第25話 / 討伐③

廃都セヌア


元々隣国グラトーレ共和国と繋ぐ貿易町として栄えていた。


しかし、100年前にタギアタギア王国で巨大な壁が建設された事で、壁の外側が無法地帯になってしまい衰退の一途を辿り廃都となってしまった。


建物は100年経っても劣化する事なく残っている為、斡旋業者としても拠点として活動するにちょうどよかったのだろう。


当時繁栄していたであろう装飾された石畳が血の色に染まっている。


辺り一面、討伐隊の遺体、斡旋業者の死体が転がっていた。


早速、血の匂いを嗅ぎつけたカラスの様な鳥、異形のモンスターが死体に群がっていた。


情報提供者のシャーロットによるとターゲットは監視レベル2のはず。編成された隊員の平均全体値レベルは5~10。人数も相手より4倍の数を用意。多少のレベル差なら圧倒的な人数の差で何とかなると読んでいた。また、抜かりが無いように万全を期して臨んだ討伐計画だった。


斡旋業者討伐として編成された隊員は200人の精鋭が今や10分の1程しか生き残っている者はいなかった。


「何だよ。。。話が全然違うじゃないかよ。。。。」


数名の討伐隊員達が一斉にセヌアから逃げ出すが、後ろから猛スピードで動く黒い影が2体、逃げた隊員達を切り刻み絶命させた。


もはや廃都セヌアから逃げる事も出来なくなっていた。


(途中迄は計画通りだった。金で雇われたボディーガードも何とか排除した。しかし、問題なのはあの2・体・だ。あの2体が我々の隊員の殆どを切り刻んでしまった。我々では対処出来ない。マリオは無事ベルヴァルト監獄へ帰還してカール監長へ援軍の要請が出来ただろうか?)


血まみれで建物の陰に隠れながらアドルフが思う。


幸か不幸かこの都は広く建物も壊れず現存している為隠れる場所には困らなかった。逆に言えば相手も何処に隠れてこちらを狙っているか分からなかった。2体の魔物から隠れながら何とか援軍を待っている状況だった。


都全体に響く大きな声が聞こえた。


「我々の拠点を良く見つけたと褒めておこうか。ベルヴァルト監獄討伐隊の諸君!投降する気はないかね?高台にある教会まで来て我々に投降した者は生かしてやろう。猶予は明後日の日没迄だ。投降しない者は...皆殺しだーーーーー!分かったかーーー!」


生き残って隠れている仲間達もさっきの言葉を聞いただろうか?


間違った判断をするんじゃないぞ?


奴らが約束を守るはずは無い。投降したら殺されるに決まっている。


アドルフは祈りながら援軍を待つしかなかった...


一報その頃、廃都セヌアに向かっている3人は魔物が巣くう森の中にいた。


ズシャ!! 


「ヨッシャー、これでモンスター20匹倒したぞ!!レベルがどんどん上がっているのが分かるぜ!ウヒャー!」


「リュック、私は25匹よ?私の勝ちね?」

エヴァが勝ち誇った顔でリュックを見る。


「うっ。う...るせー、これからが本番よ!おらー、モンスターもっと出てこいやー!」


「あまり飛ばすんじゃないぞ。体力を温存しておかないといざという時に動けなくなるぞ!」


ウドが2人に激を飛ばす。


「ウッス!」

「はい!」


嬉しい誤算だった。想像しているよりもこの2人の成長はずっと早い。稽古として2人に厳しさを教えた時と比べ物にならないほど短期間で成長していた。


ウドは右軍将軍時代の事を思い出していた。

慕ってくる若者が成長し出世していくのが何よりも嬉しかった。


もうこんな気持ちを味わう事は無いと思ったが...


これからはこういう若者の時代だ。ワシの思いを2人が少しでも継承してくれたら...


1匹の鳥がウドの元へ飛んできた。


「うぉ!鳥じゃねぇか?危うく刺し殺すところだったぜ」

興奮しているリュックが喋る。


「この鳥は伝言鳩!ウド獄長。何かあったんでしょうか?」

エヴァが心配そうにウドを見る。


伝言鳩はウドの耳元で囁く。


#クロガネが行方不明# #クロガネが行方不明#


「何?まだ監獄へ到着してないのか?あの馬鹿が...何をしとるんだ...」


ウドは伝言鳩の耳?へ囁き、伝言鳩は飛び立っていった。


「クロガネまだ監獄に到着してないんですか?どこまで迷惑を掛ければいいのかしら?」


エヴァが嫌味を含めて言い放つ。


「どうするんすか?クロガネ探しに行くんすか?」

リュックがウドに聞く。


「お前たちは余計な心配するな!この森を抜けたらセヌアだ。セヌアに行く事だけに集中しろ!」


「はい!」

「ウッス!」


―3人が通った2日後、1人の男が魔物の巣くう森に入っていた。



。。。。。。。


。。。。。


。。。


。。



67


68  パッパラッパー!


69


70, 71, 72


バキッ!


また折れたか... 次が最後の1本...キリがない


73 パッパラッパー!



あらがえ―


うるさい、分かってる


74,   75


ベルヴァルト監獄へ帰っているつもりだった。

しかし、頭の中であの声が聞こえるようになってから自分をコントロール出来なくなっていた。


76,  77,  78,  79,パッパラッパー


80,  81, 82


気付いたら3人を追ってセヌアへ向かっていた。そしてこの魔物が巣くう森まで来てしまっていた。


83,  84,  85, 86,  87 パッパラッパー!


方向は合っていると思う。間違ってたら馬鹿だな...


88,


大から小まで色んなモンスターがいるもんだ。


89,  90


切っても切ってもどんどん出てくる。

モンスターに免疫が無かったのにここまで来ると流石に何とも思わなくなった。


最初は嫌で嫌で仕方無かったはずだっだのに。


91,  92,   93,   94,   95


痛っ! くそっ!左手を噛まれた。

よしっ!まだ何とか動く。


96,  97,  98,  99


この剣が折れたら俺も終わりだな


100  


ジャジャジャジャジャジャーン!パッパラッパー!


何だ?いつもと違う効果音だが何なのかわからない。


101  


ハァ...ハァ... ハァ... ハァ... ハァ...


とりあえずは何とか凌いだみたいだが息があがって上手く呼吸が出来ない。


今になって身体が悲鳴をあげ始めた。


とにかく休める場所を探さないと... もう日が沈みかけている...

あそこに穴蔵がある...とにかく休もう。


その穴蔵は隠れるにはちょうど良い大きさで休めるには最適だった。


そう言えば分けてくれた荷物の中に何か食べ物や治療薬があったはず。


これか?


薬っぽいような...塗るのか?食べるのか?どっちなんだ?

ペーストだから傷に塗ってみるか...


ぺとっ、ぬりぬり


こんなもんでいいか。後はこれか。これは疲れた時に飲めとウド獄長が言っていたな。


ごくっ、ごくっ、ぐぇ!


物凄く不味い...


とにかく寝よう。身体がもた...な...い


ぐー .....すぴー.....


。。


。。


。。


ガサッ!


「誰だ!」

物音で咄嗟に目が覚め飛び起きるて辺りを見回す。


どうやらただの風の音だったらしい。

穴蔵の出口を見ると光が差し込んでいた。


朝か?


と言うことは随分と眠っていたらしい。お陰で身体の疲れも随分ととれたみたいだ。


傷口はどうだろう?


塞がってる...どういう原理なんだ?短時間で塞がるなんて...


とにかく先を急ごう。


3人はもうセヌアへ着いただろうか?


どうやらこの森のモンスターは俺でも倒せるんだからレベルが低いのだろう。あの3人ならあっという間に突破してセヌアへ着いているかもしれない。


クロガネは準備を手短に済ませ穴蔵を出た。


この森はどれくらい深いのかわからない。単純に真っ直ぐ行って突っ切れば通り抜けるだろうと考えて歩く。


おかしい...昨日はあんだけいたモンスターが一匹も出てこない。


全部狩ってしまったか?


まさかな...


ドカッ


ドカッ


ドカッ


前方で大きな音がする。


この音は何だ?何かを砕いているような音だ。クロガネは物陰に隠れて音の主を探す。


ドカッ


一匹のモンスターが粉々になってクロガネの足下へ飛んできた。


クロガネは飛んできた先を見た。


あいつは...


何で急いでいるこんな時に


いや...ラッキーだと思うべきか...今一番会いたい奴に会えた


あらがえ―


ああ...分かってる

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