闇
「
「うわあああああああああああ!!!」
湖の中から人魚の姿をした生物が引っ張り出された。
どうやら悪魔の本体は、不幸にも水中にいたため、捕まる物がなかったようだ。
「無駄な抵抗はよせ、一緒に逝こうぜ。
リードが放った、無数の闇でできた銃弾は悪魔の身体に着弾すると同時に、その身体に食らいつき、身体を蝕んでいった。
「くそがあああぁぁぁ・・・」
抵抗する気力も体力も無くなったのか、悪魔はそのままブラックホールに飲み込まれていった。
「これで、俺も終わりか・・・まったく、クソみたいな人生の割には、錦を飾れたか・・」
リードは静かに目を瞑り、抵抗することを辞めた。ゆっくりとブラックホールの中心部に吸い寄せられていった。
「そーれっ!!!」
気の抜ける声に目を開くと、キールの腕が伸び、リードの身体に纏わり付いた。
「大丈夫かー?今引き寄せるからなー」
そう言うと、キールの腕はどんどん縮んでいき、遂に、地面までリードを引き戻し、木の幹に掴まらせた。
「まだ、俺の命も終わりじゃないみたいだな・・・ありがとう」
リードは少し笑った。
「そういえば、聞きたいことがたくさんあるんだが・・・・」
「うん、何かな?」
それからキールはリードに聞かれた、別れてからのことを話し出した。
トイレに行って戻ろうとしても、全然たどり着けなくなっていた。そしてしばらくすると、社員達が勢揃いして、目の前に現れた。何故か攻撃してきたので、必死になって避けていた。
なんとか、近接技は効かないので、魔法を全力で避けていると、突如、全員が姿を消した。
そして、空に大きな黒い物体が浮かんでいるのを見て、近づいてみると、リードが吸い込まれそうになっているのを見つけ、助けた。
「他に聞きたいことはある?」
キールは、これまでの経緯を話しおえると、リードに聞き返した。
「ああ、なんで腕が伸びるのかと、なぜお前は吸い込まれなかったのか、不思議で仕方ないんだが」
リードは、変な生き物を見るように、キールを見つめながら尋ねた。
「あー、腕はね、プルルンと身体を共有してるんだ」
キールは、そういえば言ってなかったと前置きし、リードに説明した。
「プルルン?」
聞き覚えのある言葉に、一瞬何だったかと考えた。
「うん、俺のペットのスライムだよ。ほら」
そう言うと、キールは自身の手から、プルルンを出現させた。
「そんなこと・・ありかよ・・ハハ」
プルルンというペットを飼っているという噂を聞いたことがあったが、身体の中に飼っているなどは聞いておらず、思わずリードは笑ってしまった。
「あと、吸い込まれなかったのは、分からないな」
キールは真面目な顔で答えた。
「いよいよ謎だな。びっくり人間もいい加減にしてほしいものだ。お前ほどなら魔力だって俺ぐらいはあるだろうに」
リードは、諦めたようにため息をつき、落ちている釣り竿を拾い、キールに渡した。
「え?どうしたの?」
いきなり釣り竿を渡されたキールは、何をして欲しいのか分からなかった。
「釣り竿はしばらく見たくないな、腹が減ったから飯にしよう」
リードはお腹をさすりながら、笑った。
「お、見えてきた!帝都ガレアスだ、懐かしいなぁ」
キール達は、それからは無事に目的地へ到着した。
検問を終え、帝都へと足を踏み入れ、大通りをまっすぐ進み、20分ほどたつと、遠くからでも見えていた、そびえ立つ都庁の中に入っていった。
「では、これで受け取り完了ですね。ありがとうございます」
帝都の都庁にある外交課の窓口にて、無事依頼品を渡した。
「いやー、まさか間に合うとはね。ありがとね」
キールは、久しぶりの自身での依頼の達成に喜んだ。
「ああ、構わない。俺も楽しかった・・・そうだ、結局『裏道』のことは誰から聞いたんだ?」
リードは、思い出したようにキールに尋ねた。
「ん」
キールはリードを指さした。
「???何を言っているんだ、冗談はよせ。初めて会ったときから『裏道』について知っていたじゃないか」
「知らなかったよ?リードが作戦あるっぽかったから」
キールは何を言ってるんだと、首をかしげた。
「・・・・・・・!?・・・くそ、カマをかけられたか」
リードは、出会ったときのことを思い出し、キールが一言も『裏道』とは言ってないことに気づいた。
「まぁいい、これからはどうするんだ?」
リードがキールに尋ねた。
「そうだね、しばらく観光してから戻るとするよ」
キールは、帝国の特産品を指を折りながら数えだした。
「そうか、では、ここらでお別れだな」
リードは、少し悲しそうな、達成感を秘めた目で、キールを見つめ、笑みをこぼした。
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