第23話
今日から二年生だ。
玲明の初等部は、三年と五年に進級する際にクラス替えとなるので、また一年と同じクラスメイトたちと学ぶことになる。
やっと少しずつ仲良くなってきたので、このままもっと友達をたくさん作りたいところだ。
さて、忘れてはならない。今日は、始業式と同時に入学式もある。
つまり、裏ボスである真冬が今年から玲明に入学してくるのだ。
俺が生存して平穏に暮らすための最大の障壁にして、将来的にこの学校を裏で牛耳る可能性の詰まった裏ボスである。
初等部では、真冬とどれだけ関係性を築けるかが勝負だ。それがうまくいかなければ、中等部も高等部も平穏な学校生活は送れない可能性が高い。
頑張らないと。
「あら、咲也さん。ごきげんよう」
「咲也、おはよう」
昇降口で、上靴に履き替えることなくボーッと考えごとをしていたら、銀水兄妹が登校してきた。
「おはよう、二人とも。ちょっと、考えごとをしていたんだ」
「何を考えていましたの?」
「人間関係について、かな」
「はあ……。何か悩んでいるなら、相談くらいは乗りますわよ」
亜梨沙から可哀想なものを見る目を向けられたが、構わず上履きに履き替える。
「そういえば、今日から希空さんの妹が入学してくるんだよね」
教室へ向かう途中、何となく二人に真冬の話を振ってみた。
「ええ、真冬ですわね」
「可愛らしいよね。希空さんとはタイプが違うけど、儚げで」
亜梨沙は、入学前から希空とも面識があったようだし、当然のように真冬のことも知っていた。義弥もどこかで会う機会があったのだろうか、そう言って意味深に微笑む。
いや、別に真冬の話題を振ったことに他意はないよ。
気にしないようにし、俺は続ける。
「多分彼女も生徒会に選別されてるだろうし、何かお祝いしてあげたいと思ってるんだけど、どうかな」
「妙案ですわね! では、真冬も入れてお茶会を開きましょう?」
いいこと言うじゃない。これなら、席順さえ間違えなければ真冬とゆっくり話をするチャンスだ。
「では、日程調整は言い出しっぺの俺がやるから、後で連絡するよ」
双子は息ぴったりに頷いた。
放課後、俺と双子は揃って教室を出て、生徒会室に向かった。右手には、真冬に渡すためのプレゼントが入っている。この前のお詫びとして用意した花だ。祝いの場だからね。
部屋に入ると、すでに中等部や高等部の先輩方はそれぞれテーブルに座っていた。
俺たちも、手前側に置かれている初等部用のサイズが小さいテーブルに腰かけた。
後で知ったことだが、この生徒会室は、一般生徒は「生徒会室」と呼ぶが、生徒会メンバーは「サロン」と呼ぶらしい。
他にも、普段から顔を出すようにしている内に、暗黙の了解のような決まりごとも分かってきた。
その一つに、座る場所がある。明確に座る席が決められているわけではなく、基本自由に座って良いことにはなっているが、何となく小中高で座るエリアが決まっている。
例えば、初等部は俺たちが今座っている入口付近のエリアで、ここはサイズの小さいテーブルが置かれているので分かりやすい。他にも、中等部は部屋の真ん中あたりのエリア、高等部は部屋の奥側、窓際のエリアとなっている。
エリア外の席に座っていると、やんわりと「あっち行け」と言われるんだとか。まあ、そんな人見たことないけど。
コンシェルジュにお茶を頼み、座って三人で雑談していると、希空がやってきた。
「ごきげんよう、皆さん」
「こんにちは、希空さん。飲み物は何にする?」
「あら、でしたらローズヒップティーをお願いします」
コンシェルジュに、希空の分のお茶を追加で注文する。
程なくして、全員分のお茶をまとめて持ってきてくれた。
俺が頼んだのは、最近お気に入りのロイヤルミルクティーだ。甘くて美味しい。飲みすぎて最近寝不足気味なのが玉に瑕だ。
と、俺の隣で、希空と同じローズヒップティーを飲んでいた亜梨沙が口を開く。
「そういえば、希空。遅くなりましたが、真冬の生徒会選別おめでとう」
「亜梨沙様、ありがとう。名誉なことだけど、本人は少し気負いすぎているみたいだから、心配だわ」
「あら、胸を張っていればいいのですわ」
いや、君は胸を張りすぎ。
もう少し落ち着きなさいな。
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