TS異世界転生! 転生したら聖女様でした! 普通の聖女がやらない武芸に神聖な力が加わって天下無敵! 前代未聞の武闘派最強聖女爆誕!
一(はじめ)
第1話気が付いたら聖女様!?
「聖女様! 聖女様!」
そんな呼びかけに俺の意識はハッと引き戻された。なんだ。聖女様? 俺が? 冗談じゃない。俺は一介の高校生に過ぎないんだぞ。聖女なんてそんな訳が。
「聖女様! 目覚められましたか!」
俺に対して男は聖女と呼び、声をかけて来る。気が付けばここは馬車の中であるようだった。だから俺は聖女なんかじゃない……そう思って腕を上げようとして腕が前に引っ張られる感覚を味わい不思議がる。なんだ。腕の筋肉と繋がって胸に何か大きなものがぶら下がっている……?
そう思って胸を見ると、そこには豊かなものが二つ。俺の胸は膨らんで腕を引っ張っていた。な、な、な……。
「お、俺! 女の子、いや女の人になっている!?」
俺が驚愕の声を上げると男はポカンとした顔で俺を見る。
「聖女様が女性なのは当然ではないですか!」
「い、いや、俺が聖女なはずは……まさか!」
俺はハッとして、体を見下ろす。体を包むのは薄い白のレースのドレス。膨らんだ大きな胸二つもそこに包まれているが、なんだか前に引っ張られているような気分だ。その合間を縫って股間に手を突っ込んでみる。
「な! 聖女様! 何を!? はしたないですぞ!」
抗議の声にも構わず股間を確認する。ない。そこにぶら下がっているはずの竿も玉袋も綺麗さっぱりなくなっていた。
「俺、女になっている……」
呆然と呟く。そう思えば髪の毛も絹の糸のようにさらさらした金髪が腰まで垂れている。完全に女になっていると見て良かった。それにしても聖女? 俺が?
「俺が聖女なんて何かの間違いだろ?」
「聖女様! 俺などと……言葉遣いが乱暴ですぞ! それよりも早く馬車からお逃げください! 魔物の襲撃です!」
「ま、魔物の……」
俺は馬車から顔を覗かせ、外を見る。猿型の魔物の集団が馬車を包囲し、護衛の兵士を倒し、こちらに迫っている所だった。これはまずい。なんだか分からないが俺は聖女とやらになってしまったようでさらにここは俺の知っている現代日本ではなくファンタジーな世界のようだが、ここで魔物に倒されるのはまずいだろう。そう思ったのだが。
「武器は……剣はあるか?」
「な! 聖女様が武器を手に取るなど! そんな事!」
「そうしないとここで殺されちゃうだろ!」
そう言い、手近な所にあった鞘から剣を引き抜き、俺は馬車の外に出る。猿型の魔物が俺に襲い掛かって来る。いきり立ったその様子から俺は剣を振るう。
「聖女様!」
お付きの男の絶叫が響く。俺は剣を振るって……。
「グワア!」
猿型の魔物を一刀両断に斬り捨てた。なんだ。有り得ない切れ味だ。この剣はそんなに名剣なのか?
そう思って剣を見ると光の輝きを帯びているのが分かった。これは……なんだ? 訳が分からない。その間も他の猿型の魔物たちが俺に襲い掛かって来る。
「く、このお!」
俺は剣を振るい、猿型の魔物たちを斬り捨てていく。紙切れみたいにすっぱり切れた。剣の刃の周りを光り輝く何かが纏っている。
「おお、あれは!」
「聖女様の奇跡の力だ!」
護衛の兵士たちが揃って声を上げる。聖女の奇跡の力? それが使えるから、俺はこの魔物たちを楽勝で倒せているとでも言うのか?
なんだか分からないが剣を振るう度に大きな胸がブルンブルン揺れて気持ち悪いな。そう思いながらまた襲い掛かって来た一匹を剣で斬り捨てる。剣にはやはり光の輝きが帯びており、魔物たちを軽々と切り裂いてしまう。これが聖女に与えられた力だと言うのか?
「あれは間違いない。聖女様に与えられた神の加護の力だ!」
誰かがそんな事を言う。そうしている俺の剣には確かに光の輝きがある。これが聖女の力だとでも言うのだろうか。それにしても聖女が剣を持って戦うのに適した力を持っているなんて随分と物騒極まりないな、とも思うが。
「この!」
俺は迫り来る魔物に剣を振るう。やはり大きな胸が揺れる。薄いレースのドレスを着ているだけでブラや鎧などで固定していないから胸が一々揺れて面倒臭いのだ。それでも俺の振るった剣は魔物を切り裂き、倒す。
そうやっている内に魔物たちは全滅していた。護衛のはずの兵士たちは俺を眩しいものを見るかのように見る。
「おお、聖女様の奇跡の力だ……!」
「聖女様のお力だ!」
「流石は聖女様」
さっきから聖女、聖女、と俺はそんないいもんじゃない。ただの高校生に過ぎないというのに。しかし、この体は確かに聖女かどうかはともかく年頃の女性そのものだ。胸は大きく膨らみ、腰はくびれ、尻は大きく、股間には何もぶら下がっていない。髪の毛は絹の糸のような金髪が腰まで垂れ、女性としか言いようがない。
「聖女様! 全く、なんたる無茶を!」
俺に最初に呼び掛けて来た男が俺の前に現れて苦言を呈する。見れば神官といった格好をした男だった。
「俺……いや、私は聖女?」
「当たり前でしょう! 何を仰られるのか! 貴方様は聖クラレント王国の聖教会の聖女、クリスティア・フェルミナント・パーシス様に他ならないのですぞ!」
「クリスティア・フェル……」
長い名前だ、と思った。それはさておき俺はどうやら聖女とやらになってしまったらしい。転生というヤツだろうか? 元は男だったはずなので体そのものがなんだか恥ずかしい。ともあれ、振るっていた剣を鞘に戻す。
「聖女様自らが剣を手に戦うなどと……」
「でも、私が剣を振るうと不思議な力が私に味方してくれたみたいなの」
それは俺が剣を振るっている最中、常に実感していた事だ。本来ならこんな女の細腕で軽々と剣を振るう事すら出来ないはずだ。それが出来るどころか剣に何か加護のようなものが与えられ、魔物たちを易々と切り裂く事が出来た。これは聖女に与えられた神の御加護というヤツなのだろうか。不思議に思う。
「確かに聖女様には主神の加護が与えられているのかもしれませんが……」
神官は言葉を濁す。それにしたって聖女自らが戦うなど言語道断という思いがあるのだろう。しかし、護衛の兵士たちの反応は違った。
「聖女様のお力があれば魔物なんて敵じゃねえ!」
「聖女様の力だ!」
兵士たちは俺の力を歓迎している様子であった。俺が外に出て戦わなければ魔物たちに殺されていたかもしれないのだからそれも無理はない話だと言えるが。
神官は不機嫌そうにそんな兵士たちを見渡すと俺の方を向いた。
「ともかく! もうすぐ聖クラレント王国の王都ブラーサーです! 王都に着いたら諸国巡礼の旅の報告も兼ねて国王陛下たち王族の方たちにお会いしていただきますからな」
「え~……」
国王たち王族の人たちと会うとか堅苦しいイメージしかないぞ。しかも俺は体は聖女かもしれないが、中身は現代高校生の男子だ。マナーの類なんて何も知らないんだぞ。そうは思ったが聖女になってしまった以上、それは避けられない事なのかもしれない。渋々馬車に戻り、御者が馬車を動かし、王都ブラーサーに向って走る。
それにしても本当に聖女になってしまったらしいな、俺は。腕を動かすたびに筋肉が大きく膨らんだ胸に引っ張られてやり難い事この上ない。この聖女様は随分とけしからん肉体をしているな。そう思いながら、馬車の中でもう一度、鞘から剣を抜いてみる。するとただの鋼の刀身に光の輝きが宿り、聖女の加護というヤツか、光の刃と化す。これがあれば魔物たちなんて敵ではないだろう。そう思うが俺が戦う事が果たして許される事なのか。それは分からなかった。
(でも、今の俺には魔物を退治する力があるんだよな……)
それを思う。並の兵士以上の力を持っている事は間違いなかった。今でこそ兵士たちに馬車を護衛してもらっているが、俺が直接戦った方が強いのは先ほどの戦いで実証済みだ。この力を腐らせておくのはそれこそ勿体ない気もする。そんな俺の思いを抱きつつ、馬車は聖クラレント王国王都ブラーサーに到着するのであった。
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