第13話 彼女のアタック開始
「いらっしゃい」
声から考えるに年配の女性らしき人が店の奥から声をかけてくれた。
その人は怪しげなローブを纏っていて、具体的な容姿が見えない。
反射的に剣の柄に手を添えてしまった。
「そんなに警戒せんでおくれ。わしはこの店の店主じゃよ」
そう言いながらローブのフードを取ると、中から元気そうなおばちゃんの顔が覗いた。
警戒を解いて安心する二人。
「このお店はどんなものを取り扱っているのかしら?」
カーネルの質問に「うーん……」と頭を少し悩ませたおばちゃん。
「雑貨屋みたいなもんじゃな」
「なるほど」
ルイスは主に小道具コーナーを見ている。
カーネルは何やらおばちゃんと相談しているようだ。
「お嬢ちゃん、彼のことが好きなんじゃろ」
突然耳元で囁かれてビクリと体を震わすオレンジ色の長髪美少女。
「べ、べ別に、好きなんかじゃない……のよ」
慌てて答える彼女の顔は、リンゴのように赤くなっていた。
一応ルイスを見てみるが、バレている様子はなさそうだった。
「この液体を飲ませれば一瞬じゃよ」
おばちゃんは商品を一つ手に取って彼女の手に渡す。
「え? こんなのいいです──」
「──
そう言うとおばちゃんは少年の方に行った。
「これって魔道具か?」
「そうじゃよ。これはねぇ、──」
それからこの店で買い物をした後、料理店で昼食を摂り、その他の買い物も済ませた。
それだけでもう日が暮れてきたので、試験の申し込みは明日に回すことになった。
宿に戻った後、昨日同様晩御飯まで各自待機となったのだが。
「好き……なのかしら」
一人、自分以外誰もいない部屋の中ポツリと呟いた。
実は先の一件以降胸の高鳴りが止まらない彼女である。
確かに好き、かもしれない。
私は両親についてなにも覚えていない。
産まれてすぐ捨てられたそうだ。
そんな私を大切にしてくれた人がいた。
私を拾って育ててくれた今の父と母だ。
勿論父と母には感謝もしているし、家族として大好きだった。
でも、本当の両親ではないと知った時、私はまるで彼らが他人のように見えてしまったのだ。
態度には出ないようにしていたが、その気持ち悪さはずっと私の心を蝕み続けた。
そして、そんな私は自分の授能を知った時に冒険者になることを決めた。
三年間冒険者として頑張ってきた私は、ある日一人の少年と出会った。
名をルイスという。当時Bランクの私とは土俵が違う、Eランク冒険者だった。
ある時、ルイスが両親を失っていると聞いた時、少し気持ちが楽になったのを覚えている。
私よりも辛い状態だとだというのに、めげずに過ごしている。
私は──そんな彼に憧憬と恋心を抱いているのだろう。
「だから。私はこんなモノに頼らずに、彼を落として見せるわ」
そして、彼女は手に握りしめたそれをゴミ捨て場に投げ入れたのだった。
「──な、なぁ。お前、なんかあったか?」
「別に。いつも通りよ」
それは──食堂で晩御飯を食べる時間。
彼女はこれまで通りの彼の対面ではなく。
彼の隣で、肩と肩がぶつかるぐらいの距離に座っていた。
──それから、彼女の
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