第14話 カーネルとの絆

「もうすぐ目的の学院よ」


時刻は昼を過ぎている。

申し込みは午後からしか受け付けていないので、昼までは適当に時間を潰していた。


(やっぱカーネルの様子がおかしいよな……)


彼女のルイスに対する態度が別人のように変わったのである。

今までのどこか他人行儀な態度は幼馴染のような馴れ馴れしい態度へと変貌した。

今も彼女はルイスの袖を握って歩いている。


やがて目的の場所が姿を現す。

まず目に入るのは校門へと続く桜の並木道。

まだ満開ではないものの、見るものを圧倒する景色であった。

微風が枝を揺らし、カーネルの長髪を靡かせる。


暫く並木道を進むと校門の先にあるグラウンドで、申し込みが行われているのが確認できた。

流石に恥ずかしくなったそうで、彼女は握っていた手をソッと離した。


「じゃあいくか」

「えぇ」


申し込みは、身分証代わりの冒険者カードを見せることでスムーズに進んだ。

後ろに並んでいる人たちを見ると、様々な武器、服装をしていることが分かる。

この学園は授能の系統関係なしで、とにかく実力主義。

申し込み途中に教えてもらったが、この学院の試験は少し特殊で、筆記試験がないようだ。

教養があまりないルイスにとっては、大変ありがたい。




そして今は自室にいる。

あれから自由行動となったルイスは、魔術教本を借りるために図書館へ向かった。

しかし、高価である魔術教本は一般の図書館には置いておらず、様々な本屋を回り、とある古本屋にてようやく見つけることができた。

中古とはいえどかなり値が張るものだった。

だがルイスたちが受験するのは、この国随一の学舎である。

魔術のバリエーションを少しでも増やし、柔軟な戦いを行うべきだろう。

それにルイスは今お金には困っていない。

何冊か購入して、宿に戻ったルイスである。




それからは、試験日までひたすらに魔術を極めた。

剣の腕というものはたった数日で上達するものでない。

一応毎日素振りは怠らなかったが、時間の多くを魔術に充てていた。




時間が経つのは早いものだ。

明日に入学試験を控えていて、今は夕食を食べ終えた後。

ルイスは自室にてここ最近習得した魔術の復習をしていた。

──と、ここでドアが叩かれた。

ドアを開くと、そこにはカーネルの姿。


「どうした?」

「ひ、久しぶりにお話でもどうかと思ったのよ」


オレンジ色の長髪少女は、プイッと顔を逸らしながらそう言った。

そういえばここ最近カーネルとはあまり接点がなかった。

ルイスの場合は食事以外基本部屋から出ておらず、食事にしてもカーネルと時間が合わないことが多かった。

ルイスは特に気にすることなく、彼女を迎え入れた。

その後他愛もない会話をし、久しぶりに気持ちが楽になったところで。

カーネルはこちらの瞳を見つめて、若干躊躇った後、手を差し出した。


「明日、二人で必ず合格しましょう」


彼女とは出会ってからまだ数ヶ月しか経っていない。

だが、たった数ヶ月で育んだ関係はまるで時間とは無縁なものであり。

二人の間には、確かな信頼や友好が築かれていた。

ルイスはカーネルに精一杯の返答をする。


「あぁ! 絶対な!」


差し出された手を取り、ギュッと握る。

彼女の手はほっそりとした滑らかなものだった。

しかし、そこには血の滲むような努力が刻まれている。


彼女との絆を実感でき、明日の試験に向け改めて気合を入れるルイスであった。

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