壱 人食いの国


2015.4.9


「この国の神様が怒っているのう」

神託を受けた老人が、ぼんやりした目で空を見つめている。

空は赤く染まり、紫色とマーブル状に合わさって不気味なものになっている。

「総統閣下、どうしましょう。この国の人口は年々減少、女子子供も失っています。もうこの国には男しかいません。ましてや、能力の備わった人はもう殆ど。総統閣下とその娘、くらら様だけになってしまいました。しかし二人を神様を捧げる事はできません、この帝国の憲法はそんなことをしてはならない」

部下がそう話す。

「大変です閣下!」

「どうしたのだ」

「この蟹場帝国に………12月に修学旅行集団が日本から…!!!!」

「なにっ、それは…まさか…」

「秋田県の有能力者の中学、羽々炭中学です………」

門番が執務室の扉を開けてこの国の総統、蟹場統郷に話しかける。

それに驚く統郷の娘、くらら。

(…まあ!お友達になれるかしら…!)

「なるほど。有能力者、というのはこの世界の選民でしたね。…それでいて、どの様な人が来るのですか」

くららは内心思った事を隠しながら、門番に質問する。

「…それが、羽々炭中学校は有能力者しかいない、成績優秀な人間は能力を使って仕事したり人を助けたりするようです」

「どうします、お父様」

くららは冷静な口調で統郷に話しかける。

統郷の姿は見えない。総統の立場である統郷の姿はくららですらよくわからない。

「招待状を送れ…………」

統郷はそう答えた。


•••


この世界には有能力者、と無能力者がいる。無能力者は完全なる一般人で、有能力者はどうやら特殊な物質を血液の中に流し込んでいると言う情報がある。

有能力者は多くいる。強化系、浮遊系、体の構造を作り替える、相手に攻撃する。様々な能力を持つ人間達が有能力者。彼らは無能力者を助けたりする一方、無能力者に奇異な目で見られることもあるらしい。それは国によって様々だが日本の秋田。田舎なら奇異な目で見られることは流石に多い…のは偏見だろう。

だがこの国、蟹場帝国ではある言い伝えがある。

それは有能力者を神に捧げると、国が繁栄するというもの。繁栄するだけではない。国は守られ、軍は強くなり、様々な事柄が良くなると言う願掛けがあるのだ。


だからこそ、有能力者の生徒がこの国で遊ぶとなれば楽しみな事は多い。何故なら神に捧げると蟹場帝国は繁栄するからだ。

だが統郷には一つ不安があった。神は好き嫌いが多く、強い者しか貰えないと嬉しくないらしい。

だから統郷はくららを追いやり、部下と相談を始めたのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

よいこのころし @MitsukuniGanash

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ