拾ったのは魔王の娘でした。
フェノン♬
第1話 魔王の娘、人の世に降り立つ
「はぁ…今日も疲れたなぁ…」
帰宅途中の僕は、溜息を吐きながら呟いた。
ブラック企業に勤めて数ヶ月。
前の休みっていつだっけか…?
そんなことを考えながら歩く。でも、少なくとも明日は休みだ。映画でも見に行こうかと貴重な休日の予定を練ろうとしたところ…。
「わぁぁぁぁぁぁ!!!!」
上空から声が聞こえる。何事かと思うと、1人の女の子が空から落ちて来ていた。
「おぁぁぁぁぁ!?」
驚きながらも、持っていた鞄を投げ出し、何とか受け止める。その際少し腰からバキッと音が鳴った気がするが気にしないでおく。
「はぁ…はぁ…なんなんだ一体…」
「あの…降ろしてくれない?」
自然とお姫様抱っこの体勢になっていたことに気付き、慌てて女の子を降ろす。
そしてその女の子を見ると…髪のと目の色がピンクだった。いや、たしかにそれだけなら髪を染めたとかカラコンだとか言い訳できるかもしれない。
でも…その額からは、黒い角が2本、生えていた。
「えーと、聞きたいことは沢山あるけど…まず、君は誰だい?」
「私?私はね、エミル・クリスタよ?それで、ここはどこ?」
「ここかい?ここは日本だけど…。」
「やった!無事家出成功!」
「家出…?それで君は一体、何者…?」
「そんなことどうでも良いわ!後、一つお願いがあるのだけれど…。今夜一晩、泊めてくれない?」
知らない女の子の頼みを聞き入れるのもどうかとは思ったが、今日はもう夜も遅く、このくらいの歳の女の子を放置するわけにもいかなかったので、渋々応じることにした。
そして僕が部屋を借りてるアパートへ着く。玄関の鍵を開け、中にエミルを入れた。テーブルを挟んで椅子に座らせる。
「えーと、それで…君は一体どこから来たんだ?」
「…魔界。」
「え?」
「魔界では私のお父さんが魔王として世界を支配してて…私はその後継者として、教育を受けてたんだけど…。」
「うんうん。」
「嫌になって、魔法を使って魔界から抜け出してこっちの世界に家出して来たの。」
「えーと、まぁ、、君は魔王の娘で、教育が嫌で家出して来た…そういう事?」
エミルは小さく頷いた。
こんな信じられない話は無い。でも現にそう言うことなら、彼女の角についても納得が行く。だから僕は信じるしかなかった。
「行く宛はあるのかい?」
そう聞くとエミルは首を横に振った。
「そっか…なら、僕の家で暮らさないかい?」
「良いの?」
「勿論。あ、でも少し良いかい?」
「なぁに?」
「その、ピンクの髪とその角は、、他人から見えないように出来ないのかい?」
「んーと、髪を黒に、角を無いように他人に見せることはできるよ。」
「じゃ、僕と2人きりの時は今のままで良いけど、他の人がいる時はさっき言った通りにね。」
「はーい!あ、、そういえば、貴方の名前は?」
「西宮 恵助っていうんだ。よろしくね。」
「うん!よろしく!」
こうして、僕は魔王の娘と同居することになった。
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