第8話 再戦

それからの彼らの活躍ぶりは凄まじいものだった。

来る日も来る日も高ランククエストを消化し続けたルイスとカーネル。

Bランクであったカーネルはここら辺では数人しかいないというAランクにまで上り詰めた。

だが、ルイスに限ってはもはや規格外というほかあるまい。

なんとたった二ヶ月でBランク冒険者にまでなってしまったのだ。

これは世界でも最速の記録である。

ルイスのことを無能だと蔑んでいた奴らがそれを知った時の顔は今でもよく覚えている。




そして今、彼らはとあるダンジョンへと向かっている。

それは──己の無力さを思い知らされた場所。

同時に、強くなることを決意する原因となった場所だ。

そんなトフィアダンジョンに行くのは二ヶ月ぶりだ。

あれからは主に別のダンジョンや、魔物が発生する森などでクエストをこなしていった。

──そういえば、重要な知らせが一件あった。

ルイスの授能【ステージ2】が、【ステージ3】へと進化した。

その結果、【ステージ2】の能力に加えて【絶対防御】という能力が加わった。

だが、【絶対防御】なんて授能は聞いたことがない。

そもそもこの授能について知らないことが多すぎるのだ。


「そういえば私たちまだ互いの授能も確認していなかったわね」

「言われてみればそうだな。知りたいか?」


トフィアダンジョンへの道中、馬車に揺られながら会話する二人。


「えぇ、そうね。じゃあまず私から。私の授能は【不撓フトウの剣聖】よ」

「フトウの剣聖? それって普通の剣聖となにか違うのか?」


聞き慣れない単語にルイスが首を傾げた。

カーネルはそれに対して首を縦に振った。


「詳しいことは分からないけれど、どうやら普通の剣聖の下位互換のようなものらしいわ。

 成長速度が遅いせいで冒険者を初めて三年たった今でもAランク止まりなの」


因みに【剣聖】を授かった子供は、幼い頃から規格外の力を宿しているそうだ。

その点を考えると、確かに成長速度が遅いと言えるか。


「まぁでも、そのうち真の力とかでてくるんじゃないの?」

「そう信じたいわね。ルイスの授能はなにかしら?」


最近の彼らは、名前で呼び合うほどの仲にはなっている。

ルイスとしては当然カーネルのことを信用しているし、どのみち言おうと思っていたことなので、正直に伝えることにした。


「俺の授能は【ステージ3】ってやつなんだ。生まれた時は【ステージ1】で、実は初めて君と出会った日に【ステージ2】になって、ついこの前また上がった。効果は──」


それから、俺の授能の詳細を事細かに伝えた。

彼女は段々と呆れたような顔をして、最後にため息を一つついた。


「つまり──それってチートじゃない」

「あぁ、確かにそうだな」


この授能の強さは前々から気付いていたが、改めて他人に断言されると少し恐ろしい気持ちになる。





ルイスたちはダンジョンの中を歩いていた。

ルイスには【絶対防御】という三回までならどんな攻撃でも防ぐことが可能な不可視のバリアを常に纏うことができる能力があるため、今度はルイスが前衛になっている。

近接戦では彼女の方が得意なので、俺が遠方から魔法を放ち、彼女がその隙に相手の懐まで入るという戦法になっている。


すると、まるで前回を再現しているかのようにダンジョンが大きく揺れ始めた。

ルイスとカーネルは互いに向き合い、頷き合って確認した。


「運が良いと言うべきか、悪いと言うべきか」

「でも私たちはもう負けないわ」

「あぁ、そうだな!」


美しい咆哮が響いた。

そちらに目を向けると、風を纏うユニコーンの姿。


「じゃあ、始めるわよ!」


カーネルが掛け声と共に力強く地面を蹴った。

その速度は、通常の剣聖には劣るが十分速い。


カーネルが距離を詰める間に、ルイスは隙を作るために魔術を放つ。


龍の雷豪ドラゴン・ライトニング!」


少し前に買った三十センチほどの杖を突き出しながら、詠唱した。

刹那、杖の先から放たれる一条の稲妻が龍の如く動き回り、ユニコーンに衝突した。

悲鳴を上げるユニコーン。

痺れによる硬直を、カーネルは見逃さずに。


「クリューツ式剣術──殲滅のツルギ!」


彼女の長剣がオレンジ色の光を帯びる。

それを背後から横に一閃。

ユニコーンの体液が飛び散る。


しかしそこでユニコーンの硬直が解け、彼女は後ろ蹴りを喰らった。


「ウッ!」


彼女は吹き飛ばされ、後ろの壁に衝突した。

満身創痍の状態でも、彼女は立ち上がる。

だが、ここからはルイスの出番だ。


「少し休んでろ。ここからは俺に任せてくれ」

「えぇ、そうさせてもらうわ……」


彼女は掠れた声で返事をし、壁にもたれかかった。

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