3-14. 夢の強さ

「まぁ、国王と言っても、権力を持つのは一時的じゃがな。体制が整ったら国権は議会に移譲される」

 レヴィアは淡々と説明する。

「レ、レオさんは何か特別な……方なのかね?」

 困惑しながら王様が聞く。

「ただの奴隷あがりの何もできない子供です」

 ニコッと笑ってレオは言った。

「奴隷あがり……」

「あ、でも、貧困と奴隷をこの世界からなくそうと誓ってるのは特別かも?」

 レオはちょっと首をかしげて言った。

「レオはね、自由の国を命がけで作るんだって。そんな子なかなかいないでしょ?」

 シアンがニコニコしながら言う。

「国づくりの発案者……ということ……か。しかし、国というのはそう簡単に作れる物じゃない。理想だけでは国は回らんぞ」

 王様はいぶかしげにレオを見る。

「理想を追わなければ理想は実現できませんよね?」

 レオはニッコリとして答えた。

 王様はレオの目をジッと見る……。

「……。そうか……。なるほど……」

 王様はそう言って目をつぶり、何度か大きくうなずいた。

 そして相好を崩すと、

「なるほど、レオさんは特別な方だな」

 そう言って少し羨ましそうにレオを見た。

 ちょっと恥ずかしそうにはにかむレオ。

「で、オディーヌ。お前はどうするんだ?」

 王様はオディーヌに振る。

「しばらくはアレグリスのお手伝いをしようかと……」

「王妃になるつもりは?」

 王様はニヤッと笑って言った。

「え!?」

 驚くオディーヌ。

 そしてレオと目を見合わせる……。

「まぁ、それは若い二人が自由に決めたらええじゃろ」

 レヴィアはニヤリと笑みを浮かべて言った。

 レオもオディーヌも真っ赤になって下を向く。

「分かった。それでは相互不可侵の安全保障条約を前提に移民計画を受け入れよう」

 王様は満面の笑みで言った。

「あ、ありがとうございます」

 レオは真っ赤になったまま頭を下げた。


 こうして、アレグリスはスラム街のそばの倉庫を一つ借り受けることになり、そこを拠点として移民受け入れ事業を進めることになった。


      ◇


 まだ朝もやが残る静謐せいひつな早朝――――。


「ねぇ、レオ、ちょっと見て!」

 タワマンの一室で寝てるレオをオディーヌが起こす。

「ん? どうしたの?」

 乗っかっていたシアンの腕をどけ、目をこすりながら起きるレオ。

「これよこれ! チラシができたわ」

 徹夜明けのハイテンションでオディーヌが紙を渡す。

 それは街の写真がふんだんに盛り込まれた、スタッフ募集のチラシだった。

「うわぁ! 綺麗だね!」

 レオは喜んで写真を一つずつ眺めていった。

「これをあちこちの掲示板に貼ったり、配ったりしてスタッフを集めましょ!」

「うんうん、いいね!」

 レオはうれしそうに言った。

「あれ……? これ、何のマーク?」

 あちこちに使われている、龍が火を吹いているような意匠のマークを指して言った。

「あ、これは国章ね。案として作ったの。どう?」

「国章!? カッコイイね! さすがオディーヌ!」

 レオは目をキラキラさせながらオディーヌを見上げた。


        ◇


 その日はみんなで手分けして、街のあちこちにチラシを貼ったり、置かせてもらっていった。

 チラシが無くなるころにはもう夕方だった。

「あー、お腹すいた~」

 レオがぐったりとしながら言う。

「ふふっ、お疲れ。じゃあ、零を呼んで歓迎会かねて食べに行くか!」

 シアンがニヤッと笑って言った。

「あれ? 零って大丈夫なの?」

「んー、暇してそうだから大丈夫じゃない?」

 シアンは宙を見つめながら言う。

 そして、何度か軽くうなずき、

「恵比寿の焼き肉屋になったよ」

 そう言ってニッコリと笑った。

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