それがたった3人にやられるなんて...残念」
「お前がニコルか?」
ウドが小柄な男に聞く。
「驚いた...そこまで俺達の情報を掴んでいたとは。あんた...見たことがあるな...その鎧とでかい斧...まさか...元タギアタニア右軍将軍...ウドか?」
「ニコル、お前はワシの大事な部下達を殺した。これ以上生きていけると思うなよ。。」
ウドの身体中からオーラが噴き出す。
「ひゃははははは!なになに?俺を殺すの?殺しちゃうの?」
ニコルが腹を抱えて笑い出した。
「なーんにも準備してなくてお前らの前にのこのこ出て来ると思う?ん?」
ニコルが右手を大きく挙げた。
ゴッ ゴッ ゴッ ゴッ ゴッ
すると、闘技場の檻で封鎖された一角から檻が開かれる音がする。
三人がその先を見ると熊のような姿をした獣人が2体、ゆっくりと姿を現した。
さっき倒した2体の影より一回りり大きい。
身体の大きさから見ても簡単に倒せるようには見えなかった。
グルルルルルル
獣の唸り声が闘技場に鳴り響く。
「コイツらはなかなか私の言うことを聞かなくてね...獰猛どうもうで危ないから檻に閉じ込めていたんだ」
ニコルが聞いてもいないのに説明を始める。
「おい!あの3人を殺せ!少しわ役に立て薄汚い獣人が!!」
それを合図に、2体の獣の後ろからニコルの部下が鞭むちをふるいはやしたてた。
「ぎゃあーーー!」
すると、2体の獣は振り返ったと思うと鞭を振るった男を一瞬のうちに八つ裂きにしてしまった。
3人がその場面に気を取られている隙に既にニコルの姿は無かった。
周りを見ると全ての出口が封鎖されている。
3人は闘技場に閉じ込められたのだった
「さぁ!ショータイムの時間ですよ!観客がいないのが勿体ない対戦カード!獣2体と人間3人の対決!それも元右軍将軍様が参戦だ!」
闘技場のVIP席からニコルが声を張り上げる。
ウドが2人に声を掛ける。
「あの2体はさっきの奴らとレベルが違う。油断したら...お前らは死ぬ。だからとにかくお前逹は倒そうとするな。自分の身を守る事だけに集中しろ!」
「はいっ!」
「...」
グルルルルルル
2体の獣が目の前にいる3人を獲物と認識したようだった。
「構えろ!!来るぞ!」
討伐をかけた戦いが始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます