第14話 / 再会
「大丈夫か!! テレジア!!」
急いで2人のガムテープとロープを外して生死を確認する。
良かった、2人ともひどい怪我をしているが息がある。
「何があったんですか?強盗ですか?直ぐに警察と救急車を呼びますから」
スマホを手に取り電話を架けようとした。
「本阿弥さん...待って...下さい...」
店主と思わしき人物が俺の手を掴んだ。ひどい怪我をしている。素人から見ても一刻の猶予も無いと感じた。
「私...よりも...彼女を...お願い...します...」
言われた通りテレジアの元へ駆け寄り様子を急いで見る。
「テレジア!大丈夫か?」
「緋色...さん? 良かった...来て...くれた...」
テレジアもひどい怪我をしている。
「待ってろ、直ぐに救急車を呼ぶからな!死ぬんじゃないぞ!一体何があったんだ?誰だこんなに酷いことする奴は!」
テレジアの酷い怪我を見て怒りで我を失っていた。
「ごめん...なさい...騙してしまって...あなたを...緋色さんをここに連れて来たかったの...」
消えいりそうな声でテレジアは俺に伝える。
「いったい何を言ってるんだ?とにかくもう喋らないほうがいい」
テレジアがゆっくりと目を閉じる。
「食事は...本心で...誘った...の」
目がおかしくなったのだろうか。彼女の身体が徐々に薄くなり最後に完全に消えてしまった。
「消えた? くそっ、一体どうなってるんだ!」
「良かった...エミリさん...ギリギリ...間に合った...ようだ」
店主らしき人物が呟く。
「なにが良かったんだ!テレジアは?あんた何か知ってるのか!」
何が何だか分からず詰めよってしまった。
「テレジア? ああ...エミリさんの...事...ですか...彼女は...大丈夫です...あっちの世界へ...転送されました...あっちへ行けば怪我も全て...リセット...されます...」
何を言ってるんだ? この男は大怪我により頭が錯乱してしまって意味不明な事を喋っていると判断した。
「とにかく救急車だけは呼びますから!いいですね?」
半ば強引に電話を架けて救急車を呼んだ。
「...私は...大丈夫です...それよりも...良かった...あなたが...あいつと...鉢合わせしなくて...こうして...あなたに...伝える事が...出来る...」
彼の血だらけの手が自分の額に熱を測るように触って来た。
「何のつも」
「黙ってて下さい!大事な...事なんです...私には時間がありません」
気迫に押されてなすがままにしたがった。
どれくらいたっただろうか、彼が手をゆっくりと額から手を離した。
「おおよそは...分かりました...あなたは...厄介な事に巻き込まれてしまったようですね...記憶の上書きまでされているとは...可哀想に...オリジナルがほとんど...残ってない...どちらにしても...あなたは...異世界へ行くべきだと...思います...そして...自分自身で...解決...する必要が...あります...それが...あなたの...宿命...です」
何故だか分からないが目から涙が溢れていた。
男がカウンター裏に並んだボルトを指差す。
「あれ...を...ピンクの...液体...」
従うままピンクの酒のボルトを手に取り男に見せる。
「あなたは...私が決めた...最後の...合格者です...正式手続きではありませんが...今井さんのプレゼントを...使わせて貰います...怪しいと思いますが...どうかこれを...飲んで。く...ださい...味は...保証...します...」
突然の事に戸惑った。もしかしたら救急車が来ても彼は助からないかもしれない。死にそうな男の頼みが酒を飲んで欲しいなんて... いったい何の意味があるんだ?
俺は彼の願いを受け入れてグラスにピンクの酒を注いで一気に飲んだ。
「本阿弥さん...申し訳ない...私では...1度消した記憶は...元に戻せない...前に説明した異世界の事も...私の事も...全部...忘れていると思いますが...憶えておいてください...異世界で...目が覚めたら...エミリさんのスマホで...彼女へ連絡...して下さい...マスター...で登録...してます...詳しい事は...彼女に聞いて下さい...訳が分からない事を...言っていることは...承知して...います...ですが...あなたなら...異世界...いや...転職先でも...成功出来る...と...信じ......て..」
消した記憶?
異世界?
転職先?
そこまでして一体何を俺に伝えようとしてくれたんだ?
それにこんな酷い事を誰が?
救急車は未だ来ないのか?
とにかく警察に連絡しないと、急いでスマホを手に取り警察に電話をする。
「もしもし?警察ですか?店に強盗が入ったみたいです。1人が血まみれになっています...ええ...はい...救急車はもう呼びました...ええ...場所? 場所は...」
ガチャッ
ドアの開く音がする。
とっさにスマホを切ってカウンターの中に隠れてしまった。
救急隊員か?
声が聞こえる。1人だろうか?誰かと会話をしているが所どころ何を言っているのか分からない言葉を喋っている。
「ФТЖФТТЖ?!=η№шジャック、念のためлФТψψЖρΥ㏍шBARを再確認した所、ллκлκχの田中のФФχχ確認した。もう1名のψТФχ‥мテレジア=エミリの姿無し。ллФκТηΥΨ㏍見て異世界へ転送されたФψ№мЙп。どうやったか知らなл㏍]~)мТηТロープがほどかれていた。ТρΥχΨФм№助け合ってほどいたと推測される」
違う。 救急隊員じゃない。
強盗が戻ってきたのか?
こいつがやったのか?
あんな酷いことをこいつが...
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