翼を持たない少女
水葱ちゃん
第1話 翼を持たない少女
青い空に雲ひとつない今日
私、百恵樹里(ももえいつき)は、
幼馴染の藤羽桃(ふじわもも)に会いに行くのだ。
ミーン・・・ミーン・・・
「お待たせー!」
その声は橋の方から聞こえる
羽を持たない少女、樹里。
遅いよというが、樹里は、笑って誤魔化す
今日は待ちに待ったケーキ屋さんが開店した
そこに私たちも行く事になった。
並ぶこと10分ほど、ようやく私たちの番になったと思った瞬間
「あなたは店に入ることはできません。」
と、店員が言った。
は?と頭の中が言った。
桃は
「何故ですか?」
と、怒りを抑えながら質問する。
店員から呆れている様子が伝わる
「『翼』を持たないのであれば店に入ることはできません。」
後ろの方から笑い声が聞こえてくる。
私は泣くのを堪えて
「行こう」
と桃の耳元でいう
私たちが帰る時、少しだけさっきのお店を見る。
看板には
『どんな方でもご来店できます!』
と、大きく書かれていた。
目から水が少し溢れてきたのがわかった
「私のせいでケーキ食べれなくなってごめんね。」
樹里は桃に謝る
桃は、大丈夫だよ
と、慰めてくれた。
その日の夜、私は鏡に背を向けていた。
そこには翼が生えていた場所に切り傷が二箇所あった。
「桃、幸せになってね」
私は静かに鏡に向かって微笑んだ
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