第22話 出発

「皆さん、色々とお世話になりました!」


そういうと、ルーリは村の人間に深々と頭を下げた。

事情を話してから一晩。

許可が貰えた事を山向うのエルフの里へと伝える為、彼女は早々に出発する。


「またいつでも遊びに来てください!」


足長不細工ピンク頭――改め、ライリーが力いっぱい手を振る。

その眼の端には心なしかキラキラ輝くものが……

こいつは昨日の歓迎でルーリにデレデレだったので、名残惜しくて仕方ないのだろう。


「たかしさん!間違っても変な気は起こさないでくださいよ!」


ライリーが此方を睨んで釘を刺してくる。

ルーリに同行する、俺への嫉妬だろう。


ざまぁ!と声を大にして言ってやりたいところだが。

武士の情けだ。

止めておいてやる。


エルフの村への帰還には、俺もルーリに同行する事に成っていた。

彼女達エルフが住む森で起きている、異変の調査を頼まれたからだ。

最初は断ったのだが、彼女に強く頼まれ嬉々――いや、渋々了承する事に。


まあ美人に強くお願いされたら断れないよな、うん。


因みに異変は森の木々が次々と枯れていくというもの。

異変は夏ごろから始まり、住んでいる森はもう半分程が消失しまっているそうだ。

彼女達の世界樹への移住はそんな事情からだった。


「大丈夫ですよ!不細工さん!この私が一緒に居るんですから!神様だって乱暴狼藉らんぼうろうぜきは早々働けません!」


そんなもん働きたくても働けねーよ。

何せないからな。

俺にはアレが。


まあ仮にご子息が健在だったとしても、ルーリに迫る度胸など俺には無い。

それが出来るなら、この歳まで童貞を後生大事に守る羽目にはなっていないだろう。


「誰が不細工だ!まあいい。兎に角頼んだぞチビ妖精!」


「まっかせなさーい!」


リピがライリーにウィンクしながら親指を立てる。

このアホさえいなければ、美人と楽しい2人旅だったというのに。

邪魔な事この上なしだ。


しかし、ライリーはいくら何でも入れ込み過ぎだな。

鏡を見た事が無いのだろうか?

普通、分不相応だと直ぐに気づきそうなものだが……


まさか、長い脚だけで何とかなるとか考えていないだろうな?


「っと、置いて行かれちまう」


気づくとルーリは随分先に行ってしまっていた。

どうやらライリー達とくだらないやり取りをし過ぎた様だ。


でも普通置いて行くか?


ぐだぐだしてたこっちも悪いとは思う。

だが頼みごとをした同行者をほっぽってさっさと行くとか、彼女いくら何でもマイペース過ぎだろう。


天然か?


「おにいちゃん!お土産楽しみにしてるよーー!!」


「わかってる、わかってる」


サラにはエルフの里から、木彫り細工を土産として持って帰って来る様頼まれていた。

エルフは手先が器用で、彼らの手掛ける細工は人気らしくなかなか手に入らない物らしい。

だから異変の調査の報酬として、俺はそれを貰って帰る予定だ。


「いってらっしゃーい!」


サラに手を振って、俺は駆け足でルーリの後を追う。

頭にはリピが張り付き、さも当たり前であるかの様に俺の魔力を啜っている。


お前は寄生虫か?


「おーい!まってくれー!」


俺は先を進むルーリと合流し、エルフ達の元へと向かう。

道中、なにかエッチなハプニングでも起きない物だろうかと期待しつつ。

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