羨望

@mw_0406

羨望

生まれついた時から人の目線がカビのように身体に染み付いて離れなかった。誰かの目に映る自分が化け物なのではないかと怯え苦しむ毎日であった。できるだけ露出を減らし地面とお見合いをし作り笑顔で歩いても焦燥感はどうにも拭えない。鏡に映る自分の顔は川のヘドロと相違ない液体に見えるし腕の蕁麻疹は刺青のように洗っても取れてはくれず、足は獣のように醜く見えた。毎日自分を卑下しては何故生きているかと自問自答するばかり。勿論性格は見た目同様醜悪に歪み人の不幸せを願うような最下層の人間に成れ果てていた。それでもそんな自分を愛してくれると言う殿方に1度出会ったことがある。しかし此方を覗き込む彼の目に映る時分があまりにも鄙劣で。その場で吐露してしまいそれ以来彼からは連絡は来なかった。何時の間にかその噂は大学内に広まり自らは進んで道化師となった。嘲笑の目線を向けられながら踊り狂う日々。悲劇である。あゝトラジェリー!だが人々の目には道化師が慌てふためいているだけの喜劇に相違ない。所詮私は人々に道化を提供することしか出来ぬ愚かな人間であった。私が人を信じてしまったばかりに。もう自分が何者であったかさえも思い出せない。目を塞ぎ逃げてしまったから。それでも舞台からおりることは許されない。ハッピーエンドなんて最初から用意されてなかったのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

羨望 @mw_0406

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る