第22話 不思議な耳掃除のおはなし

僕の彼女は厳しい人だ。

自分の適性体重をキープしているし、間食にも気をつかってポテトチップなんて食べない。

残業も仕方ない時は部下にも頼むが、絶対に部下以上にしている。

そんな彼女は耳掃除にも厳しい。

耳掃除のやりすぎるとに耳の中に傷ができたり、綿棒で耳垢や汚れが奥に押し込んでしまう。

だから我が家では耳掃除は二週間に一度、1日と15日と厳しく、例外なく決まっている。

決まっているのだが今日の彼女はおかしい。

おととい耳掃除したばかりだというのに

『耳掃除してあげる』、などと言ってきた。

おとといしたよ、と返しても、『たまにはね。耳、痒いでしょ』と言う。

確かに耳は痒い。だが素直に誘いに乗ってよいものだろうか。

私が決断を下すまでの数秒、色々なことを考えた。しかし、耳が痒い私が言えたのは、お願いします。この一言だけである。

 早速彼女の膝枕で耳掃除をしてもらう。

いつもどおり、耳掻きでゆっくりと掻いてくれる。

おととい耳掃除をしたのでゴミは取れないが痒いところを掻いてくれ、たいへん気持ちいい。そんな時、『今日は特別だよ』

その言葉と共に耳に挿入されたこれは、綿棒か。

綿棒は汚れを奥に押し込むからと使わないのだが。今日は耳掃除といい綿棒といいいったいどうしたのだろうか。

 そんなことを考えつつも僕は久しぶりの綿棒の感触に心奪われていった。小さい頃は両親から耳掻きは危ないと言われ、耳掃除は綿棒でしていた。

そのころを思い出し、懐かしい気持ちになった。


そして綿棒が抜かれた。特別な時間は過ぎるのが早い。いやまだもう片方の耳がある。そう思い態勢を変えようとしたら、『まだだよ』

そういって何か細いものが耳の中にに入って、さらに奥深く、鼓膜の手前まできた。耳かきではない。しかし似ている。なんだこれ。僕の思いを察したのか彼女は『これ?つまようじだよ。気持ちいい?』

ゆっくりそういった。

 絶対におかしい。おととい耳掃除したのに今日もしてくれることといい、普段は使わない綿棒を使う。きわめつけは絶対に危険であろうつまようじで耳掃除することだ。一つ目と二つ目はまだしも三つ目は絶対にしない。

なあ、ちょっと…、といおうとしたら、『危ないよ』といわれた。この一言で私の体は動かなくなり、耳の中のつまようじの感触を強く感じるようになった。怪しく思う気持ちはつまようじで鼓膜を刺激する快感に押し流されていく。今まで受けたことのない快感に包まれて僕は眠りに落ちた。


「ただいまー」

「おかえりー。お茶会は楽しかった?」

「うーん。あんまり楽しめなかった。今日来た人たちって、みんなすごい人ばかりだから気疲れしちゃった。その後もおばさんたちに捕まって喫茶店でずーとおしゃべりのお供にされちゃった。」

「お疲れ様。お風呂はもう沸いてるよ。それとも先にご飯にする?今日のメニューはシチューとサラダを作ってあるよ。パンにする?白ご飯にする?」

「え、すごい。今日は気が利くね。いつもはこんなことしないのに」

「はは。たまには俺だってやるんだよ」

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