昔の夢③
× × ×
――夢。
「やめ……ろ……ッ!!」
浮き上がった瞬間に折れた腕に強く力を込めて、その男を突き飛ばした。すると、そいつはフルチンのまま雑木林の向こうまで吹っ飛んで、不気味な悲鳴を上げた。
「ゲゴ……っ!!」
その後のことは、正直なトコロあまり覚えていないんだ。ただ、泣きながらそいつに馬乗りになって、何度も何度も、何度も何度も何度も何度も、顔面をぶん殴っていたんだと思う。
「○○君っ!!」
俺、この時に自分がなんて呼ばれてたのか、それも覚えていない。まぁ、俺を捨てた親が付けた名前だろうし、別にどうだっていいんだけどさ。忘れた理由は。……なんだろ、それも忘れちまった。
呼ばれたときに、俺はようやく息を吸い込んだ。それで、俺の下に転がっていたのは、もう形の残っていないそいつの顔面。血塗れで、俺の手もベットリと濡れていて。息は、してたと思う。「コヒュー」って、漏れるような音が聞こえていたから。
それを聞いて、また泣き喚いて。しばらくしてから、体中の痛みで気を失ったんだ。
……鷽月園の園長は、俺が変異人類である事を知らなかったんだと思う。だって、その日を境に俺を隔離して、同じ施設の子供と遊ばせることをさせなかったから。
それから数日で、鷽月園は潰れた。……いや、あれは多分、俺から逃げたんだ。最後の日、園長は俺を門の外に残して、別の子供を乗せたバスでどこかへ行ったから、そう思ってる。
それくらい、変異人類は普通の人間に嫌われてる。でも、それって当たり前だ。いつ爆発するか分からない爆弾を抱えているようなもんだし。通報すれば、逆恨みされるかもしれねぇしさ。
ただ、ガキ過ぎた俺はどうすればいいか分からなくて、本当に辛くて。それなのに、一人で生きていかなきゃいけない事だけは理解して。
だから、東京を目指して歩いた。きっと、そこなら食べられるモノがあるって、そう思ったから。
……それにしても、一人で生きていかなきゃならなくなった俺の技能が、効果の全てを相手に依存するモノなんてさ。
ホント、笑えるだろ?
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