3ー6ー3 知恵比べがしたいお年頃
― 小洗の独壇場かと思われた班決めは、樋口という男子生徒の提案により、一気にその様相を変えた。新たな宣戦へ腹を括った小洗がまず頼るのは…。さて、勝つのは、姫をいただくのは、どちらの勢力か!
坂上 優の場合
いいところでチャイムが鳴ってしまった。薫先生にこの後のことを聞くと、別に今日じゃなくてもいいんだけど、と言いながらも、今日中に決めてほしい感じを全面に出していたため、班決めはとりあえず帰宅の準備を終えてから、その後残った時間で手際よく行うことになった。
「ちょっと、優―!」
小洗が小声で、ちょっとこっちにこい、というように声をかけてくる。なんだか碌なことが無い気はしたが、ずっと前に立っているのも嫌なので、俺はそれに応じることにした。
「優さあ、お前頭回るよな。これからの班決め、友達の好でちょっと知恵貸してくれないか?」
手を合わせながらそう願ってくる小洗。なにを言っているんだ、こいつは。
「知恵って…、そんなの使う場面あるか?」
疑問を浮かべる俺に、小洗は、この班決めの時間に水面下で起こっていた彼らの戦いについて、語り始めた。
俺は思った。こいつらは、本当に救いようのない馬鹿だと。
「どうでもいい戦いに俺を巻き込むな。」
「そんなこと言うなって。お前だって、早見さん、いや青波さんとかと組みたいだろ?」
青波さんか。確かに昨日の一件があった割には、今日も俺と話すときはずっと下を向いてるし、同じ班になって、純粋に仲良くなりたいという気持ちはある。それに、早見がやばいっていう人がどれほどの人物か、それも見てみたくはある。
「まあ、程々には。」
「だろだろ、さっきの樋口の案、あれに無抵抗で突っ込めば、必ず早見さんたちグループは他の男子に取られる。それをお前の知恵と勇気でなんとしてでも阻止してくれ。そうすれば俺たちは、輝かしい未来を掴める…!」
本当に、一々大袈裟なやつだ。
「つまり俺は、樋口君の手の内を読んで、それをお前に伝えればいいんだな?」
小洗が俺にお願いした内容は、つまるところそういうことだった。
「そうそう。もちろん俺も、できる限りの知恵は絞ってるけど、もし何か気が付いたことがあったら、なんとか俺に伝えてくれ。」
小洗の提案に乗るのは、それはそれで癪に障るものがあるが、俺自身昨日の一件で関わったメンバーとはもう少し仲を深めたいし、どうせなら班員が知り合いである方が課外学習も充実したものになるだろう。それに俺は、表向きには無関心を装いながらも、こういった知恵比べにはどうにも首を突っ込みたくなる性分だ。昨日の一件で、それは高校生になった今でも変わっていないことに気がついた。
「わかった、アホだと思いながら付き合ってやるよ。」
俺がそう言うと、それでこそ我が友だ、なんて調子のいいことを言いながら、小洗は笑顔で頷いた。
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