第9話 Hello again ~昔からある場所~-9

 そんなことを 繰り返す

  もらわれて 返されて

  また もらわれて 返されて

  引き取られた先で 暴れ続けた

   こんな所は嫌だと

   まゆみに 会いたいと 叫んで


 やがて 覚えてしまった

  大人のやり口

 飼い主の機嫌を取って 餌をもらう犬のように

  いい子のふりをして お駄賃をもらう

 来る日に備えて

  きっと いつか まゆみに会える日を 夢見て

   金を貯めた

  一緒に暮らすために

  病気を治すために

 いくら必要なのか 知る由もなかった

 ただ お金が必要だった

  人から軽蔑されても 構わなかった

 まゆみのために お金が欲しかった


 いつからか

  人よりも大柄な体格になっていた自分を

  周りの見る目が変わっていることに 気づいた

 いままでは

  いじめようとする 連中ばかりだった

  もらわれっ子だと 施設出身だと

 そんな連中を間近で見下ろすと

  怯んだ表情を見せる

  何かが変わっていた

 それでも 弱いものを欲する餓鬼は

  徒党を組んで迫ってくる

 だけど 一度 叩きのめすと

  たったそれだけで

  世界は 一層 変わった

 媚を売るもの 敬遠するもの 避けるもの 取り入るもの

 自分は 変わった 変わっていた

  周りが 変えていった


  同世代の誰よりも 力が強かった

  誰よりも ケンカが強かった

  誰にも 負けない自信がついた


 行くときだ

  忘れられない 記憶

 行くときが来た

  失ってはならない 未来


 家を出た

 さまよう生活を選んだ

  忘れてはいけない 過去を 取り戻すために


 ただ まゆみを 求めていた

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