03 β
完全に支配されてしまった状態というのは、こういうものなんだと、彼女を見て思う。
聞き出すのに苦労した。結局正攻法で、しぬほど酒を浴びさせてべろべろになった彼女が、ぽつぽつと語りはじめる。
名家の出だった。それも、相当の。
いつか誰かが来て、そこに嫁ぐ。それで人生が終わる。鴨が鍋になるとかわけの分からないことを言っているが、おそらく結婚相手を探す必要がないから楽なのだという意味だろう。
じゃあ、なぜ泣くのか。口に出しかけたが、やめた。彼女は、泣いていることにすら気付いていない。彼女は、幸せを誤解して、そうやって日々を耐えてきた。だから、その状態を壊してしまえば、彼女は幸せではなくなる。
「じゃあ、なぜ俺と一緒にいてくれるんだ?」
こう言うことしか、できなかった。唯一の、細い、赤い糸。自分の存在を、彼女はどう思っているのだろう。
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