第3話 / 質疑応答
田中さんがホワイトボードを使って説明していく
―――― 仕事内容、やりがい ―――――
「異世界には色々な職業があります。並行世界のあなたが経験したことがない職業として 剣士、魔法使い、商人等があったり 面白い職業だと教師とか踊り子とかあります。職業の数だけ仕事内容も当然異なる。是非、こればかりはあなたの目で確かめて下さい」
「剣士とか魔法使いって。。。。完全にお伽の世界だな。 ん?ちょっと待って、踊り子なんて国の戦力にならないと思うけど?」
「前置きではそのように話しましたが、どの様に行動するかに制約はありません。国の為に働かなくてもペナルティーはありません」
「だけど、合格者皆がやりたい放題してたら異世界にメリットがあるとは思えないけど?」
田中さんがメリットのポイント2を指してこう言った。
「そこで優秀な人間の遺伝子が関係してきます。合格時、全員の遺伝子情報を採取させていただきます。我々はこの遺伝子を活用させて頂いているのです」
「見えてきたぞ、国はその遺伝子を使って優秀な遺伝子を持った子孫を増やし戦力として活用する」
「流石●●さん、ご名答です」
「因みに一つ面白い事を教えます。数年前に異世界へ転送された並行世界の合格者が最近、国の王に就任したと聞いております。興味があるなら会いにいってはいかがですか?」
――――― 人間関係 ―――――
「これは説明が難しいです。転送される国、職業により関係する住人も変わります。ただこれだけは共通して言えるのがどこの国にも種族があることです」
「種族?人間だけじゃないってこと?」
「その通りです。比率で言うと人間7 その他3ぐらいになります。どの様な種族がいるかについては異世界へ行ってからのお楽しみにしてください」
「いや、重要な事だから教えて欲しい」
興味ありげに田中さんが聞いてきた
「何故重要なのですか?」
「じゃあ質問です、種族間の関係は上手くいってますか?」
「...鋭い質問ですね。正直に言うとあまり良くありませんが各国が上手くコントロールしており国を脅かす大きなトラブルは今のところ発生していません。どの様な種族がいるかと言いますと大きく分けて神族、魔族、獣族...後、竜族がおります」
「なるほど... 人間が大半でその他種族はマイノリティになるのか。しかし人間関係というか種族間関係が大変そうだな。人種間だけでも差別や衝突があるくらいなのに。転職する理由の一番が人間関係というデータもあるぐらいだしね」
「確かにそうですね」
「それに...」 続けて聞こうとしたが止めた。
神族?魔族?種族が出てきたところで自分の常識から大きく逸脱していて、聞いたところで何とかなると思えなかった。
―――――― 安定性、将来性はあるか ―――――――
「田中さん、このポイントの説明は必要ないですよ。転送される国や職業で大きく変わるって事でしょ?」
「その通りです。先程も言いましたが王に就任した平行世界の人間もいます。行動次第では国を動かす事も可能な世界です」
「スケールが大きすぎる...」
説明が省けてほっとしたのかさっさと次のポイントの説明を始めた
――――――― 給与、福利厚生の充実度 ――――――
「これも転送される国や職業で大きく変わると思うけど、異世界へ行ったとして無一文は流石にきついな」
「その点は大丈夫です。一年間は働かなくても問題無いように十分な資金を支給します。その間、どの様な行動を起こすかじっくりと考える時間を提供します」
(試用期間みたいな感じだな)
「異世界は給料とか通貨の概念はあるの?」
「並行世界と同じように働いたら給料もでますし、通貨によるモノの売買もあります」
「......」
(売買があるという事はビジネスチャンスもあるかもしれないな)
「質問が無ければ次の説明に進みます」
――――――――― 勤務地、通勤時間、環境 ―――――――――
「職業が決まり次第、交渉してください」
「確かにそうなるか...」
「向こうには季節という概念はあるの?」
「季節はあります。春、夏、秋、冬と四季がある場所もあれば、1年中熱い場所も寒い場所もあります。平行世界との大きな違いと言えば1日24時間では無く48時間になります」
「1日48時間か...労働時間も長いだろうし身体がもつかな」
「言い忘れましたが、1つの国の大きさは大体日本列島と同じ位ですが天上を含めると5倍の面積になります」
「天上? いや... 次の説明して下さい」
――――――――― スキルが身に付くか ―――――――――
「恐らくこれがあなたにとって一番のメリットがあると思いますし、これが欲しい為に異世界への道を目指す人たちは多いです」
「どの様なスキルが身につくんです? こっちの世界で仕事のスキルと言うと営業だと交渉事とか接待、プレゼン能力だし、技術系だと設計とかあるけど」
「異世界で獲得できるスキルは、獲得した経験値を基本能力、つまり知性、身体、コミュニケーション、運 等に振り分ける事が出来ます。これが基本能力スキルアップになります」
「どうやって経験値を獲得して振り分けるの?」
「まぁ、モンスターを倒すとか、人からのお願い事等クエストを完了させるとか色々な方法で獲得して、レベルが上がればスマホを使って能力を振り分けします」
「突っ込み所満載だけど、レベルが上がるってどうやってわかるの?スマホを使って?モンスターってゲームとかに出てくるあれ?」
「スマホアプリでレベルチェックや能力振り分けをする事ができます。ただし異世界にはスマホは無いので面接合格者は必ず持参して下さい。モンスターはご想像の通りあれです」
とホワイトボードにモンスターの絵を描いてくれたが、グロテスク過ぎたので見るのを止めた。
「そしてもう一つが特殊スキルです。メジャーなのは魔法ですね。これは攻撃魔法、治癒魔法、特殊魔法がありますし覚えると異世界生活が楽になります。先ずはこれを覚えた方が良いですね。その他にもたくさんの特殊スキルが存在します。取得難易度が高いほどレアなスキル、例えば蘇生魔法があります」
「...蘇生魔法か」
「あっ 重要な事を忘れてました。この取得したスキルは平行世界に帰ると全て消失します。また異世界で生活した記憶、ここでの記憶も全て消え日常生活に戻る事になります」
「異世界から帰る方法は?」
「死ぬことです。異世界で死ぬと能力不足と判断され異世界から並行世界へ追放、つまり逆転送されます」
「死ぬって簡単に言うけど」
「油断してたら簡単に死にますよ?」
「...能力不足と判断すると言ったけど誰が判断するの?」
「異世界の管理者と言えば良いでしょうか?私もお会いしたことはありませんがそういう事になっています」
「そういう事って...」
「こっちの世界で言う死んだ人間をエンマ大王が天国へ行かせるか地獄へ行かせるか決めてるようなものです」
「はぁ...」
「田中さんの面接官としての役割は?」
「こちらの世界でいうサラリーマンみたいなものです。管理者から面接官としてここに常駐するよう指示され、面接者の選別、情報展開、能力確認、面接結果を報告し、管理者から承認を貰えば合格者の異世界への転送手配をします」
そして田中さんが真っ直ぐこちらを見て口を開いた
「勿論オファーしたからには特別待遇を考えています。本来なら平行世界へ帰るとスキル、記憶が無くなりますが●●さんが承諾してくれるなら1つだけ持ち帰れる条件にします!!」
―――好待遇でオファーされてしまったようだ、彼は何故そんなに高く評価してくれるんだ?
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